今日も全脳力解放者は休めない‼ーひょんなことから脳のリミッターが解けて、本来の力を発揮するー

@chunibyouzip222

第1話「初魔侵略進行編 第1話 緑魔翠鬼」

【現代の世界(第1467世界)inアメリカ】

夜が深まると、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス近郊の田舎町には、ただの静けさだけが支配するわけではなかった。


【異世界(第409世界)】

一方、異世界の第409世界では、、魔王の城の地下深く、薄暗い石造りの間には巨大な魔方陣が描かれていた。その周囲には、異なる種族の奴隷たちが膝をつき、魔方陣に手を当て、魔力を注ぎ込んでいる。エルフ、ドワーフ、人間、そしてもっと珍しい種族の者たちもたくさんそこにはいた。彼らの着ている服はぼろぼろで、手や足には鎖で繋がれ、肌は魔力の使い過ぎで青ざめている。


「もう、やめてください、魔王様。私たち全員つぶれてしまいます 少しだけの休憩も」と、一人のエルフの女性が訴える。彼女の声は震えており、瞳は絶望に満ちていた。


しかし、魔王は冷たい目で彼女を見下ろすだけだ。


「黙れ。お前たちの命など、この魔方陣の一滴の価値にも満たん (お前たちの)代わりはいくらでもいるのだ」と魔王は吐き捨てる。彼の声は響き渡り、奴隷たちの心を凍りつかせた。


ドワーフの男性が力尽き、魔方陣の端に倒れ込む。彼の隣にいた人間の少年が慌てて支えようとするが、魔王の視線を感じて怯えて支えるのを止め、急いで魔方陣への魔力の注入を行う。ここでは、これが日常茶飯事だ。


「私たちの何が悪いんですか? なぜこんな苦しみを...」と、少年が涙ながらに叫ぶ。その叫びには誰か助けてほしいという気持ちがあふれ出ていた。

しかし、魔王はただ冷酷に笑うだけだった。魔方陣からはますます強い光が放たれ、奴隷たちから吸い取られる魔力が渦を巻いている。彼らの叫び声は魔王の野望の前では無力で、ただ闇の中で響くだけだった。


【現代の世界(第1467世界)inアメリカ】

森の奥深く、大規模な魔方陣が光を放ち、その中心からは、この世界には存在しないはずの生き物が一匹、転移してきた。全身緑色で、鋭い牙を剥き出しにし、手には錆びたナイフを握りしめたその生き物――ゴブリンだ。

月明かりがかすかに照らす森の中、異世界から転移されたゴブリンが静かに歩を進める。その体は人間の子供ほどの大きさだが、筋肉は引き締まり、動きは猫のようにしなやかである。ゴブリンはこの新しい世界に足を踏み入れても、一切の動揺を見せず、ただ冷静に周囲を観察していた。ゴブリンの目は、夜の闇にも負けずに輝き、鋭い感覚で獲物を探している。その耳は、枝の軋む音一つをも逃さず、鼻は新鮮な血の匂いを求めていた。


そして、小さなウサギが茂みから顔を出した。ゴブリンは一瞬で反応し、身を低くして獲物に忍び寄る。ウサギは何かを感じ取ったのか、ぴくりと耳を動かすが、既に遅い。ゴブリンは瞬く間に距離を詰め、鋭いナイフをウサギに突き立てた。ゴブリンのナイフは既に空を切り、獲物に向かって落下していた。


**シュッ!**


ナイフがウサギの首を飛ばし、その首は月明かりの夜空を舞う。ウサギの目が月明かりを反射し、どこかむなしい顔をしていた。ゴブリンは狩った獲物の胴体を地面に叩きつけ、勝利の雄叫びを上げる。


**グルオオオオッ**


その声は森全体に響き渡り、他の生き物たちがその音を聞いた途端、音のなるほうからすかさず逃げ出すほどの威圧だった。その声を聞いた動物たちは恐怖を覚えた。ゴブリンはウサギを手早く捌き、飢えを満たす。その顔にはほうばったからなのだろうか血塗られた口を大きく開けて、満足そうな笑みが浮かべたが、すぐに次の獲物へと意識が移る。


食事を終えたゴブリンは、再び歩き出す。”足りない もっとだ”彼は戦いに手慣れ、血に飢えており、どこかしら人間の存在を探しているように思えた。この森の中で、ゴブリンは自分の狩りの技術を存分に発揮し、新しい獲物を求めてさまよい続けるのだった。


やがて、いくらか動物を狩った後、暗い夜道を歩く人間たちの声が聞こえてきた。その声を聞き、ゴブリンはゆっくりと音のなる方に向かって歩み続ける。緑色だった身体は返り血により血塗られて濃い赤色に変わり、身体から滴る血の跡を地面に残しながら進む。そして、そのゴブリンは、人間たちが通り過ぎる道路に下りてきていた。彼は木の陰に身を潜め、人間たちの無知を嘲笑うように、不敵な笑みを浮かべていた。歯がむき出しになり、唇からは獲物を食らったため、血も混ざったよだれが滴り落ちる。ゴブリンは、人間たちが自分の存在に気づかずに通り過ぎるのをじっと待っていた。


彼らは5人組の大学生のようで、心霊スポットでの冒険をライブ配信しているように見える。彼らは、自分たちの勇気を証明するため、カメラに向かって笑いながら話している。


「おいおい、ここマジでヤバいらしいぜ」と先頭を歩く男ボブが言うと、


画面には「本当に幽霊出るの?」というコメントが飛び込んでくる。


それを読んだ隣を歩く男デビットは、「幽霊なんているわけないだろ」と笑いながら答える。


しかし、耳が良い女性エマだけが、遠くから聞こえてきた不気味なゴブリンの雄たけびに気づいていた。


「みんな、やっぱり、何か聞こえてなかった?」と不安げに言うエマに、首を傾げたあと、男3人は大声で笑う。


「だったら、それは君にだけにしか聞こえなかった幽霊のメッセージかも」という馬鹿にする声や

「何も聞こえないよ。大丈夫? やっぱり私たちが強引に連れてくるのが嫌だった?」と心配そうに尋ねるサラ。


ひきつった笑顔で「うん、大丈夫... 多分、風の音か何かだよ」と強がりを見せるが、その表情は明らかに怯えていた。


配信を見ている視聴者はわずか10人。コメントは「幽霊の声だと思ったの?」「多分幽霊はBluetooth使ってるんだよ、俺たちペアリングされてないから聞こえないんだ」「彼女が幽霊の声を聞いたって?それはきっと俺の前のガールフレンドの霊だ、まだ俺を悩ませてるんだ」といたずらっぽく書かたコメントであふれかえっていた。これこそ、本場のアメリカンジョークだろう。


先頭を歩くボブはカメラに向かって「幽霊の声を聞いたって、彼女が言ってるぜ!」と茶化すが、エマは顔は笑っているようだがうまく笑えていない。


その時も、森の中からゴブリンが彼らをじっと見つめていた。5人組の心霊スポットへ向かっている大学生たちの車は、彼らの約300m後ろの道路の途中に止められており、木の後ろに隠れているゴブリンには完全に誰一人として気づいていない。


「さあ、行こうぜ。幽霊なんて出るわけないんだから」と先頭に立つボブが後ろを振り返り、みんなに言い、グループは再び歩き始める。しかし、彼らが知らないのは、本当の恐怖がすぐそばに潜んでいるということだった。


