いざ、異世界へ その3

広大な小麦畑の真ん中に俺は立っていた。


「……ここは異世界なのだろうか。」


どこを見渡しても小麦しか見れないのだが――あっ!

女神様からもらったチート道具がないじゃないか。

そりゃそうか、いきなり異世界に飛ばされたし……ん?

ズボンの両ポケットの中に小さいカプセル薬のようなものが合計6個入っていた。

これ、なんだろうか。

飲むと肉体が強化される薬とかかな。

薬をよく見てみると剣のマークがプリントされていた。

他の薬には弓や鎧のマークなどがあった。

んーやっぱりわからん。

とりあえずこの小麦畑から出るか。

だけどどこに進めばいいのかわからないな……上から見たら道がわかるかもしれないな。

強化されたなら数十メートルぐらい跳べるよな。


「ふんっ!!」


俺は全力で地面を蹴った瞬間、地面からかなり離れた空中にいた。


「すげー、こんなに高く跳べるなんて。……おっと早くルートを確認しないと。」


俺は空中で小麦畑から出るための道を見つけるために四方八方を見渡した。

おっ、あそこ、木製の家がたくさんあるってことは村かな。

よしっ、あの村に向かうか。

俺は着地すると同時に、さっき空中で見つけた村に向かって走り出した。

全身の筋力が強化されたので、ものすごい速さで小麦畑を走っている。

俺が通ると小麦が大量に吹き飛んでいく。

これを育てている人に会ったら、俺、殺されるかもしれないな。

今だったら100メートル走を3秒以内で終わらせられそう……。

そんなことを考えていると村が見えるようになった。

もうすぐで着くぞ、……本気で走ってみるか。

俺は走るスピードを上げた。

!?

あと数十秒で着くと思っていた村が目の前にあった。

やっべ、止まらないと家を吹き飛ばしちゃうかもしれないのに、速すぎて止まれないんだが。

物凄い速さで走っている俺の目の前に男の人が飛び出してきた。


「あっ危なーーい!!」


男の人は両手を俺に向かってかざした。


「ハッ!!」


男の人の両手から突風が現れた。

その突風は俺に直撃した。

突風に直撃した俺は、走っていた方向の逆に吹き飛ばされ、木製の家に激突した。

俺は頭上にある崩壊した木製の家の瓦礫をどかして立ち上がった。


っ、何が起こったんだ。さっきの男の人はナニモンなんだ?」


男の人から突風が出てきたっということは、彼は魔法を使ったのだろうか。

そうか、俺がいた世界と違う世界だから一般人でも魔法を使えるのかな。

俺の目の前にはさっきの男の人が立っていた。

男の人は高身長でがっしりとした体付きだった。


「君、大丈夫か。……すまない、君に魔法を使ってしまって。止まる気配がなかったから私が無理矢理止めようとしたんだ。あのままだったら家が崩壊して――あっ!しまった、結局家を壊してしまった!どうしよう……。」


「俺は大丈夫ですけど家は……。あのー、俺はこの後どうなるんでしょうか。謝っただけじゃ済みませんよね……。」


立派だった2階建ての木製の家は、今では完全に崩壊してしまい、瓦礫しか残っていない。

そういえば男の人が言っていたことが理解できていたな……。

俺が言ったことは通じているのだろうか。


「よしっ、俺が新しい家を買えるお金を稼いで、この家の持ち主に渡すぞ!俺のせいで家を壊してしまったから君は責任をとらなくていいよ。」


「いえ、俺が弁償しますよ。俺が原因ですから。あのー、一ついいですか。ここできる仕事って何がありますか。俺ここに来るの初めてで……。」


仕事はしたくないけど働かないと弁償できないし……。

どういう仕事があるのかな。


「いや、俺が弁償するよ。……君はここに初めて来たっていうことは旅人かな?お金が欲しいならギルドにいってクエストを受ければいいよ。ここの村の近くにある大きな街に行けばギルドがあるよ。君、速く走ってたから身体能力はまあまあ高いよね。クエストも一応クリアできるんじゃないかな。」


「ギルド、クエストっ!?どこにあるんですか!俺、ギルドで働きたいです!」


「えっ、そうか……。」


ギルドにクエスト、異世界作品の定番だよな。

モンスター討伐とか戦うクエストだったら、俺大活躍できるんじゃないか。

魔王を倒すのが目的だから、雑魚敵に負けるわけないよな。

この人は魔王について何か知っているかな。


「俺、実は魔王を倒そうとしているんです。いわゆる勇者ってやつですよ。魔王について何か知ってますか。」


俺がそう言うと男の人は険しい顔つきになった。


「君が魔王を倒すだって?馬鹿言うなよ、魔王なんて倒せるわけないだろ。君は俺よりも強くないと思うが?」


男の人はきつい口調で言った。

はいカッチーン

この人は俺がチート道具とチート能力をもらったのを知らないんだよな。

この人には俺の偉大なる物語のかませ犬になってもらおうか。


「俺と勝負しませんか?俺はお前に負けると思わないけどねぇ〜」


「ほう、勝負か。……いいだろう。ここでバトルすると迷惑がかかるから移動するぞ。俺についてこい。」


「ああ。」


俺は走っていく男の人の後ろを追いかけた。
























































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転移する際、女神様からチート道具&チート能力を授かったが、第一村人にも勝てないんですけど!? 貴機器 @koruda

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