第29話 修道女

静かに待っていると外が少し騒がしくなった後にイケオジは戻って来た。


「今俺が呼べる最高位の聖職者だ。後悔しても知らんぞ。」


「ただの人間にちゃんと無害の事なら後悔も何もないですよ?」


そう言いながらイケオジの後に入って来た人間に視線を移す。


「うわー。」


入って来た人間はショートヘアのこれまたスタイル抜群の可愛い女の人だった。格好からして修道女らしい。…洋風な世界だと思っていたが宗教までとはっと思いつつ、俺の脳裏に邪な考えが浮かぶ。

ここまで連続で美形が来れば“もしやこのイケオジ、イケオジな事利用して複数人と今でもやる事やってるな!!?”っと。


「なんだその反応は。」


「いや、案外若いなって思っただけ。」


「そんな事は…。」


ゴンッ。


「女の人の年齢をバラすのは良くない事ですよ?」


(わー。身長的に届かないと思うけどどうやって脳天に拳骨入れたんだろ?)


明らかにイケオジの方が身長が高く小柄な修道女の拳は脳天に届かない筈なのだが脳天に直撃したのかイケオジは片手で頭を押さえて静かに悶えている。


「それで今回はこの子ですか?確かに持ってますけど人間のそれだと思いますよ。」


「確認を兼ねてだ。国の帳簿に載ってない以上、それに気づいてしまった時点で確認をするのは義務だ。」


「私が見た感じだと邪なるモノは混ざってないわよ?」


「だ・か・ら!!確認する義務があるの!!とっととやれ!!!」


ゴンッ!!


「そんな大声出さなくても分かってますよ。」


(これは理不尽だなぁー。イケオジが涙目になってる…。)


さっきよりも威力が高いのか押さえていた手の形が少し変形している。


「なら始めてくれ。俺は巻き込まれない様に外で待機している。」


この世界の修道女は全員パワー系なのか?なんて思っていたらイケオジがとっとこ部屋の外に出て行ってしまった。


(え?ちょ、何巻き込まれるって。そんなにヤバい何かするの?お祓いってこう十字架持ってハッーみたいな感じじゃ…。)


お面をつけている事を忘れ、思わずポーカーフェイスを崩さずに動揺していると修道女はニコッと笑いこちらを向いた。


「あぁ、あのおじさんのことは気にしないでください。あれは薄汚れた邪悪な大人なのでこれから使うモノにモロに影響を受けてしまうので避難しただけです。」


お祓いなんてただの儀式で宗教を信じている人だけが効果を信じている迷信に過ぎないと思っていたがこの世界では少し違うらしい。



(こーわ。マジ、怖ー。)


一応俺も中身は薄汚れた大人なので最悪ただでは済まない気がしている。


「じゃあ、とっとと始めますね。」


修道女が手を合わせて祈りのポーズを取ると部屋の隅から隅まで見えない何かに満たされた事が直感で分かる。


(お祈りってこんな物理的な干渉をする行為だったの!?)


そう驚いていると修道女の背後に見えない何かが顕現した。

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無自覚吸血鬼は生き血を啜る 夜椛 @HIMAZIN_63

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