最終話:余波
翔太は自宅に戻ってからも、あの夜の出来事が頭から離れなかった。何度も警察に足を運び、再調査を求めたが、証拠がないために取り合ってもらえなかった。友人や家族に話しても、信じてもらえず、ただの悪夢だと片付けられるばかりだった。
数週間後、翔太はもう一度あの山に戻ることを決心した。真相を確かめるためには、もう一度現場を調査するしかないと思ったのだ。今回は、慎重に準備を整え、友人の健一を同行させることにした。健一は幼馴染で、翔太の話を唯一真剣に聞いてくれた人物だった。
二人は再び山を登り、あの古びたテントの場所にたどり着いた。テントはそのままの状態で残っており、まるで時間が止まっているかのようだった。翔太は遺書が見つかった場所を調べ、再び手掛かりを探し始めた。
すると、健一がテントの裏側で何かを発見した。そこには、古い石碑が埋もれていた。苔むした石碑には、文字が刻まれていたが、風化してほとんど読めなかった。しかし、翔太と健一はその文字を解読するために努力し、一部の文字が判明した。
石碑には、「ここに眠る者の魂を鎮めよ」という内容が書かれていた。さらに掘り下げて調べると、石碑の下には小さな箱が埋められていた。翔太と健一は箱を開け、中に入っていた古い手紙を見つけた。
手紙には、この場所で遭難した人々の魂が化け物として彷徨っていることが書かれていた。さらに、化け物が持っていた遺書は、かつてこの地で亡くなった登山者のものであり、その魂を鎮めるための儀式が必要だという内容だった。
翔太と健一は、手紙に書かれた儀式を行うために必要な道具を集め、手順に従って儀式を行った。儀式が終わると、突然空気が変わり、周囲が静まり返った。その時、二人は再び鼻息のような音を聞いた。
恐る恐る振り向くと、あの化け物が再び現れた。しかし、今回はその目が赤く光っていなかった。化け物はゆっくりと近づき、手に持っていた遺書を翔太に差し出した。翔太は恐る恐るそれを受け取り、化け物は静かに消えていった。
遺書には、山で亡くなった登山者の最後の願いが書かれていた。家族への感謝と、助けられなかった無念の気持ちが綴られていた。翔太はその遺書を持ち帰り、登山者の家族に届けた。家族は涙を流しながら感謝の意を示し、登山者の魂がようやく安らぎを得たことを喜んだ。
その後、翔太は再び山に登ることはなかったが、あの出来事を通じて、山の持つ神秘と恐怖を改めて感じた。化け物の正体は未だに謎のままだが、翔太はその魂が救われたことに安堵し、再び日常生活に戻ることができた。
山の亡霊と遺書の謎 O.K @kenken1111
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