第6話 チョーボンビー

Hのアパートに着くと愕然とした。

何にも、何にも無いのである。


あるのはフライパン一つに、一口コンロ、ポップコーンの種…


家具に至っては皆無である。


私 『いくらなんでも…どうやって生活してるの?布団も無いし…』


H 『言ったろ?俺は日本中旅してきたんだよ。しかも野宿でな。4畳半の部屋見てみろ』


部屋を開けるとテントが設置されていた。


H 『寝袋もあるし、雨風凌げるだけ快適さ〜』


と言った。生活レベルを下げた生活をしていると屋根があるだけ有難いと思うとの事。

少し考えさせられた…


当たり前のように冷蔵庫やエアコン、家電家具に囲まれベッドで寝る生活をしている私はもっと、もっと感謝の気持ちを持たなければいけないと…


究極のグルメは断食だと誰かが言っていた。

まさにその通りだと思う。

しかし、ワイルドな奴である。


私 『炊飯器も無いし、飯はどうしてんの?』


H 『これが俺の主食さ!』


と言うと、ポップコーンの種を見せた。

1kg約900円で1月暮らせるんだとか…

主食の固定概念を崩された瞬間である。


とうもろこしを主食としている国は沢山あるが、粉にしてトルティーヤ、タコス、ウガリに加工する。

メキシコ🇲🇽や、タンザニア🇹🇿の人々もさすがにポップコーン🌽は…主食にしないと思う。


私 『今度さ、海に潜って魚捕りに行う。』


H 『いいね!でもどうした?急に?』


私 『お前の食料確保するんだよ。ハハハ』


何か食べ物でも買ってやりたかったが、俺も金欠。そこで、魚と貝を捕る事を思いついたのだ。


この話しを会社の仲間に話すと、みんな次々に要らないものをHの家に持って行った。布団や、枕、テーブルに、乾麺などなど。エロ本を持ってくる奴もいた。

みんな良い奴らだ!


これを機にHのアパートが溜まり場になって行った。


本人が留守でも常に誰かがいる状態だった。本人も面倒くさいと、鍵は開けっ放しだった。


それでも彼にとってみれば誰かしら食べ物持ってくるし、何よりも寂しく無いと楽しんでいた。


Hのボンビー生活はまだまだ続きそうだ。

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