私は貴方を許さない

第1話

私はあなたを許さない

私はあなたを許さない

私はあなたを許さない

これはわたしの母と子の愛憎の物語。

ある日の朝のことだった。普段会話もしなかった母親が妙に優しく、違和感を覚えたことを覚えている。これは何かあるだろう、予感はしていたが、普段と打って変わって優しく接してくれた母に一抹の希望を感じたのだ。

しかし、その希望は一瞬にして崩れ去った。

私は精神病院に連れていかれ、診察室で医師と母と私の三人で診察が始まった。

案の定、精神状態が悪く情緒の激しかった母は私の日々の様子の虚実を語った。

あろうことか、‘‘家で包丁を振り回して怖いのです‘‘などど、医師に言いだしたのだ。

一方、医師は私の話に聞く耳を持たず、母の話だけを鵜吞みにした。

「貴方は家に帰ると何をしでかすかわからない。強制入院だ。」

一切わたしの気持ちを汲み取ってくれない医師の冷徹な言葉が冷たい診察室に響き渡った。

普段から自己の気持ちを抑圧し生きてきたわたしはあまりの仕打ちに耐えられず、最後の希望にすがり母に言った。

「あなたの気持ちが楽になるなら入院しましょう。しかし、荷物だけは自分で用意させてほしい、それすらさせてくれないのなら貴方を信頼することも、母として慕うことも金輪際ないでしょう。」

母は冷たく言い放つ。

それでもいいと────

わたしはその日、母を母と認識するのをやめた。