【魔女狩り】掌編小説

統失2級

1話完結

1384年、ドイツのとある地区のとある集落でダヤリ人の会議は開催されていた。その会議に於いて若きアシュカータは情熱的に声を上げる。「我々、ダヤリ人には霊能力がある。なのに何だ、この惨めな生活は、これは全て魔女たちの所為だ。魔女たちの魔力が我々の霊能力の活動を妨げている。魔女たちを排除すれば、我々の生活水準は必ずや向上する」その発言を聞いていた小柄で老齢なカーリシマが、諌める様に発言する。「それは危険な思想だアシュカータ、魔女たちに逆らうのは賢明ではない。魔女たちの魔力を過小評価してはならない」しかし、アシュカータも空かさず反論する。「我々は賢く霊的にも強い、そして、ダヤリ人はヨーロッパ中に点在している。全てのダヤリ人が団結するなら、魔女たちを滅ぼす事は可能だ」


アシュカータの主張に賛同した38名の若きダヤリ人はカーリシマとその勢力の反対を押し切って、今正に魔女たちへ戦いを挑もうとしていた。アシュカータの1団はそれぞれ霊能力のナイフを携え街の外れにある魔女の森に進軍していた。だがしかし、その進軍は魔女たちも把握しており、魔女たちに迎え撃つ準備は出来ていた。アシュターカ隊が魔女の森に足を踏み入れた瞬間、魔女たちの攻撃が始まった。アシュターカ隊は幻覚を視る事となったのだ。それは彼等の祖母や母親や姉や妹や妻や娘が野犬の群れに食い殺される幻覚だった。アシュカータは大声で叫びアシュターカ隊を鼓舞する。「これは、魔女たちによる単なる幻だ、何も恐れる事は無い。我々は賢く霊的にも強い、このまま突き進むぞ」アシュターカ隊のうち、12名のダヤリ人が発狂し喚き声を上げながら、霊能力のナイフを自らの喉に突き刺し絶命した。しかし、それでも生き残ったアシュターカ隊は怯む事も無ければ歩みを止める事も無く、ダヤリの呪文を唱えながら進軍を続けた。1時間ほど歩いただろうか、遂にアシュターカ隊は小屋の建ち並ぶ開けた集落まで辿り付いた。そこでは魔女たちがアシュターカ隊を待ち構えていた。魔女たちは魔法の杖を振りかざし呪文を唱えながら氷の刃を飛ばし始める。それに対し、アシュターカ隊員も呪文を唱えながら霊能力のナイフを片手に魔女たちに襲い掛かって行くのだった。


戦いは短時間の内に終わった。14名の魔女たちは全滅し、29名のアシュカータ隊の内、20名が命を落として、アシュカータの26年の短い生涯も魔女の森で幕を下ろす事になった。幻覚で自死した数を含めれば32名のダヤリ人が戦死した事になる。そして、この戦いは魔女たちとダヤリ人勢力との長きに渡る戦いの幕開けであった。


時は流れ、ダヤリ人勢力はカトリック教会に取り入り、彼等の差し金によってカトリック教会はヨーロッパ中で魔女狩りを敢行する事となった。そして、遂に1823年の夏の夕刻、最後の魔女が処刑され魔女たちは完全に絶滅した。その結果、ダヤリ人勢力は世界を支配する事となった。しかし、その世界支配は人類を混沌と殺し合いに引き摺り込む、凄惨な嘆きの支配になるのでした。


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