第7話 オタタナ

男と言うのは本当にお馬鹿な生き物だと思う事がある…


海洋実習もいよいよ終盤に来た。

ダイビングスタッフが全員で10名の内女子が1人。2人1組になり、交代でお客さんにレクチャーする本番さながらの訓練だ。


お客さん役はレクチャーする1組以外の8名だ。


最初の1組は紅一点のH子とイケメンのS男だ。


H子 『みなさ〜ん!こ、ん、に、ち、わ〜』


全員大爆だ!幼児番組さながらの挨拶だったからだ。(キモ)


S男 『こーれーかーら、体験ダイビングの説明すーるーよー!』


大爆笑だ!


私 『体操のお兄さんかよ!笑』


それは、まるで漫才だった。

私の発言で赤くなった2人は固まってしまった。

彼等なりに緊張しながらも、分かり易くと考えたんだろう。

がしかし…(キモ)


そんなこんなで、大人数に説明する言葉など皆んなで意見を出し合うが、私は(普通に話せば)と思っていた。

私にとっては、かなりくだらない時間だったが、くだらない事を真面目にやる事に意味があるかもしれない……と思っていた。

でも…(キモ)


一通りレクチャーの練習をし、その後は海洋実習と言う日々を1週間ほど続いた。


皆んなスムーズに接客出来るように形になって来ていた。


部長 『皆んな良く頑張っているな。シーズンまで後少しだ。 そこで、本番さながらの実践訓練に入りたいと思う。』


何と来週体験ダイビングが10組20名の予約が入っていると言う。

そこで、この中で優秀な物上位3名を講師役とし、残りの者はガイドダイバーとしてサポートする事になった。


当日……


上位3名に選ばれた人は、あの漫才コンビと、もう1人サーファー🏄のRだ。

Rは見た感じチャラチャラとしたチャラ男だ。

実際もチャラ男だ。悪い奴ではないのだが、気に入った女性が目の前にいると途端にチャラが倍増する。

本当にそれがキモい。からあげクン倍増の方がましだ!


そして、3人のレクチャーが始まった。

練習の甲斐あってスムーズに説明が進む。


体験ダイビングの場合、お客さん1人につきダイバー1人付かなければいけない。


計2回の潜水だ。


ダイビングの基本ルールで2人1組で潜らなければいけないバディシステムがある。

海の中では声を出す事出来ないので、万が一何かあった時の為だ。


とくに、体験ダイビングは初めての潜水なので、水に入った瞬間パニックになる人もいるので手を繋いで海に入る。


そして今回のお客さんは全員女性だった。

関東から来た人、関西から来た人達と皆バラバラだ。 年齢も10代から30代と幅広い。


そして、チャラ増のチャラが加速して行くのがわかる。(キモ)


皆んなで潜水開始。陸上の音が無くなり、自分の呼吸音と草食系の魚が海藻を突く音が聞こえる。

そんな幻想的な、中お客さんと手を繋ぐ。

ある意味吊り橋効果でお客さんがダイバーを好きになる事はよくある事だった。


チャラのお客さんも例外では無い。


一回目の潜水が約1時間ほどで無事皆んな陸に上がった。


H子 『皆さんお疲れ様でした!ダイビング機材外しますのでその場で待機して下さい。』


H子 『バディのスタッフは機材を外してあげて下さい。』


それぞれお客さんの機材を外す。ウエイト、タンクも含め約20kgある装備を外して行く。

お客さんも大興奮ではしゃぎだす。


凄い〜綺麗だった! お魚に餌あげた〜!

沖縄最高です!


などなど。嬉しい限りだ。


ふと、チャラを見る。少し離れた所でイチャ付いている。


私 『あいつ…お客さんに手を出したらやばい事になるな。』


他のメンバーも気づいている。


男は時として、気のある女性に対して幼児言葉を使う奴がおるが…


チャラ男 『ほら、見て、見て。』


と、珊瑚の水溜りに指を指している。


スタッフ全員が、お客さんに粗相しないか注目している。


お客さん 『何?何❤️』


チャラ男 『ほら、ほら〜!オタタナ!オタタナがいるよ!可愛いね❤️』


それを聞いたお客さんは吊り橋効果の洗脳が解けてしまっていた。


お客さん 『……そ、そうね。』


その場に居たスタッフ全員思ったに違いない。


キモ!……。

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