夢見草

@Kayaamata

第1話

「さよなら。」

その一言だけ、それだけでこの関係が終わる。恋仲でもなんでもない、ただの友達だから。


芽吹きそうな夢見草、ここに来る最後の日。今日は卒業式だ。別れの季節。ここにいる誰も彼も、感傷に浸っているのだろうか。式の前から泣く者、最後の会話を楽しむ者、これからも会おうと約束する者、周りを見れば形は違えど、みんな楽しそうだ。そんな中、1人きりで校舎の中へと足を運ぶ。外とは違って、静寂に包まれた教室。自席につき、時計の針が進むのを待っていた。


式は何事もなく終わった。最後のHRも終わり、仲の良い友人に別れを告げて校舎から去る。もう一度、周りを見る。咲き誇るフリージア、黄色の薔薇。それらは僕らを祝福するかのように風に揺られている。

「ずっと友達だよ。」

そう呟いた言葉は宙を舞い、誰の耳にも届くことなく消えていく。そして何事もなく、今日が終わるのであった。

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