第20話 苦手?
「……まさかこんなにモンスターが待ち伏せしているなんて……。でもご安心ください!ダンジョンの階段付近にあるこのセーフティエリア内にモンスターが入り込むことは通常あり得ませんので!」
「ほ、本当にピタッと線の際で止まってるわね。あの、これって他の冒険者が仕掛けたものなのですか?」
「いいえ。なぜかダンジョンではこのような場所、それとダンジョン専用の移動魔法陣、絶対にモンスターの湧かない階層、回復ポーションのように体力を元に戻そうとしてくれる水で満ちた池、そういったものや場所があるんですよ」
「全部便利ですけど……やっぱりどれも自然に、はおかしいですわね」
「あはは! でも役に立つのですからいいじゃありませんか! それじゃあ今話した移動魔法陣、これの使い方をご説明しますね。まずはここに1度乗ってください」
村長が指差したのはパッと見ただけじゃ気づかないような灰色の魔法陣。
よくよく見ればダンジョンが薄暗いおかげもあって若干光って見える。
「……。罠、ではなさそうだな」
「当然当然! ささ、どうぞどうぞ」
『――登録が完了しました』
訝しげな表情のアルクではあったけど、村長みたいな明るさ全開の人には弱いのか意外にもすんなり魔法陣の上に立った。
すると女性のまったく起伏がない声が一言だけどこからともなく聞こえてきた。
私たちがレベルアップしたりしたときに流れるアナウンスとは違って明らかに耳から入った音で、初めての体験だったんだけど……。
なんだか初めてって気がしなかったわ……。
「はい! これで他のにある移動用魔法陣からこの階層まで移動が可能になりました! それで利用方法なんですが、これまた簡単で頭の中に行きたい階層を思い浮かべるだけ! 対価はないので危ないと感じた時や忘れ物があった時など、とにかくガンガン使っていいです! じゃあ今度はローズさんですね」
「は、はい」
村長に促されて私も魔法陣の上へ。
村長の説明の仕方、胡散臭い客引きに似ててちょっと苦手かも……。
というか全体的に……。
『登録が完了しました――』
「――うおっ! なんだよこのスライム!? って位置が微妙にちげえっ!」
もう1回流れた音声をしっかり聞こうとしたっていうのに……なんかうるさいやつが現れたわね。
移動用の魔法陣ってこんな感じで移動できるんだ、って見れたのはいいけど派手派手ドクロまみれファッションでうるさくて……今日私が苦手そうな人多くない?
というかこの人もダンジョンに入場できてるということは、冒険者ギルドとか村長とかから認められたすごい人なのよね?
……弱そうだけど媚び売っといた方がいいかもしれないわね。
「アルク、ちょっと力借りてもいい?」
「構わないが……あんまり構いすぎるなよ。釣り場を紹介してもらうのが遅くなる」
「分かってるわよ」
アルクが背中に手をおいてくれたことを確認して一緒にセーフティエリアの外に踏み込む。
素の力でもスライムくらいなら流石に勝てるとは思うけど……どうせなら力の差を見せつけて気持ちよくなりたいじゃな――
「あーっ。大丈夫っすよ! 俺なんかでもこれくらいは楽勝なんで! ……ほいっ、と」
「ぽみゅ……」
「や、やるわね……」
ドクロ男性は剣を取り出すと見た目とは裏腹に流れるような剣さばきでスライムの攻撃をいなすと急所である小さな小さなその核を貫いた。
敵が弱いといえどこの身のこなし……やっぱりただ者じゃないわね。
ただプレートはつけてないけど。
「ハジメ君! どうだね、進捗のほうは!」
「あはは! 全然っすわ! どの階層もモンスターが多くなってるわ強くなってるわで!」
「そうかい……。じゃあドロップ品は……」
「それはたんまりですよ! どれも安いのばっかりですけどね!」
「そうか! そうか! ならいいんだ! よしよし、それなら戻り次第すぐ買取をしよう!」
「あざっす! いや、明日明後日あたりで仲間もくるかもなんで、ドラゴンのドロップ品はまた別日に期待してくださいよ」
「……。お仲間さんが来られる、か……。くふふ、これでドラゴンの素材、だけじゃなくてもっと深い層のレアなドロップ品も……」
「それじゃあ俺外で待ってるんで! ……お前らもこいつらにはほどほどの付き合いがおすすめだぞ。面倒ごとが嫌なら正面から向き合う必要なんてないんだぜ」
「え? それはどういう……」
「すみません! お2人ともを放っておいてしまって! さ、次はドロップ品について、アイテムの収納について、それと2階層までの案内と――」
「釣り場だ」
「そうですね! そうでした! ではさっさと……じゃなくて、迅速にご説明と案内をさせていただきます」
この村長、やっぱりお金に目がない。なさすぎるわ。
今の会話でだらしなく涎流してたし、目は怖いぐらいギラついてたし、それに……。
「嫌な匂いね」
「そうだな」
ダンジョンに侵入するときと似た匂いが私たちの鼻腔をくすぐっていた。
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