第8話 VF

Hとは相変わらず休みの日もつるんでいた。

奴は愛車のエリミネーターを売り、中古の幌タイプのジムニーを購入した。


私 『車買ったんだね!良いね! バイクも良いけど、買い物とか雨の日とかやっぱり車だよねー!』


H 『うん…迷ったんだけどね。長く沖縄に住むなら車だと思ってさ。』


私 『正解!夜のドライブでも行こうぜ!』


H 『OK!その前に幌外すの手伝ってくれ。』


オープンカーは開放感が気持ちいい!

58号線の風を浴びながら海岸線へ向かった。

Hのジムニーはラジオが壊れていたが、ラジカセは生きていた。

ラジカセからは当時流行っていた"アイランドのステイウィズミー"が流れていた。


H 『この辺で休憩しよう。』


車を波の上ビーチ付近に止めた。

ビーチの裏はラブホテル街になっており、カップルの車が何台か止まっている。


H 『ビールでも飲んだら良いさ〜』


と、私にオリオンビールを渡した。


私 『良いの?』


H 『良いよ。俺、あんまりビール好きじゃ無いし。俺はコーラで充分さ!』


私『せんきゅー!海見ながらビール!最高だぜ〜!』


月明かりが海と砂浜を照らし出し、波のBGMで癒される。


私 『そう言えば…あの時もこんな感じで月明かりが綺麗な夜だったなぁ。』


H 『ん?何の話し?』


私は高校の頃に原付ニケツで心霊スポットに行った話しをした。

Hは心霊スポットが米軍施設と言うところに食いついた。


H 『今でもあるの?その、米軍施設。』


私 『あるよ。近いから行ってみる?』


H 『行きたい!』


と言う訳で私達はVFダンスクラブに向かった。


因みに私が高校生の時のVF体験談は、[夏の日の思い出]の第2章に書いてあります。気になった方は読んで見て下さい。


約20分程でVFに着いた。相変わらず鉄の門は開きっぱなしだ。

そして建物の正面に車を止めた。


私達の他に1台先客がいた。カップルの車だ。 この場所は通りから見えないし、心霊スポットとは言えデートスポットにもなっている。


私 『あの時も、カップルの車いたなぁ…』


月明かりで建物とその前にある広い駐車場を照らし出している。

国道から少し離れている為シーンと静まり返ったVF敷地内。


私 『2階の真ん中の窓…当時はそこに女の人の霊が立っていると言う噂があったんだよ。』


H 『ふーん。でも、建物もオシャレだし。何だかデートスポットになるのもわかる気がする。月だけで明るいのも良い感じだよな。』


私 『怖くないの?』


H 『俺、あんまりそう言うの信じないからなぁ。』


私 『そうなんだ。まぁ、あの時と比べて怖い感じは…確かにあまり無いな。』


Hと色々話しているその時。


『ぎゃ、ぎゃー!』


と女の人の悲鳴が響き渡った。

少しして、先客の車が慌てるように走り去っていった。


私 『あの車の人ら、幽霊目撃したんじゃ…』


H 『考え過ぎだよ。多分、空気読めないチャラ男みたいに、急にキスでも迫ったんじゃない?ハハハ。』


私 『そ、そうかなぁ。』


車とは言え、オープンカーは外にいる気分で余計に怖さが倍増する感じがする。


急に背中に寒い物が走る…


私 『何か、雰囲気が…そろそろ移動しよう』


H 『確かに…何だか…変な感じがするよな。よし、場所移動しよう。』


そう言うとHはエンジンを掛ける…


キュイン、キュイン、ギルルル…


私 『冗談は辞めてくれよ。』


Hを見ると顔が青ざめている。


H 『や、やばい。エンジン掛からない…』


私 『嘘だろ?頼む、頼むからー!』


キュイン、キュイン、キュイン、ブ、ブォオーン‼️


H 『良かった。掛かった。』


ヘッドライトをつけると、左側のライトがパンと乾いた音と共に消えた…

その瞬間、壊れていたはずのラジオがデジタル表示される。そして、周波数を探すかのように数字がグルグルと周り出す。


H 『な、何で…』


2人とも暫く固まっていた。


私 『は、早く、早くここから出よう。』


車がゆっくり動き出す。すると今度は勝手にラジカセが動き出す………

スピーカーからは、得体の知れない不気味な音が流れ出した。


私 『う、うわぁー!何だよ!これは!』


H は焦ってカセットテープの取り出しスイッチを押すとカセットテープの中身が剥き出しになって出てきた。


音は止まった。

不気味な音の正体は、カセットテープが逆回転していた音だった。

絶対にありえない現象だった。


H 『か、帰ろ….』


そう言うと猛スピードでVFを後にした。


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Lea lea(レア レア) 天野 みろく @miroku-amano2025

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