一泊二日、思い出の隠れ里【短歌・二十首連作部門】

旅のお供にカレー麺

第1話

引き出しを 開ければそこが 入口だ 僕らはそれを 教えられてる


成長は 小さな悪事の 積み重ね スタンプカードが 未完成の夏


里山は 色んな歌が 響くから 僕もつられて ピーヒョロと鳴く


囀りに おはようと返す 藪の奥 未だに知らない 君の名前も


あの頃は 鼻をつまんだ 匂いでも 草木は知ってる 僕の思い出


ちょっとだけね ピースに口づけ 深呼吸 仰いだ空に 答えはなくて


お湯注ぎ 待てずに啜った ブタメンで 被る火傷は 幸せの証


シュワシュワの ラムネに詰まった 初恋が 弾けて飛んで 染みて離れない


行ってみよう 夕焼け小焼けの 向こう側 月夜の方が 心地いいから


カブトムシ 甘い匂いに 寄り付くし 手でもひっかけば 人が寄るかも


やけ酒が 埋める心の 入れ物に こっそり入れる おやつカルパス


居酒屋に 赤子を連れれば 相殺で 酒が飲めない 歳になれるかな


飲み物で 諭吉が消える おかしさに 気づかない方が 幸せかもね


宵に酔い 酒に酔えども 消えぬ恋 そのしぶとさは まるで鯉のよう


ゲコゲコと 修学旅行じゃ あるまいし 誰が好きとか 可愛いだとか


思い出は 歳をとるほど 鮮やかに 離れるたびに また筆をとる


前習え やめておきなよ 過去の僕は 先頭だけど 一応言っとく


畦道を 駆けた自分に 言の葉を 手向けてじっと 朝焼けを待つ


目が覚めて あの頃の僕に 戻れたら サボらず行くから ラジオ体操


朝ごはん コーヒーに映る 髭面の 名前を知らずに 生きていきたい


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