私は「私」で、「ワタシ」ではない。

@yuka575

第1話 はじまり

 物心ついたころ、はじめて感じたのは母から感じる違和感と柔らかな温かみだった。


 母は、私に対して優しく、ただし、この優しさは幼い私にとってはとても重たいものだった。なぜだろうか、私の母は私の発する言葉全てに同意した。


 それは、なにもわかってくれていないのと同じだろうと、幼い私も薄々感づいていたが、全てに同意してくれる女神様のような母という存在を信じる、そんな自分に甘んじるほうが楽だった。


 そうして、いつまでも、私に同意しかしない母に育てられ、私は自分自身を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私は「私」で、「ワタシ」ではない。 @yuka575

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る