七限目 ダンジョン攻略

 行方不明事件が起きてから一か月。事態はあまり進まず、犯行に闇魔法が使われたことが分かったことぐらいだ。


[闇魔法・かつて魔王が好んで使用していた魔法として忌み嫌われている]


 授業の進歩のほうは着々と進んでおり、俺が使える魔法も数を増やしてきているが、それと同時に弱点も浮かんできた。


 それは初見で模倣できない魔法が飛んで来た時。


 それをカバーするため暇な時間に武術を得意としているリネアに色々教わっているのだが、いかんせん俺の体が模倣した動きについていけず、地道にスキルを使わずに習得する羽目になっている。


「動きがおくれてる。」

「足元に注意が言ってない」

「動きにセンスを感じない」


 等々、ぼろくそに言われてしまうほどだ。しかしこの問題を軽視することはできない。

 この世界に来てからまだ大きなけがはしていないが、今後そのリスクにさらされることもあるだろう。


 備えあれば憂いなし。地道にやっていこう。


「今日はこれで終わり、じゃあさっさと教室行こ」


「いつも悪いな、俺の特訓に付き合ってもらって」


「いや私もまだ半人前だから、誰かに教えるのも初めての経験で勉強になってるしお互い様」


 リネアはそう言ってニコリとはにかむように笑った。


 最近リネアがよく笑顔を見せてくれる気がする。知り合ってから結構な時間が経っているから当たり前と言われればそうなのだが、初対面の頃に比べれば大違いだ。

「どうしたの?じっと見てきて」


「いや、なんでもない」


 その後もたわいない会話をしながら教室へ向かった。




______________________________________



「今日は皆さんに班を作っていただき、この学園の地下にあるダンジョンに行ってもらいます」


 リノ先生がついにこの時が来ましたという雰囲気を出しながら言う。


(解析、ダンジョンっていうと魔物が出てくるあれか?)


[はい。ダンジョンはこの世界の各地に点在しており、洞窟から遺跡のような形まで様々な種類が存在しています]


 なるほど、俺が想像しているものと大差は無いようだ。


 俺はクロ、セシア、リネアのいつものメンツで班を組むことになった。


 ダンジョンへの道を先導するリノ先生の後をついていくと大きな洞窟の入り口まで来た。


 この学園何でもありかよ......室内の中に洞窟って、洞窟からでた湿った空気と埃っぽい匂いがこちらまで届く。


「今回のルールはシンプルでこのダンジョンに入り、奥にいるダンジョンボスを倒してきてもらいます」


 それを聞いた男子生徒三人組のグループが俺たち一番乗りだぜーと言いながら走っていく。


「あ、まだ説明が......まあいいでしょう。もし時間内に帰ってこなければ先生が救出に行きますので心配なく」


 それからいくつかの説明を受け、武器がそれぞれ支給されスタートになったが、間違いなくあの男子生徒たちは迷って救出されるだろう。


「じゃあ早速いこー」


 クロを先頭に洞窟に入る。中は思ったより広く、支給された剣も思う存分振れそうだ。しばらく進んでいくとクロが立ち止まって正面を指をさす。


 指が刺された方向を見るとモンスターがいた。念のため解析を使ってみる。


[ゴブリン・非常に弱く初心者でも十分に対処可能]


 特に心配もしなくてよさそうだ。


 3,2,1の合図でクロとセシアが魔法を打ちひるんだゴブリンを俺とリネア切り付ける。


 するとゴブリンは灰になり、虹色に輝く石がコロンと落ちた。


 こうして俺たちの初モンスター戦はあっさりと幕が落ちた。


 ゴブリンが落とした石を拾う、これは魔石といって冒険者ギルドで換金できるらしい。


 初心者用のダンジョンということもあってか俺たちは特に苦労することもなく次々とモンスターを倒していき、ボス部屋の前まで来た。


 慎重に扉を開けると普通のゴブリンとは少し違う個体がいた。


[ハイゴブリン・ゴブリンの上位種で体長が160センチほどあり、魔石で出来たナイフを持っている]


  今までと同じように攻撃を仕掛けるが流石はダンジョンボス、攻撃を耐えてこちらにナイフを振ってくる。


 それをサイドステップで避け攻撃を入れる。それを何回か繰り返しているとハイゴブリンが咆哮をした。それを聞いた俺は体が重くなりナイフに当たりそうになる。


 しかしセシアの障壁という補助魔法でそのナイフがはじかれ、体勢を崩したところに集中攻撃をしてハイゴブリンは魔石を落とし消滅した。


「あ、危なかった~」


 集中の糸が切れ地面に座り込む、そこにリネアたちが駆け寄ってきた。


「大丈夫!?ケガしてない!?」


 クロがナイフが当たりそうになったところを何度も確認する。


「大丈夫だって......あとセシア、補助助かったありがと」


「ふふ、大丈夫ですよ。それと一応ここを出たら見せてくださいね、回復魔法をかけるので」


 心配しすぎだと思うけどなー、何だか気恥ずかしくなってリネアのほうを見ると......


「最後、いきなりだったとはいえ油断しすぎ」


 手厳しい言葉をおくられてしまった。

 しかし心配はしてくれているのだろういつもより距離が近い。


 まあ、怪しい場面はあったが......何はともあれ初ダンジョン制覇だ!

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異世界学園に入学したが「青春」なんてものはないらしい~特殊スキル・解析と模倣で平穏な生活を過ごしたい!~ 詠影えい @nekotomikan

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