すると、彼らの前に、何か小さな小人のような生き物が突如として現れた。そう、それは奇妙な姿のゴブリンだった。それを見た、先頭を立っていた男は「皆さん、見てください。これが幽霊ですよ!」ボブはカメラをゴブリンに向けながら、アメリカ風のブラックジョークを飛ばした。画面には小柄で異様なゴブリンが映し出され、コメント欄は瞬く間に反応で溢れた。


「なんだこれ!本物のゴブリン!?」「ハロウィンには早いだろ!」「マジでおもしろいなwww」「作り物っぽいけど、リアルすぎない?」


みんな笑いながらその異様な存在を楽しんでいたが、ボブがスマホのライトをゴブリンに当てると、状況が一変した。ゴブリンの体は深い血で赤く染まっており、片手には鋭利なナイフがギシッと握られていた。


「これ、ヤバくね?…」ボブの言葉が震え、唾を飲み込む音が聞こえた。しかし、それに気づくのはもう遅かった。ゴブリンは驚くべき速さでボブの懐に飛び込み、その喉元にナイフを突き刺した。


すると、その男性は体の力がすべて抜けたかのように膝から崩れ落ち、彼の顔は天を仰いだ。喉からはまるで噴水のように鮮血が噴き出し、他の4人に血の雨が降りかかった。その光景に、仲間たちは一瞬で凍りついた。


サラは立ちすくんだ。「これは夢だ、悪い夢だ」と何度も心の中で呟くが、目の前の現実は否定しようがなかった。彼女の目には涙が滲み、手は震えていた。


一番後ろにいたフランクは血で汚れた自分の服を見て、相手の人数が一人であることを周りを瞬時に見て確認した。こう冷静でいるものの、身体は正直である。冷たい汗が背中を伝い、足元がぐらついていた。脳がこのゴブリンは危険であるという信号を送っているのだ。


エマは涙をこらえきれず、その場に崩れ落ちた。「こんなの、ありえない…」心臓が激しく鼓動し、頭の中が鼓動が早くなるにつれて真っ白になっていた。視界はぼやけ、周囲の音が遠のいていった。


亡くなったボブのすぐ隣にいたデビットは仲間たちを守るために何かできないかと必死に考えていた。「どうしてこんなことに…」脳裏には無数の可能性が浮かんではシャボン玉のように消え、現実の恐怖が重くのしかかっていた。


ゴブリンは冷酷な眼差しで次の獲物を見定めていた。その姿は、まるで悪夢から抜け出してきたかのようだった。ゴブリンの動きは素早く、殺意に満ちていた。彼らがこの生き物を相手に立ち向かうにはあまりにも無力だった。


「逃げよう、みんな!」サラがふと我に返り、叫んだ。しかし、その声も虚しく、ゴブリンは次の標的に向かって動き出していた。暗闇の中で光るナイフの刃先が、次に誰を襲うのかを予告しているかのように輝いていた。


視聴者たちもまた、その恐怖を画面越しに感じ取り、コメント欄は次第にパニックの様相を呈していた。

「やばい、これ本物だ!」「警察を呼べ!」「誰か、助けてやってくれよ!」


亡くなったボブの隣にいた男性デビットは、恐怖のあまりかものすごいスピードで頭を働かせた。自分たち全員が生き残るのは難しい。次に狙われるのはこの緑の化け物から最も近い僕だ、こいつと戦っても勝ち目はない。そんな思考が一瞬で脳裏を駆け巡り、彼は決断を下した。

「みんな逃げろ!」デビットは叫び、ゴブリンに覆いかぶさるように飛びかかった。彼は自己犠牲を選んだのだ。自分が亡くなったとしても、ゴブリンに覆いかぶさることにより、ヤツの動きを数秒でも止める。そのために。

ゴブリンはデビットの意図を瞬時に察知し、その作戦を理解した。このまま彼を殺しては彼の思うつぼだ。しかし、狩りの本能には逆らえない。殺せる相手を殺さないのはムリなのだ。よって、その男性をゴブリンは即座に殺してしまった。ナイフが彼の心臓を貫き、その男性の力の抜けた重い体はゴブリンの上に覆いかぶさった。

サラは、恐怖と混乱の中で走り出した。涙が止まらず、足元がふらつく。「デビッドが…」彼女の頭の中でその名前が何度もこだました。そして、エマは、ボブの返り血による血まみれの手で顔を覆いながら走った。「こんなの、ありえない…」残りの男性であるフランクは仲間たちを守るためにゴブリンから最も近い後ろを走り、叫んだ。「急げ、車まであともう少しだ!」

3人は必死に走り、ようやく車まで250メートル地点にたどり着いた。しかし、彼らの心には絶望の侵食が広がっていた。

デビッドの最期のやり遂げた顔は逃げ走る3人を見つめて笑みを浮かべていた。その顔をゴブリンは見て、普通では即座に考えつかない最適な行動をした彼にゴブリンは敬意を払うかのように、狩りを楽しむ狩人の顔で不敵な笑みを浮かべていた。ゴブリンの口元が歪み、獰猛な笑みを浮かべた。しかし、その身体能力をもってすれば、デビッドの体をどけるのは容易であった。ゴブリンは冷酷な眼差しで次の獲物を見定め、動き出す準備を整えていた。3人は、必死に走り続けた。心臓の鼓動が耳元で響き、呼吸が荒くなる。それらの音で周りの音が聞こえない。暗闇の中でゴブリンの存在が彼らを追い詰め、恐怖が全身を覆っていた。車まであと200メートル地点に達した。その時、フランクが立ち止まった。「先に行け、あとは俺が殺る」と言った。その言葉に、女子の2人は頭を上下にコクリと動かし、涙でかすんだ目を振り払う余裕すらなかった。今や他人を心配しとめる余裕が彼女らにはなかった。ただ前に進むしかない、そうじゃなければ犠牲になった仲間たちに顔向けできない。彼女たちは涙で視界がぼやける中、必死に走り続けた。


しかし、フランクは生きる気力を失って、あきらめたわけではなかった。彼は大学卒業後にアメリカ陸軍に入隊することを決めており、そのために子供の頃からアメリカ陸軍格闘術の訓練を積んできた体術のスペシャリストだった。彼はゴブリンと戦うために、構えを取った。


彼は深呼吸し、体中の緊張を解き放つように肩を回した。目の前のゴブリンは、獰猛な笑みを浮かべ、じっと彼を見据えている。彼はアメリカ陸軍で学んだ格闘技術を活かし、戦闘の構えを取った。全ての動きが、これまでの訓練の集大成となる。


ゴブリンはフランクの構えを真似するように、軽く身を屈めた。だが、その動きにはどこか余裕があり、まるで彼を試すかのようだった。


「俺をなめてやがるな、コイツ」フランクの中で自分の訓練の努力を馬鹿にされているようでゴブリンに怒りを覚えた。


彼は躊躇わずに突進し、鋭いレフトサイドのパンチを繰り出した。ゴブリンは体を後ろにのけぞり、見事に避け、フランクの脳天を狙った反撃の蹴りを放った。彼はその蹴りを間一髪でかわし、お互い次の攻撃をする準備をするため、一度距離をとった。その後も二人の間で繰り広げられる攻防は、まるでダンスのように速く、美しかった。


フランクは素早い動きでゴブリンの懐に飛び込み、肘で顔面を狙った。しかし、ゴブリンはその動きを読み取り、腕でフランクの攻撃をガードする。逆にゴブリンは彼の腹部に強烈な膝蹴りを放ち、フランクは痛みに顔を歪めながらも、すぐに体制を立て直した。しかし、彼の骨はバキバキに折れてしまっている。


