すべての日々、私の青になる【第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト(短歌の部)二十首連作部門】

まつだはるか

すべての日々、私の青になる

いつまでも覚えられない ふるさとに向かう電車の微妙な速度


今年こそまめまめしいと言われたい おせち黒豆多めに食べる


昼下がり祖母の鏡台陽が差して化粧品の立ちこめる指


ガシガシと背中も掻けぬ風呂上がり ネイル剥がれた腑抜けた爪じゃ


横綱の土俵入りさえない場所のように締まりのない卒業だ


日曜のカウンター席お揃いのティラミスの味 味方はここに


菜の花を茹でる祖父の背ミニオンが踊る 母から贈られし服


電車にて赤子が笑いかけし人同士に桜 刹那に咲いた


通勤路「エミュー」という名のアパートの由来考え四季二度過ぎる


スーパーで売られしネギマ煌々とデンマークから来た鶏肉よ


ほらこれが台風なんだ見てご覧 この世歴まだニ年だもんね


寺前の「坐禅会」なるお知らせに葉の影揺れて重なる五月


ランドセル背負い上から雨合羽 小さな戦士校門に消ゆ


手の甲の心当たりのない傷を眺めつ思う別の瘡蓋


真夜中のラーメン行列並ぶ人ひとりひとりに生活がある


思い出のディティール合わずでもそんな適当さにて友情続く


灰色の夕方 雨が雨粒になる直前に傍にいて君


「似合うね」と去年は褒めてくれし服 貶すあなたの一年思ふ


動物園 キリン夢中な人々の首筋の張り一様伸びて


いましがた青をみたんだ夢の中 百億光年先で待ってる



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