6.地獄は冒険の世界みたい!?そして出逢った綺麗な景色

「次はここだな」


そこには、乗り物が沢山置いてあった。

自転車、車、一輪車、それらが、とても奇妙でグロテスクな装飾で彩られていた。


「気持ち悪いだろ。これも、佐竹様の趣味だな」


自転車は、持ち手の所が豹柄になっていて、サドルは蛇柄、全体のパイプはシマウマ柄、つまり白黒のボーダーになっている。

車は、全体に、子供向けアニメのキャラクターのようなタッチで、顔と手足の付いた紫色のキノコと、同じく顔と手足の付いた、真っ赤なさつまいもが、ドデカク全体を覆っていた。

一輪車は、金ピカで、金粉が付いているように見えた。


「まあ、見た目は好き嫌い分かれるというか、最悪だがな、

これも人気スポットでな。

これに乗って、遠くまで遊んでいけるんだ。

地獄は、深海みたいな所があってな。

遠くまで行くと、なにがあるかわからない、どんな面白いものがあるかわからない、お楽しみになっているんだ。

だから、これらに乗って、移動する訳だな。

ただし。

食事の時間、全体集合時間、罰の時間、消灯の時間には、あの食堂前に戻らなきゃ行けない。

戻れなかったら、酷い罰が待ち受けている。


それとな、我々の脳には、チップが内蔵されていて、我々が見ている視点が、カメラになっている。

見ている世界あるだろ、それがそのまま、佐竹様の部屋のモニターに映されるんだ。

録画機能もあるから、嘘は付けない。

それと、GPS機能も付いていて、佐竹様のパソコンにある地図上で、何処にいるかお見通しだ。

だから、時間になっても食堂前に着いてない人が、どこに今居るのか、佐竹様にはわかってるんだ。

それで、部下に飛ばせて、連れ戻すって訳」


「そうなんですね、面白いですね。

深海みたいになってるなんて、冒険したいな」


「お、お前も地獄の面白さに気付いてきたか。

確かに罰は辛いが、それにさえ慣れれば、生前より楽しいって言ってる人もいっぱいいるからな。

恋愛と冒険が、この世界にはあるってもんよ」


僕は、少し、笑顔が溢れた。


「そういえば、樋口さんは、恋人はいないのですか?」


「ああ、俺はな。一ヶ月ほど前に別れたよ。

二年くらい付き合ってたかな。

男勝りで、カッコイイ女だったよ。喋りも上手で面白くてな。

でも、なんとなく、お互い、居心地悪くなってな。

これっていう理由は無いのだけれども、会話の微妙なちょっとが、お互い違和感を持ち出したんだろうな。

ま、おまえにはわからない、大人の恋愛って訳よ」


樋口さんは、何歳なんだろう。

見た感じ、大学生な感じ。

21歳くらいかな。

思わず聞いてみた。


「樋口さんは、おいくつなんですか?」


「ああ、俺はな、21歳で死んだ」


やっぱり。


「でもな、ここで40年ほど過ごしている。

だから、61歳みたいなもんだ」


そうか。

死んだ時の姿のまま、見た目は変わらないのだな。

そんな年齢になっているとは。

死んだ回数も多かったもんな。


「ところで、どうして地獄に落ちたんですか?」


「ああ、それな。

その質問は、地獄では禁句になっているんだ。

一人一人、隠したい人も居るし、変な偏見も生まれる。

それに、佐竹様も推奨してなくてな。

全体の空気として、言わないようになっているんだ。

だから俺も聞いてない訳」


「あ、そうなんですね、ごめんなさい」


「いやいや、わからないからしょうがないよ。

じゃあ、次は、とうとう、お目当ての所に行くか!」


「はい!!」


そして、乗り物置き場から自転車を借りて、二人で漕いで行った。


久しぶりの運動のような、清々しい気持ち。

爽やかな風。

二人で、自転車で漕いで行く。

とても楽しく感じた。


「気持ちいだろ。

久しぶりに風を感じてないか?

地獄は余り風が吹かないからな。

自転車に乗って、風を感じるんだ!!」


「はい!!」


びゅーんと、駆けて行く。

樋口さんが、僕の同居人で良かった。

心から、そう思った。


そこから10分くらい経っただろうか。


「はい、着いた!!」


そこには、とても大きな樹木があった。

見上げると、東京でもとても高い高層ビルより更に高いくらい、大きくて、高さだけではなくて、横にも、空一面を覆うように、葉っぱで埋め尽くしていた。


「綺麗だろ。

カッコいいだろ」


「はい・・・!!」


地獄にあるとは思えない、平和の象徴のような、優しくて濃い、緑色が、全体を覆っていた。

幹もとても太く、がっしりしている。

ずっと見ていたい、そう思った。


「この樹木なんだがな、ただ綺麗なだけじゃないんだ」


「そうなんですか?」


「ああ、一年に一日だけな、葉っぱも幹も、真っ白になるんだ。

全部が真っ白。凄く綺麗だぞ。

そして、その日だけ、特別な事が起こるんだ」


「特別・・・?」


「ああ、神様からの、とっておきの、プレゼントだ」

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地獄で恋愛!?地獄に落ちたら暇を持て余している悪人達は、恋愛ばかりしていてラブラブな世界だった!! @amahazinsei

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