次に、フランクはゴブリンの足を狙い、低いキックを繰り出した。ゴブリンはその攻撃をフランクの頭上をはるかに超えるほどの跳躍で避け、空中で回転しながら彼の頭上に重い拳を振り下ろした。彼はその攻撃をギリギリでかわし、地面に転がるようにして間合いを取った。


息を整える暇もなく、ゴブリンは再び襲いかかってきた。彼は防御に徹しながらも、隙を見つけてカウンターを狙う。しかし、ゴブリンの動きは予想以上に素早く、力強かった。そのため、何度もカウンターを繰り出したが、その度にゴブリンはそのカウンターをいなしてしまう。


汗が滴り落ちる中、彼は次第に疲労を感じ始めた。それもそうだろう、相手は人間ではないのだから。ゴブリンはその様子を見逃さず、冷酷な笑みを浮かべた。ゴブリンはまるでフランクを嘲笑うかのように、彼の技を模倣し、同じ攻撃を繰り出してきた。その動きは洗練され、圧倒的な力を伴っていた。


ゴブリンの重い拳が彼の顔面に直撃し、視界が暗転した。本気の重いパンチを顔面にクリーンヒットでくらってしまった。これにより、鼻は陥没し、片方の目はつぶれてしまった。次の瞬間、ゴブリンの強烈なキックが彼の腹部に炸裂し、彼は地面に倒れ込んでしう。痛みに呻きながらも、自分は戦士だと自ら自分を鼓舞し、立ち上がろうとしたが、ゴブリンの容赦ない追撃が襲い掛かる。その時のフランクの顔は”恐怖””絶望”の顔であった。彼にはもうゴブリンに逆らう気力も何もかもない。なぜなら、フランクの心の中には戦士がいなくなってしまったのだから。フランクはひたすらゴブリンに対し謝っていた。「ごめんなさい」「許してください」「もうなにもしません」「死にたくない」「誰か助けて」


最後に、ゴブリンは冷酷な目で彼を見下ろし、致命的な一撃を放った。その攻撃は、フランクのお腹を片手で貫き、それと同時に血と骨が飛び出し、無惨な姿で絶命した。最期の最後まで彼の謝罪は続いていた。

そのおかげで、2人は車にたどり着き、エンジンをかけることができた。配信の視聴者たちもまた、その恐怖を音などを通して、画面越しに感じ取り、コメント欄は次第にパニックの様相を呈し、それにつれ視聴者が増えていった。フランクの謝罪を聞いた視聴者の多くはトラウマとなったようだ。

「早くして、   あと怖がっていたのに心霊スポット連れてきてごめんね」とサラは涙声で言った。エンジン音が高鳴り、エマはハンドルを握りしめる。「そんなこと今言わなくていいじゃん」とエマが返す。


車のエンジンがかかり、ようやく安堵の息を吐いた。しかし、次の瞬間、ゴブリンがフロントガラスの前に飛び乗っていた。サラの心臓は凍りついたようだった。


「早く、走らせて!」サラは叫び、近くの後部座席のシートの上にあった護身用の拳銃を手に取った。そして、銃口を車のフロントに乗っているゴブリンに向けてガラス越しに3、4発撃ち込むと、至近距離だったためフロントガラスをパリンと割りながらも2、3発が命中した。ゴブリンはよろけ倒れてフロントガラスから落ち、姿を消した。車内は静寂に包まれた。


「やった…?本当に…?」エマは震える声で呟いた。サラは深く息をつき、額の汗を拭った。これにより、車内にあった恐怖感は徐々に溶け始めた。


「銃は効くらしいね」とサラが笑みを浮かべた。彼女たちはお互いの無事を確かめ合い、車を街中へと向けて走らせた。静けさが戻り、緊張が少しずつ解けていくのを感じた。


サラはふとした静けさの中で、急に思い出したかのように自分のズボンの後ろポケットの中から携帯を取り出し、警察に電話をかけた。「はい、もしもし」とオペレーターの声が車内に響く。「警官を呼んで、今すぐ!緑の化け物がナイフを持って私たちの友達を殺したの。すごい身体能力で…」助かると思ったら今までため込んでいた感情があふれ出し、襲われているときの緊張感が戻った。


「落ち着いてください」とオペレーターが応じる。「今いるあなたの場所を教えてください」


「そんなのGPSとかで分かるでしょ!」とサラは叫ぶ。「今私たちは危険なの!早く!」


しかし、その瞬間、電話は突然切れた。いや、切られたのだ。


「嘘でしょ…」サラの声は震え、エマも後ろの気配に恐怖で顔が青ざめた。彼女たちは、ゴブリンが車に戻っていることに気付いた。ゴブリンを車から振り落としたと思っていたが、ギリギリ車にしがみついていたようだ。そして、ゴブリンは後ろのドアの空いている窓から車内に入ってきて今に至る。ゴブリンはスマホを持っていたサラの手首を掴み、ナイフで一瞬で切り裂いた。その手はスマホを持ったまま車の隅に転がる。


「きゃああああ!」車内は一瞬でサラの悲鳴に包まれた。サラは痛みで声を上げ、エマは混乱と動揺と恐怖で動けなかった。ゴブリンは冷酷な笑みを浮かべ、次々と攻撃を仕掛けた。逃げないようにサラの髪をつかみ、一発顔面を殴り、逃げようと抵抗しても髪を引っ張りゴブリン側にサラの顔を引き寄せもう一発、顔を殴った。それにより、たった二発の顔面への強打を受け、クリーンヒットではなかったののすでに見違えた姿になっている。


しかし、サラは残る片方の腕を使ってゴブリンに向かって再び銃を撃とうとした。しかし、その動きを見透かされたかのように、ゴブリンは俊敏な動きで車の前の席に移動し、彼女の前に立ちふさがり、銃を奪った。そして、無慈悲にもサラの喉元を狙ってナイフをゆっくりと突き立てさしていった。このときのサラはずっと首を振って泣き叫び抵抗するものの、ナイフがのど元に刺さり始めるとその抵抗は次第に静まり返っていった。最終的にサラの目は絶望と激痛で見開かれ、彼女の体は無力に崩れ落ちた。

エマもまた、ゴブリンの冷酷な手によって命を奪われた。彼女の目には涙が溢れ、最後の瞬間に見たのは、サラの血まみれの姿であり、サラの残った片方の手を握りしめ、エマの目はもう開くことはなかった。


運転手を失った車はそのまま看板に激突し、大破。ゴブリンが車内からサッと降り、離れた瞬間、車は大きく爆発した。


爆発の炎の中、ゴブリンは拳銃とナイフを握りしめ、冷酷な笑みを浮かべていた。その顔は達成感に満ちた顔をしていた。その時、ゴブリンの脳内に低く響く声が聞こえてきた。


≪人族5人の経験値により、既定のレベルに達したため、これよりユニークモンスター“捕武ゴブリン”への存在進化を行います≫


すると、ゴブリンの体が光に包まれ、急速に変化し始めた。筋肉がモリモリと膨れ上がり、骨格が強化され、鋭利な爪と牙がさらに伸びる。その姿は人間を遥かに超えた力を持つ存在へと進化していき、身長はすでにアメリカ人の男性の平均ぐらいまで大きくなった。


周囲の炎が彼の影をより一層不気味に浮かび上がらせる中、ゴブリンはその変化を楽しむかのように笑った。その笑みは、これからの狩りを予感させる冷酷なものだった。進化の光が彼を包み込むと同時に、その姿は更に凶悪なものへと変貌を遂げた。


彼は拳銃とナイフを両手に持ち、その目は新たな獲物を求めて輝いていた。燃え盛る車を背にしながら、ゴブリンは不敵な笑みを浮かべ、夜の闇へと消えていった。


【神界】

第1467世界担当の神エフェルシナは、その美しい艶々な黒髪を赤い簪でまとめながら、水晶の中の混沌とした自分の世界の光景に目を凝らした。彼女の世界、第1467世界は、我々が暮らしている世界線とまったく同じ世界であり、魔力の存在しない平和な領域であるはずだった。しかし、今、その平穏が脅かされていた

「なんてことが起きてるの!? なんで?異界のいるはずのないゴブリンが私の世界で暴れているの?」彼女の声は震え、彼女の着ている白い着物の袖がわずかに揺れた。

彼女の視線の先には、ゴブリンが転移されたことを示す魔力の歪みがあった。この世界には魔力が存在しないはずなのに、どうしてこんなものが…?


