山の亡霊と遺書の謎
O.K
第1話:山の中での恐怖
山登りが趣味の主人公、翔太は、ある週末、一人で山に登ることにした。天気は快晴で、爽やかな風が吹き抜ける中、翔太は静かな自然に心を癒されながら登っていた。しかし、突然の天候の変化が彼を襲った。急激に暗くなり、激しい風雨が吹き荒れる中、翔太は方向感覚を失い、道を見失ってしまった。
翔太は必死に歩き続けたが、体力の限界が近づいていた。そんな時、木々の間に古びたテントが見えた。テントは朽ち果てており、誰も住んでいないようだったが、雨風をしのぐには十分だった。翔太は躊躇することなくそのテントに身を寄せ、疲労困憊の身体を休めることにした。
テントの中は薄暗く、湿気が漂っていた。翔太は持っていたタオルで濡れた身体を拭き、ザックから非常食を取り出して少しのエネルギーを補給した。雨の音が静かに響く中、彼は深い眠りに落ちた。
ふと目を覚ますと、辺りは闇に包まれていた。テントの隙間から外を覗くと、月明かりが僅かに漏れ、周囲の景色がぼんやりと浮かび上がっていた。その時、何か異様な音が聞こえてきた。鼻息のような、重く、深い音が近づいてくる。
心臓が鼓動を速める中、翔太は慎重にテントの隙間から外を覗いた。そこには、信じられない光景が広がっていた。巨大な影が月光の下で動いている。熊ではない。熊とは明らかに違う、見たこともない大きな化け物だった。その化け物は人間のような形をしていたが、異様に長い手足と鋭い爪を持ち、目は赤く光っていた。
恐怖に凍りついた翔太は、音を立てないように息を殺して見守った。化け物は何かを手にしていた。よく見ると、それは紙のようなものだった。翔太は目を凝らしてその紙を見た。それはボロボロになった古い紙で、どうやら手書きの文字が書かれているようだった。
化け物が紙を持ち上げ、月明かりに照らして読んでいるようだった。翔太はその内容を確認しようと身を乗り出したが、文字までは読み取れなかった。しかし、紙の一部に「遺書」という文字が見えた。ぞっとする寒気が翔太の背中を走った。
その時、化け物の赤い目がテントの方を向いた。翔太は恐怖のあまり動けなくなったが、化け物はしばらくこちらを見つめた後、再び紙に目を落とし、ゆっくりと森の中へ消えていった。
翔太はその夜、一睡もできなかった。翌朝、テントの外に出ると、化け物の足跡が残っていた。彼は遺書が置かれていた場所を探し、古びた紙を見つけた。そこには、このテントの持ち主が遭難し、助けを求めることなく命を絶ったことが記されていた。
翔太は急いで山を下り、地元の警察にこの出来事を報告した。しかし、警察が現場を調査した時には、化け物の足跡も遺書も跡形もなく消えていた。翔太の話は誰も信じなかったが、彼の心にはあの夜の恐怖が深く刻み込まれていた。
それ以来、翔太は二度と一人で山に登ることはなくなった。あの化け物が何だったのか、そして遺書を持っていた理由は何だったのか、彼は今でも答えを見つけることができずにいる。
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