会社で首を吊った社員の葬儀に赴いた男。
社員の妻は、二度と目覚めない夫に思いを馳せながら、昔話をする。
夫の「目」が好きだったと語る彼女は、徐々に本性を明らかにし……
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日本人は他国に比べてもサングラスに強い恐怖を覚えるらしい。
目で感情を伝え、読み取る文化があり、サングラスで相手の目が見えなくなることが関係している。
ちなみに欧米ではマスクを嫌悪する。これは口元から表情を読み取るからなのだとされる。
この作品は「目」がキーワードになっている。
荒天の通夜という状況だけで嫌な予感しかしないのだが、落ち着いた妻の口調から放たれる衝撃の真実が、ぞわりと身体を震わせる。
ただ、この話の真に恐ろしい部分とは、登場人物だけでなく、読者ですらも惹き込みかねない夫の「目」(の描写)なのだ。
人は人の外見や表情を見て「何をどれだけやっていいか」を判断する。彼にはそれを狂わせる、特異な能力があったのではないか。
私には彼に対して「そういうこと」をしないでいられる確証が持てないのだ。