そこで彼女は、神々だけが使える神生魔法の一つである【神眼】を使った。神眼とは、相手の弱点や特性、真実や何もかもの事象を見通せる魔法であり、この状況を理解するために必要不可欠だった。エフェルシナは深呼吸をし、集中を高める。彼女の瞳は輝きを増し、【神眼】の力を発動させた。神眼を使ってその空間の歪みを見ると、その空間には黒い亀裂のようなものが見えた。「これは”界境の溝(ミゾノカナタ)”!このままだとこの世界が危ない。異世界によって私の世界が侵略されてしまう。早くほかの神々に知らせないと。」


エフェルシナは、この事態を他の神々に伝えるために、エフェルシナは水晶から目を離し、神界の広大な空間を駆け巡った。彼女の心は、この世界を守る決意でいっぱいだった。着物の裾が風になびきながら、彼女は神々の議会へと急いだ。


【現代の世界(第1467世界)in日本】

東京の朝は、いつもと変わらない活気で満ちている。通信制高校の3年生、詩羅芽良星は、いつものように学校へ向かっていた。そんな彼の足取りは軽やかで、心は前向きな思いで満たされていた。彼は、その見た目で誰かを驚かせることはない。彼の顔は、街で見かける普通の高校生と何ら変わりない。鼻は平均的な大きさで、目立つ特徴もなく、彼の瞳は深い茶色で、常に何かを考えているかのように見える。彼の髪はくせ毛で、いつも少し乱れているが、それが彼の人柄を表しているかのようだ。彼の鋭い目は、平凡な外見の中で一際輝きを放ち、彼の内面の強さを物語っている。


おーい、ナレーションさーん 俺のくせ毛が人柄を表してるって、なんて失礼な奴なんだ! ひねくれものって言いたいのか!俺の親みたいに俺をひねくれものって言いたいのか?


(中学生の時から急にくせ毛がひどくなり、「おかーさーん なんで俺の髪の毛こんなにくねくねなの?」「それはあなたの心がひねくれてるからです」そう、この言葉がすごく主人公をトラウマにさせた。高校三年生の今でもその言葉を聞いたら落ち込むほどに)


まあ、今はドライヤーとかで抑えてましにはなったが…


そうこうしているうちに学校の門をくぐり、石畳の道を歩きながら、良星は心の中でつぶやいた。「俺の名前は、詩我羅芽(しがらめ) 良星。通信制の高校に通う3年生だ。なぜ通信制かって?まあ、それは周りの目が怖かったんだ。怒られることへの恐れから、他人への気配りばかりしていたら、いつの間にか自分が壊れていた。でも、今は違う。俺を理解してくれる親友がいるから。 通信制であっても以外に人生は充実しているんだ。」


彼のクラスが近づくにつれ、話し声が大きくなってくる。そして、教室の扉を開けると、そこにはいつも通りの光景が広がっていた。友人たちが談笑しており、彼の2人の親友もいつもの光景の中にいた。


良星は深呼吸をし、明るい声で挨拶をする。「おはよう!」

良星は自分の席に荷物だけを置くと、親友の新木と示相のもとへ急いだ。


新木は俺のこの通信制でできた初めての親友で、明るい性格をしている。身長は彼のほうが少し高くて、うらやましい。そして彼は赤色と黒色の混じった短髪の髪型をしていて、スポーツが得意な良いやつだ。一方、示相も俺の親友であり、一際落ち着いた雰囲気を放っている。彼の青色がかった黒髪はいつも完璧に整えられ、どんな動きをしても乱れることがない。彼の冷静な眼差しは、深い知識を秘めた黒い瞳から放たれ、まるで世界の真理を解き明かすかのように周囲を見渡しているように見えるが、実際は「空きれいだな」など意味のわからないことを考えている頭のいかれた奴だ。良星と肩を並べる身長に、細身ながらもしっかりとした体つき。しかし、運動が苦手な俺を差し置いても運動がダメダメだ。


