回想回廊(後編)
「どこの高校?」
僕は黙っていられない性分なのかもしれない。きっと人とコミュニケーションをとらないと落ち着いていられないのだろう。僕と彼女、二人しかいない。たぶん、そういう状況であるのも多少はあるだろうが。
とはいえいきなり高校を聞くのもなかなかの変人だな、と今になり思い返して思っている。まだ未成年とはいえ、高校生とは違う服装だ。「町工場の品質管理してるんです」と言いながらコーヒーを飲んでいたら、割とみんなすんなり認識してくれそうなくらいには、風貌が年相応ではなかったと自覚している。ただまあ、老けていたというよりかは、貫禄のほうではないのかなとは思う。顔は若々しさがあったはずだから。そうでありたい。
ともかく、なんとか話をしようという、かなり恥ずかしい努力をしていた。
相手の高校生もさすがに不審な目で見てくるものの、
「そこの
そう答えてくれた。
海商というのは海原商業高校の略だ。地元の人にしか通じないけど、割とみんなすぐに理解してくれる。まあ、そこまで読み方も難しいわけではないからだと思う。
「そうなんだー、何年生なの?俺はそこの高専に通ってる2年生だよ。」
女の子に何か聞くときは自らを明かしてから、と何かの本に書いてあったような気もするのでそれに習いやってみた。まあ、やらないよりは印象がいいだろう。
「...同じ。2年生」
少々びっくり。
かなり大人びた風貌の子なので、1つ上の3年生だと予想していたのだが、まさかのハズレ。春先の桜花賞で予想的中させたので、今年はうんと予想に強い一年だと思っていたのだが、そうもいかなかった。
「へー!じゃあ同い年だねー!」
妙にテンションを上げているような気もするが、なんとか誤魔化そうとした末なのだろう、そう思うと感動できる。
その後もたわいのない話をしつつ、荷物を肩代わりしていた。女子高生の家を知るというのは重罪なのでは、と思ったがそれを今更聞いたところで...という気持ちが出てきたので何も問わないで女子高生の行く道を辿るだけであった。まあ、内心では「同い年なんだからどうってことないだろ」という怠慢もあったので、正直自分が正真正銘のジェントルマンだとは言えない。
「...ここでいい。ありがとう」
「わかった。おつかれさま。」
そう彼女に僕が肩代わりしていた荷物を引き渡し、その場を去ろうと後ろを向いた。
「まって。」
そう声をかけられたので、もう一度振り向いた。これで1周。
「連絡先、交換して」
そう言われた。
まあ今俺が荷物持っていたけど、後々なにかされているかも!とか思った時の保険なんだろう。その程度に考えて、軽く二つ返事でラインのQRコードを交換した。
「ありがとう。」
そう言って、彼女は僕から視線をそらした。
人助けした後はなんだか気分がよくて、徳を積んだような気がしていた。普段部活の顧問に徳を積めとうるさく言われているので、今目の前に顧問がいたらどや顔でふんぞり返ってやりたい。そう思いながら、途中のコンビニでガリガリ君を買い、齧っていた。
君がいて、僕がいて。そして、雪が降って。 れもねぃど @remoneed_blue
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