第21話 仕様?

「――というところでダンジョンと1階層の案内は以上になります。私は基本的に村の役所にいますので何かあれば連絡をお願いします。まあこっちでお2人の出入りは確認できますのでお日にち空くようでしたらこちらからアプローチさせていただきます」


「は、はい。案内ありがとうございました村長さん」


「いいえいいえ。それではレアドロップ……。依頼が達成できるようお祈りしています! では! ……早くしないとハジメ君がドロップ品をがめるかもだからな」



 大体30分くらいで村長の案内は終わった。



 途中からさっきの冒険者のことが頭から離れなかったみたいで、ずっと早口と早足でなんだかこっちまで焦ってるみたいになっちゃった。



「はぁ、疲れたぁ。……ねえアルク、あの村長とこのダンジョンどう思った?」


「嫌な匂いではあるが村長のステータスに変わった様子はなかった。人間性的には苦手な部類だが大人しくしていれば害はないだろう。ダンジョンについては……非常に興味深い」


「私も大体同じ。でも冒険者の出入りを外にいる衛兵? だけじゃなくてセンサー設置のスクロールを使ってまで把握しようとしてるのはやりすぎよ。どんだけがめついのあいつ」


「村長、また村という単位で冒険者を囲う必要があるくらいドロップ品を含むダンジョンの資源は価値が高いということだろう。今まではモンスターの死体は放置するか焼くかしていたが、その必要もないならそこそこ儲けられそうだ」


「確かに村長がとんでもないぼったくり魔だとしても『この機能』があればお宝持ち帰り放題よね。……『アイテムポーチ』」





■アイテムポーチ


・スライムゼリー×10

・スライムハート×10





 ダンジョンの仕様の1つ、『アイテムポーチ』。


 頭で念じたり口にそれを出すことでステータスと同じようなウィンドウが表示される。


 そしてそこにはモンスターの素材がドロップ品として自動で追加される。


 取り出したいときはそれをタップするだけで可能。ちなみに取り出しは外でも自由にできるらしいけど、収納するのは不可能らしい。



 いわゆる高級で有名なあの魔法のポーチ、魔法のバックの類似効果ではあるけど無料で扱えるのは破格としか言いようがない。




 しかもこっちは収納できる数に制限がないからずっと探索してても勿体ない精神は発動しないってわけ。


 今表示してる分のスライムゼリーとか普通だったらぽいよ、ぽい。



「どうする? これなら村長の言ってた大型モンスター、ボスの討伐だって美味しいわよ」


「あれは階層を跨ぐときに倒す必要があるだけらしいからな……一先ず1階層で釣れる魚をコンプリートするのが先だ」


「依頼、黄金マグロを釣る必要だってあるものね。その感じだと1階層で釣れるんでしょ?」


「いいやあれは……5階層だな」


「は?」


「よし。次の階層に向かう階段の位置は把握した。マップを展開しろ。釣り場に向かうぞ」


「あ、あんたねえ……」


「魔族討伐にレベルアップは不可欠だ。こういうのは回り道が近道だったりするはずだ」


「それどっちなのよ……。まあいいわ、どっちみちあなたがいないとボスなんて倒せるかどうかも分かんないんだし……『マップ』」



 ダンジョンの仕様2つ目、ボスの存在。


 次の階層に進むにはそれを邪魔するモンスターの討伐、あるいは討伐されたボスにダメージを与えている必要がある。



 そしてそれはこの『マップ』っていうダンジョンの地図を空中に展開できる仕様に新しい機能を追加してくれるらしい。



 まったく、ポーチとかマップとか……本当に人が生み出したんじゃないのかしらこの場所――



「――? この印はなにかしら?」




「……。……。……おーいっ! あんたたちもボスを倒しに行くのか? だったら俺たちと一緒にどうだ?」




「ああ、これって人を表す印だったのね」



 突然マップ上に表示された印を確認するように少しだけその場で佇むと前から冒険者が3人。



 あの村長、金儲けのためだからって人増やし過ぎなんじゃない?



「悪いが俺たちは一先ず釣りをしなければいけない」


「そうだったのか、てっきりあんたたちも異変の確認依頼を受けたのかと思ったよ」


「……異変だと」


「ああ。どうやら2階層以降のモンスターたちの中に強化、さらには進化した個体が発見されたらしい」


「し、進化!? 原因はなんなのかしら?」


「あはは! だからそれを俺たちが確認しにきたってわけだ。ここは1階層は安全だと思うが……。一応今出てる赤い丸印が俺たちで……」



 冒険者は何か考えた様子で顎に手を当てると今度は唐突に私の肩に触れた。


 いくら私が美人で華麗だからっていきなりはちょっと……。



「よし、これで印に触れるだけでメッセージの送受信。それと状態の確認ができるようになった。何かあったらすぐに連絡してくれ。それじゃあな呑気な釣り人冒険者さんたち」



 3人の冒険者はその首のダイヤモンドに輝くプレートをなびかせながらからかうように笑って階段を下って行った。



「……ねえアルク。今のちょっと悔しくない?」


「ああ。だが……」


「分かってるわよ! 釣りでしょ! だから釣って釣って釣ってレベルアップしまくってボスをド派手に倒して……あいつらの腰を折ってやろうじゃない!! あ、勿論そのときはこの私が! 前衛で! めちゃめちゃにぼこすからね!」


「……了解だ。ふふ。よし、お前にも釣りの楽しみを叩き込んでやる」

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不遇職の【釣り師】ですが、餌はドラゴンの肉です。~追放されて釣りをするだけのスローライフを送っているはずの最弱男、実は最強でハードライフ中~ ある中管理職@会心威力【書籍化感謝】 @arutyuuuuuuu

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