新木は、いつもの悪戯っぽい笑みを浮かべながら話しかけてきた。


「なあなあ、良星、アメリカでの殺人事件知ってっか? あの緑の“グリーンモンスター”がさ、シャーッ!」と、彼はモンスターの鳴きまねをしながら手を大きく広げた。


良星は眉をひそめ、困惑気味に答えた。「え、何それ? 新木?」


「知らないんだ、詩羅芽は?」示相も興味深げに加わった。


「なんだよ、示相、お前まで?」良星は軽く肩をすくめた。


新木は自信満々に言った。「世の中じゃこのニュースで持ちきりだぞ。普段ニュースを見ない俺でも知ってるぜ。」


「え!? 新木が“ニュースを”見るなんて」良星は驚きと皮肉を交えて返した。


新木は少し赤くなって拳を振り上げた。「なんだと? てめえ、しばくぞ!」


示相は冷静に説明を続けた。「アメリカで起こった事件なんだけど、心霊スポットに訪れていた5人の大学生が殺されたんだ。」


「ふ~ん、でもアメリカだったら殺人なんて日常茶飯事じゃね?」良星は無関心そうに言った。


「問題はそっちじゃねえ。その5人を殺った“犯人”の方だ。」新木は声を低くして真剣に続けた。


良星は興味を引かれたように首をかしげた。「その犯人がなぜ注目されてるんだ?」


示相は軽く笑って答えた。「毎日ニュースを見ているあの詩羅芽が何で知らないのかね?」


「悪い、今日は寝坊して、朝の星占いしか見てないんだ。ところで今日は最下位だったぞ。」良星は苦笑いしながら言った。


「だから今日はいつもより学校来るの遅かったんだね。」示相は納得したように頷いた。


新木は肩をすくめて言った。「最下位なんてよかったじゃねえか。」


「ちなみに最下位のその順位は君のうお座の星座だよ。」良星は微笑んで告げた。


「何余計なことしてくれてるんだ、この野郎。今日の一日、最下位って肩書背負って生きてけっていうのか?」新木は愚痴りながら頭を抱えた。


良星は腕をグッドにして笑顔で言った。「Yes, we can!」


示相は吹き出して、「やっぱ君たち二人って本当に仲がいいんだね。」


良星と新木は同時に叫んだ。「よくねえよ!」そう言われるといつも怒る二人だ。


良星はふと真剣な表情になり、「要はあれだろ、その犯人がさっき言ってたグリーンモンスターなんだろ?」と問いかけた。


示相は頷いて、「ご名答。正確に言うと、その生き物の動画が拡散されてるって状況だね。」と答えた。


「その動画は5人の大学生が心霊スポットの配信していた時のものだな。」新木はスマホを取り出して言った。


「その配信中にそのグリーンモンスターというやつが現れて、5人をも倒したと。」良星は驚きを隠せない様子だった。


「そう。」示相は短く答えた。


「それは驚きだね。そんな生き物がいるなんて」良星は感嘆の声を上げた。


新木はスマホを操作しながら、「今はこの配信の動画は規制されてるけど、俺のスマホに保存されてるから後で送るは。」と告げた。


「OK。」良星は軽く手を挙げて同意した。


示相は顔をしかめて、「胸糞悪いのはそれだけじゃないんだ。アメリカの方ではその生物について公式に一切話されてないんだ。」と不満そうに言った。


「ところで、そのグリーンモンスターって、なんでそんな名前がついてるんだ?」良星はふと疑問を抱いた。


「それがまた怖い話なんだよ。」示相は声を潜めて話し始めた。「配信を実際に見ていた画面越しの目撃者の話によると、その生物は全身が鮮やかな緑色で覆われてるんだ。身長は子供の様で、身体能力は度を越えてるほどの人外だったらしいよ。実際に僕もその配信の動画を見たんだけれども一瞬しか映らなかったもののあれは”モンスター”だね」


「確かにそれはモンスターっぽいね。だけれどもフェイク映像だったりして」良星は興味深そうに聞いていた。


新木も頷いて続けた。「それはないな。 実際の配信映像をフェイクかどうか調べた奴が何人もいたが皆そろえて”フェイクじゃない”ってさ あと、この配信を行っていた5人は実際に亡くなっている フェイクだっとしてもそこまでしねえよ」


「わお、ヤバそうなにおいがプンプンしてくるな。」良星は恐怖の混じった苦笑いを浮かべた。


「だろ?」新木も同意した。


その時、先生が教室の扉を開けて、「ホームルームを始めるぞ」と声をかけた。良星は一瞬立ち止まり、軽く溜息をついて自分の席に戻った。教室内は静まり返り、授業の始まりを迎えた。

しかし、今日一日中、良星は”グリーンモンスター”のことで頭がいっぱいだったため、授業の内容が頭に入ってこなかった。


【神界】

この事件のことについては神界でも騒ぎになっていた。神々の会議は、壮大なる天界のホールで開催された。この場所は、光り輝く大理石の床と、高くそびえる柱が特徴的で、天井には金色の装飾が施されており、神々の威厳を象徴している。会議の中心には、大きな円卓があり、その周りには空中に浮かぶ席が配置され、各世界を代表する神々が座っていた。空気は緊張感に満ちており、重要な議題に対する神々の真剣な眼差しが交錯する。


深い青色のローブを身に纏い、背丈は小さく、白色でボサボサの整えられていないロングヘアの幼女にしか見えない神が空中席に座っていた。彼こそが議長セラフィムだ。彼は、その威厳ある姿で神々を見渡していた。彼の声は優しくもありながら、会議場全体に響き渡る力強さを持っている。


「皆、様々な世界の神々を集めてしまって申し訳ない」と言うと、他の神々は一斉に「議長、そんなことはありません」「そうですよ、議長」「そうだ」「そうだ」と返答した。彼らの声は、議長セラフィムに対する敬意と支持を示している。


議長セラフィムは一瞬目を閉じ、深呼吸をしてから再び口を開いた。「皆にそう言ってもらえてわしも助かる。今回の議題じゃが、ルシファス、お前のところの魔王が好き勝手にやっておるようじゃの」。彼の声には、微かな怒りが感じられた。


まるで太陽のように周囲を明るく照らし出す黄色い短髪を持ち、神々しいオーラを放つ知的な眼鏡をかけた神ルシファスは眉をひそめ、苦々しい表情を浮かべた。「あれは無理だ。あいつだけは止められない。うちの世界の魔王で、あいつだけは異常なんだ。狂っている」と反論した。しかし、議長セラフィムはその言い訳を一蹴し、「そのような言い訳は聞きたくない」と断言した。その瞬間、確かに周りの空気が重くなった。


エルセスは、会議の進行役であり議長セラフィムの書記役でもある。彼女は、その立場が示す通り、品格と責任感を兼ね備えた外見をしている。髪は長く、銀色に輝く糸のように流れる。その髪は常にきちんと一つに束ねられ、彼女の整然とした性格を表している。彼女の瞳は深い青で、議事録をつける際の細かな注意力と集中力を反映している。エルセスの服装は、機能的でありながらも、議会の格式を保つための優雅さを失わない。


彼女は冷静かつ明確な声で話し始めた。「内容の理解が追い付いていない世界の神々の皆様にお伝えします。今回は神セラフィム様が担当している第409世界の魔王が第1467世界自体に干渉したこと、異世界の不干渉のルールに抵触すること、また、異世界の侵略を行ったことが今回の議題です」と説明した。


その言葉に、被害を受けた世界の神であるエフェルシナは立ち上がり、皆に一礼をしてから「私は第1467世界担当の神エフェルシナです。発言権をいただけませんか?」と静かに尋ねた。


議長セラフィムは彼女の要求を受け入れ、「よかろう」と承諾した。書記エルセスはエフェルシナに向かって「エフェルシナ様、発言をどうぞ」と促した。エフェルシナは再び一礼し、深刻な表情で話し始めた。「すでに被害は甚大です。人はもう20人以上亡くなっています。奴が送り込んできたゴブリンの強さは異常です。それだけではなく、異世界同士の干渉により、2つの世界にもうすでに"溝"ができ始めていました」。


その報告を聞いたほかの神々は驚きと懸念を表し、「"溝"が」「もうできてしまったのか」「やばいな」「片方の世界は魔法が使えないんだろう」と騒ぎ立てた。セラフィムは、その状況を重く受け止め、「"溝"か。これにより、我々神々でさえも2つの世界の行き来を妨げることができなくなってしまったな。言うならば、一生治らない傷口ができた、か」と述べた。


書記エルセスは、さらに詳細な説明を求めた。「第1467世界の神エフェルシナ様、そのゴブリンの状況の詳しい説明をお願いします」。


「では、説明させていただきます。そのゴブリンはつい先ほどユニークモンスターに存在進化づみです」と言った。その瞬間、天界のホールは、まるで息をするのも忘れたかのような緊張感に包まれていました。壮麗な柱が並ぶ広間に、神々の声がエコーとなって響き渡ります。「なんてことだ」「なぜよりにもよってユニークなのだ」と叫ぶ声が次々と上がり、その言葉一つ一つがホールの空気を重くし、まるで会議場は地獄の様だった。


議長セラフィムは、威厳ある姿勢を崩さずに座っていたが、内心では冷静に状況を分析していた。「あの腐れ魔王め あやつ わざとユニークモンスターを転移させたな」と彼は思い、その鋭い眼差しには、魔王の計算された動きへの怒りが滲んでいた。外見の落ち着きとは裏腹に、彼の心中には激しい怒りが渦巻いていた。しかし、この議長セラフィムの内心の怒りに気付いたのは書記のエルセスただ一人のみであった。


そのため、何としてでも空気を軽くしたかった書記エルセスは、エフェルシナに向けて穏やかに問いかけた。「しかし、そのゴブリンを生身で倒せる人間はいるのすか? エフェルシナ様」。彼女の声は、会議場の張り詰めた空気を和らげるような柔らかさを持っていた。その一瞬の発言によって妙に会場全体の空気の重さを和ませた。


