あとおし怪談・巣へひきずる

釣ール

視線と事件

 いつも歩いている広い池と木々が植えられている公園付近。


 自然が多くて最初は気持ちよかったが、住んでいる生き物は日本ならどこにでもいる汚水おすいに耐えられる別の国の生き物。

 すっかり生態系せいたいけいとして組み込まれているから自分にはどうすることも出来ない。


 道を通りかかった時にガードレールに広がるクモの巣を見て、きっとこのクモ達もどこかから飛ばされてやってきたのだろう。

 糸に散らばっている無数の虫の足や羽が罠にかかった者の末路として残っているのが生々しい。


 人間はもっと恐ろしい栄養の取り方をしているはずなのが客観的ひとめせんだとこんなに他の生き物の本能に圧倒されるのはなぜなんだろう。


 そういえば今日もこのガードレールで不思議な事件があったのを思い出した。


 糸にからまった死体があって、身体の一部だけが残っていてほぼ人間には不可能と言われる方法。


 まるで大きなクモの巣に人が引っかかったようだと。


 怖くなってそのガードレールには近づかくなったがまさかクモがそんなことをするなんていくらこのご時世でもありえない。


 そうは分かっていても逃げずにはいられなかった。


 夜にクモは人を狙っているのかもしれない。

 なんらかの視線を感じたので振り返ると何もいない。


 考えすぎか。

 クモが大きくなることはない。

 小さいからここまで生き残っている。


 これもまた糸に引っかかった獲物の感想なのだろうか?

 いやだな。

 クモにすすられる死に方なんて。


 そして元の日常へ戻る。

 あの事件が今後自分にも関係ないとは思わないまま。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あとおし怪談・巣へひきずる 釣ール @pixixy1O

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