エフェルシナは深刻な表情で頷き、「はい、何人かは現時点のゴブリンを倒せる人間は存在します。しかし、このままだとこのゴブリンとの戦いは終わったとしても…」と続けました。彼女の声には未来への懸念が含まれており、その真剣さが会場にいたすべての神々の心に響いた。


議長セラフィムは、状況の深刻さを認識し、「文明が高度に発展してしまい、その結果、その世界には存在しないはずの技術をめぐり争い、倒せなかったら倒せなかったで世界は滅びる…か。すごくよろしくない状況じゃな」と述べた。彼の声は重々しく、神々の間にまた、重い空気を作り出してしまった。それには書記のエルセスでさえせっかく議論をしやすいように空気を軽くしたもののすぐに空気を重くされてしまい、呆れた顔をした。


ルシファスは、自責の念に駆られ、「本当に申し訳ない。本当に…申し訳ない。うちの世界の住人が」と謝罪した。彼の声は震えており、その後悔が言葉に込められているように感じた。


議長セラフィムは、ルシファスに対して理解を示し、「よせ、今の映像を見て思った。あやつ(魔王)の警戒度を見誤ったこちらの責任でもある。先ほどは一方的に責めて悪かった」と言い、彼の声は和らぎ、赦しの意を示した。


ルシファスは、議長セラフィムの言葉に感謝し、「いえ、セラフィム議長。議長の言った通り、私があの魔王に罰を与えなかったのが…」と謙虚に返答しました。彼の声は、責任を受け入れる覚悟を示していた。


議長セラフィムは、魔王の力を認識し、また、ルシファスを立ち直らせるために「お主の攻撃程度じゃ倒せぬ。今の映像を見て分かった。あやつの余裕っぷり。あやつは神をも殺せる力を得、この世の絶対の魔王に進化した。神格魔王となっておるからな。多分」と分析した。彼の声は冷静さを保ちつつも、その状況の深刻さほかの神々にを伝えていた。しかし、神々の中では「神格魔王?」「それはなんだ?」と”神格魔王”について知らないものも多くいたため、


ここで、議長セラフィムは神格魔王について説明を加えた。「神格魔王とは、通常の魔王とは一線を画す存在じゃ。過去にたった3人しか存在していないから、知らない神がいても無理はない。彼らは、神々の力を超越し、神をも殺す力を持つ。いわば、我らの唯一の点的じゃ。神格魔王は、膨大な魔力と知恵を持ち、その支配力は絶対的。彼らは次元の壁を超え、複数の世界に干渉することができる。あやつもその力を手に入れたのだろうな」。


エフェルシナは驚きを隠せずに「神格魔王って過去に3人しかいなかったじゃないですか。なぜそれが今?」と問いかけた。彼女の声は不安と疑問を含んでおり、神々の間に新たな議論の火種を投じた。「これはかなりヤバいことだぞ」「神ルシファスがあやつはやばいって言ってた意味が分かったぜ」


セラフィムはその疑問に対して、「それはわからぬ。だが、あやつは神を嘲笑するだけの余裕がある。この事実は変わらぬ。あの魔王はそんな人物じゃ。じゃな?ルシファス」と返答し、彼の声は決意を固めるような響きを持っていた。


すると、ルシファスは、魔王の性格を説明しはじめた。「はい、あいつは負け戦はしない。勝ち戦だけをして、魔王にのし上がった男です」と述べました。彼の声は魔王の恐ろしさを伝えると同時に、その存在の重大さを強調した。


セラフィムは議題の結論をだした。「わかった。この議題の結論としては、我々神々は魔王をけん制しつつ、その間も第1467世界に生き残ってもらうため、その世界全員に魔力を譲渡する。そして、我々神とその国の住人が手を取り、魔王をぶち殺す。異論があるものは?」と言い、彼の声は決断と行動を促す力強さを持ってた。その声に、神々はこれから過去に類を見ないほどの戦が始まることを感じ取った。そして、神々は一致団結しなければならないなという空気でまとまりかけていた。

そんな重い空気で、エフェルシナは挙手し、「どのくらい魔力を全員に渡すのに時間がかかりますか?」という質問に議長セラフィムを投げかけた。


「早くて3週間だ。何十億人分の魔力を作らないといけないからな。これでも早いくらいだ。君の世界が危ない時にすまないね」と議長セラフィムは謝罪しました。彼の声は心からの謝罪と、状況を改善しようとする意志が感じられる。


ルシファスも、議長セラフィムに同調し、頭を下げた。彼の動作は彼の謙虚さと、状況を真摯に受け止める姿勢を感じ、


エフェルシナは、「わかりました。二人の謝罪を受け入れます。だからこそお二人の力を私に私の世界にそこに住まう民にお貸しください」と2人の謝罪を受け入れ、2人は協力を求める決意を示した。


そして、議長セラフィムは会議の閉幕を宣言し、「了解した。これにて神々の会議を閉幕する」と言い、その言葉が終わると同時に、大きな扉がバタンと閉められ、その音は会議の終わりと、これから始まる新たな行動の始まりを告げているように感じ取れる。


【現代の世界(第1467世界)in日本】


良星は学校から家に帰ってきて、「ただいま」と言いながら靴を脱いだ。リビングからは母親の声が聞こえてきた。「おかえり、良星。今日は早かったのね。」


「うん、ちょっと疲れたから早めに帰ってきたんだ。」良星はそう答えながら、階段を駆け上がり、自分の部屋に向かった。部屋に入ると、彼はそのままベッドにダイブし、友達の新木から送られてきたグリーンモンスターの動画をスマホで再生した。


画面には一瞬、緑色の怪物が映し出され、あとはスマホを地面に落としたため、地面の映像と無残に殺されゆく人たちの声が響いていた。動画は地面と声がほとんどだったが、かなりグロテスクで、良星は思わず顔をしかめた。「うわ、これ本当にやばいな…」


動画が見終わると、良星はすぐに新木にメッセージを送った。「新木、今動画見たけど、これ本当にやばいな。アメリカの警察は何を考えているんだ?早く討伐部隊を結成して倒しに行けばいいのに…」


新木からすぐに返信が来た。「だよな。俺もそう思った。あの怪物、どう見ても普通じゃないよな。」


良星はさらにそのモンスターについてネットで調べ始めた。検索結果には様々な情報が溢れていた。「地元の猟友会が7人の討伐部隊を結成し、討伐に向かったが帰ってこない…か。多分奴にやられたんだろうな。」良星は記事を読みながら、眉をひそめた。


ネットニュースには、モンスターについての憶測が飛び交っていた。「アメリカ軍が作った秘密兵器」「これは中国が作った生物兵器」「何かの生物の進化」など、様々な説が書かれていた。


「どれもこれも信じられないな…」良星はため息をつきながら、次々と記事を読み漁った。彼の心は不安と興奮でいっぱいだった。

良星はふと、心の中で呟いた。「もし、この怪物が日本に来たらどうするんだ?この国は。」


彼の頭の中には、日本の軍事力の現状が浮かんできた。自衛隊は確かに存在するが、市民がいる中での街中での発砲は厳しい。さらに、自衛隊を動かすためには時間がかかる。実際、過去の災害でも自衛隊の派遣が遅れて被害が増したことがあった。


「自衛隊を動かすのに時間がかかるし、街中での発砲も難しい。奴が日本に上陸した時点で100%終わる。ある意味、奴が最初に出現したのがこの国じゃなくてよかったの…か?」


そう思っているうちに、誰かが階段を上がってくる音が響いた。良星は耳を澄ませた。「兄ちゃん、ご飯だけど、早く降りてきて。いらないんだったら別にいいんだけど。」妹の声だった。


「わかった、すぐ行くよ。」良星は返事をしながら、スマホを置いた。


妹とはあまり仲が良くない。それはそうだろう。自分は通信制の高校に行き、家にいる時間が長い。通信制の高校に通っている兄がいるってことは、世の中の目からするとあまりよく思われないから、それがすごく嫌なのだろう、うちの妹は。前まではすごく仲が良かったのにな。これが唯一、通信制の高校に入って気がかりに思うことだ。


「兄ちゃん、早くしてよ。ご飯冷めちゃうよ。」妹の声が再び響いた。


「わかったってば、今行くよ。」良星はため息をつきながら、調べ物を中断し、1階のダイニングに向かって階段を下りた。


階段を下り、ダイニングに行くと、テレビからニュースが流れていた。コメンテーターが深刻な顔で話している。


「今日の夜中の東京は非常に天候が不安定です。特に落雷がね。そのため、気象庁は”特別落雷避難命令”を出しました。東京の街頭地区に住んでいる方々は指定の避難場所に避難してください。過去に例を見ないほどの落雷が落ちる確率が非常に高まっています。自分の家で一夜を過ごそうと考えている方は危ないです。指定の避難所へ避難してください。」


こんなニュースに家族のだれ一人共感を持っていなかった。なぜかというと、”雷”だからだ。雷の性質上、どうせ落雷するのは高い建物である。うちの近くには8階建てのマンションが建っており、落雷するのはそこであろう、みんなそう思っている。また、そのマンションには避雷針もしっかりついているしな。母さんはため息をつきながらリモコンを手に取り、チャンネルを変えた。母さんはこのようなニュースが嫌いであるのだ。ほかのチャンネルでは、先ほどの報道番組ほど大々的に”雷”について取り上げてはいない。ここら辺の地域も避難地域に該当するが、あまり避難しようとしている音は聞こえてこない。周りの近所も同じ気持ちなのだろう。どうせ、たかが”雷”だ。家にいれば大丈夫。


俺は席に着き夕ご飯を食べ始める。妹は相変わらず、スマホを片手にTikTokを見ている。いつも通りの光景だ。


「ごはん中はスマホをいじるのはやめなさい」と父親が注意する。


「はーい」と妹は答えながら、スマホをしまったふりをして、隠れて操作を続けていた。これもまた、いつも通りだ。


夕食を終えた後、俺はお風呂に入り、ドライヤーで髪を乾かした。避難指定区域に住んでいるため、親友2人から心配そうなメールが届いていた。


「大丈夫?避難するの?」とメッセージが来ていた。


「大丈夫だよ。家族もみんな平気そうだし」と返信し、ベッドに入った。俺の通信制高校は週に1回の登校で、明日は休みだ。とはいえ、高校三年生であるため、受験勉強をしなくてはならない。これもまたいつも通りだ。


しかし、その”いつも通り”は今日までだった。


午前1時13分49秒。妹の部屋からTikTokで流行っている音楽がまだ流れていた。その時、突然の閃光と轟音が庭を襲った。


「ドーン!」(効果音は君の想像に任せる)


その一瞬で、人工芝を敷いた庭は真っ黒こげになり、雨が降っているにもかかわらず、火が上がった。しかし、時間が経つと徐々に雨で消えていった。


家族や周りの住人はその雷を聞いて、はっと目が覚めた。それもそのはず、近くで雷が落ちたのだから。しかも、その雷は過去に例を見ないほどの大きな雷とまで言われるものだ。


妹もさすがにTikTokの再生を途中で止め、布団にくるまり、怯えていた。両親はすぐさま俺と妹の安否確認をした。そのあと、妹は親と兄である俺を2階にある自分の部屋から呼んでいた。1人でいるのが怖いのだろう。仕方ない、まだ中学生なのだから。


1階にいる親は、今からでも避難するべきかどうか、落雷した庭の状態を確認しようともしていた。テレビは先ほどの落雷で停電になったためつかず、ろうそくを1本テーブルに置き、ラジオをつけて話し合っていた。その落雷の影響だろうか、家の1階の一番大きな窓は割れ、雨風が家の中に入ってきていた。


一方、俺はというと、今ベットの上に設置されていたエアコンに喰われている。どういう状況かというと、頭の上のエアコンが自分の頭に落ちてきたのだ。なぜ落ちてきたのかというと、俺の記憶と予想を織り交ぜたものだが、まずステップ1、自分(家族)の家の庭に過去最大の落雷が落ちた。これがすべての元凶だ。本当に許せない。そしてステップ2、その落雷から出た枝分かれした雷が俺の部屋と壁越しの横にあった室外機に雷撃。クリティカルヒット! 次にステップ3、その電流が室外機を通ってエアコンに侵入。最後にステップ4、エアコンに侵入した電流はエアコンの外に放電、その影響でエアコンは俺の頭に向けて落下。ステップ5、俺の頭全体がエアコンの中に。あら、びっくり。そんなこんなで今に至る。


妹は俺の返事が一切ないことに気が付いた。「兄ちゃん?」そう言い、くるまっていた布団をそっと置き、俺の部屋へ向かった。「お兄ちゃん」そう言っても俺は返事を返さない。いや、返せないのだ。「開けるよ、お兄ちゃん」そう言って妹は俺の部屋のドアをそーっと開けた。そこにあったのは、エアコンにミミックのように頭を喰われている状態の俺だった。


エアコンからは焦げた煙とにおいが部屋一面に広がっていた。もちろん、ちゃんと頭に電流は受けている。もう、生きることはできないだろう。


妹はその光景を見て、震えながらも両親を呼びに行った。「お父さん、お母さん、兄ちゃんが…!」



両親は階段をどかどかと上がり急いで駆けつけた。妹が俺のことは今は「兄ちゃん」と呼んでいたので「お兄ちゃん」と呼ぶことは俺が通信制の高校に進む前まではよく言っていたが今はない。だから、それを知っていた両親は妹の焦った声と呼び方で良星が異常事態であることは容易にわかった。そして、両親は俺の状態を見て愕然とした。母は涙を流しながら、「どうしてこんなことに…」と呟いた。


父は冷静さを保とうとしながらも、震える手で救急車を呼んだ。しかし、雷の影響で通信が途絶えていた。


「どうしよう…」父は絶望的な表情を浮かべた。


エアコンに喰われた状態の俺は、意識が遠のいていくのを感じていた。頭の中で、過去の記憶がフラッシュバックのように駆け巡る。


幼い頃、家族と一緒に行った海辺の思い出。波打ち際で遊んだあの日、父と母の笑顔が鮮明に蘇る。あの時に俺は溺れそうになって海が怖くなり、泳げなくなったんだよな。妹が初めて歩いた瞬間、家族全員で喜び合ったあの瞬間。俺はあの時4歳だったかな?けど、その記憶だけは風化しない。すごくうれしかったから。だから俺が通信制に行って、妹の対応が冷たくなってそのことについて謝りたいな。俺が通信制に入って迷惑かけてるんだったら、ごめんって。通信制高校に入ってからの新しい出会い。あいつらにいわれたとおり、避難所に行っていれば。そんなことより、あいつら2人と学校生活最後までバカやりたかったな。俺と友達になってくれてありがとうって言いたかったな。全てが一瞬で頭の中を駆け巡る。


その時、脳内で何かが変わった。普段使っている脳のリミッターが解除されたような感覚が広がる。意識がクリアになり、周囲の状況が鮮明に見えるようになった。まるで時間が止まったかのように、全てがスローモーションで見える。


脳内で電流が走るような感覚が広がる。まず、電流は視覚脳を通り抜け、視界が一気に明るくなる。次に、聴覚脳を刺激し、周囲の音が鮮明に聞こえるようになる。さらに、運動脳を通過し、全身に力がみなぎる感覚が広がる。最後に、前頭前野に到達し、強い意志が芽生える。


「俺は…まだ…生きている…」心の中で強く念じた。その瞬間、脳内の電流が全身に広がり、体が再び動き始めた。だが、エアコンの重さはまだ圧し掛かっている。


「絶対に生き延びて、今度はもっと自分に素直に生きてやる…」その強い意志が、俺の体を再び動かし始めた。視界が一気に明るくなり、周囲の音が鮮明に聞こえるようになった。しかし、その後すごい眠気が襲ってきた。


その時、ようやく通信が復旧し、父は震える手で救急車を呼ぶことができた。「救急車をお願いします!息子が…」父の声は震えていたが、確かに救急隊に伝わった。


数分後、救急車のサイレンが遠くから聞こえてきた。家族は俺を担ぎ出し、救急車に乗せた。妹は泣きながら俺の手を握りしめ、「兄ちゃん、頑張って…」と何度も繰り返していた。両親も必死に声をかけ続けた。


救急車の中で、俺は妹や両親の顔を見つめながら、心の中で誓った。「もうそんな顔させたくないな。いや、させない」と。


救急車の中は緊張感に包まれていた。救急隊員が迅速に処置を施し、俺の状態を確認していた。妹は涙を流しながら、「兄ちゃん、お願い、目を開けて…」と何度も声をかけていた。両親も必死に祈り続けていた。しかし、それに反して眠気は強くなる一方だ。


病院に到着すると、医師たちが迅速に対応してくれた。俺の意識は次第に薄れていったが、家族の声が遠くから聞こえていた。


「良星、頑張って…」母の声が最後に聞こえた。


目を覚ますと、真っ白な天井が視界に入ってきた。ここはどこだ?天国なのか?主人公は自分がどこにいるのかすら知らず、混乱していた。体を起こすと、驚くほど軽く感じた。まるで自分の体ではないような感覚だ。本当にこれは自分の体なのか?そう、疑うほどだ。状況をつかめないまま、周囲を見回すと、テレビの位置やスライドして開く扉、机の上のフルーツ盛り、そして自分が今いるベッドが目に入った。ここは病院なのか?個室のようで、かなりお金がかかりそうだな。


ふと目の前の壁にかかった鏡に気づく。ナニコレ?これは俺なのか?もしこれが俺だとしたら、なんで俺、顔に包帯ぐるぐる巻かれてるの?る〇うに剣心の敵キャラじゃないんだから。顔が痛いわけでもないしな。まさか!、顔の痛覚が…。焦って顔を指でつんと触る。感覚は…ある。触れた感触はいつも通りだ。怪我をしているわけでも、火傷をしているわけでもない。むしろ、いつもより肌の弾力があるような気がする。この包帯、絶対外したらいけないよな?   でも、外したくなるんだよな。そう思いながら、一人で葛藤していた。


そういえば、俺、エアコンに頭を丸ごと飲み込まれて病院にいるんだっけ?と思い出すと、自分の顔を見るのが怖くなった。おかしくなっていたらどうしよう。その気持ちが包帯を外そうとする手を止めていた。しかし、良星は考えた。このままクヨクヨしていても過去は変えられない。今見たって、後で見たって結果は同じだ。そう思い、勢いよく包帯を外した。包帯は風に乗ってベッドの周りを舞った。


これが俺?鏡に映っていたのは、今までに見たことのないイケメンだった。まるで芸術作品のように完璧な顔立ち。高い鼻筋と深い琥珀色の瞳は、見る者を一瞬で引き込む魅力を持っていた。濃く整った眉と高い頬骨は、顔に立体感を与え、薄く形の整った唇はまるで絵画の中の人物のようだった。滑らかな絹のような髪は自然なウェーブがかかり、顔立ちをさらに引き立てていた。肌は陶器のように滑らかで、まるで光を放つかのように輝いていた。


その顔は「さわやか系」と言えるだろう。整った顔立ちと輝く瞳は、見る者に清涼感を与え、まるで春の風のように心地よい印象を残す。彼の存在感は、まるで太陽の光が差し込むように明るく、周囲の人々を自然と引き寄せる魅力を持っていた。


この鏡、壊れているんじゃないか?まず、コイツは誰だ?これは鏡ではないのかもしれん。そう思いながら、頭をぶんぶんとロックバンドのライブのように振り回す。すると鏡の向こうのイケメンも同じように頭を振り回した。コイツ!!!まさか?俺の真似をしているんじゃないか?そうだ、そうに決まっている。だって俺とは別人だもん顔が。良星は鏡に映るのは自分であると一向に信じなかった。それもそのはず、それくらい顔が違っているからだ。良星はベッドから降り、鏡に近づいていろいろなポーズをしてみた。ピース、ダブルピース、拳をぶつけて「21歳拳で」と叫んでみたり、とにかくいろいろなポーズをしてみた。その動きに対応する鏡の中のイケメン。そして、ようやく気付くことになる。このイケメン、俺じゃねええーーーーかあああああああーーーーーーー!!!!!!!!そう思い、高揚する気持ち。心臓の鼓動が早くなっているのが自分でもわかる。しかし、このまま高揚する気持ちのままでいるとどこか自分gはおかしくなってしまうと思い、深呼吸をし、一旦冷静になった。ここまで顔が変わっていると、もしかしたら”転生”したのかもしれないしな、と思いながら鏡に向かってギャルポーズをすると、扉が急に開き、「何やってるの? …お兄ちゃん」と妹が入ってきた。


妹の顔はすごく幻滅したような表情をしており、人間を見る目をしていなかった。長年一緒に過ごしてきたが、こんな顔をされたのは初めてだ。しかし、彼女は一瞬立ち止まり、目を見開いて兄の姿を見つめた。まるで現実を受け入れられないかのように、何度も瞬きを繰り返した。やがて、彼女の目に涙が溢れ出し、頬を伝って流れ落ちた。


「お兄ちゃん…本当にお兄ちゃん?」彼女の声は震えていた。ついさっきまで幻滅していた顔がうその様だった。彼女は一歩一歩、ゆっくりと良星に近づき、その手を伸ばして彼の顔に触れた。その手は温かかった。包帯が外れたばかりの滑らかな肌に触れると、彼女はさらに涙を流し始めた。


「ごめんな、心配かけて 彩愛(あやめ)」主人公は妹に言葉をかけた。この言葉しか思い浮かばなかった。ただただ、病院全体に妹の泣いている声が響き渡った。


彩愛は兄の顔を見つめながら、涙を拭いもせずに言った。「お兄ちゃん、無事でよかった。本当に…よかった…」彼女の声には、安堵と喜び、そして兄がこん睡状態になっている長い間抱えていた不安が混じっていた。彼女は兄の手を握りしめ、その温もりを確かめるように何度も頷いた。


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今日も全脳力解放者は休めない‼ーひょんなことから脳のリミッターが解けて、本来の力を発揮するー @chunibyouzip222

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