ネギ

おいちゃん

第1話

呑むと、飲むって違くない?。俺はこの「呑む」ってのが大嫌い。やってることはおんなじなんだけど、まず満たしたいものの目的点が違う。呑むって。その行為をしたい。その行為をしたい者が集まってその行為をする。「呑んでる俺!」「呑んでる私!」「呑んでるウィーアー」でしょ?。「飲む」ってのは生理現象なわけでそれが水か酒かの違いで。。。それをどれほど渇望するか。簡単に言えば「飲む」の終着駅はトリップ。つまり酔っ払う事。如何にお空を真っ青から真っ黒にするか。如何に中古の腕時計の時針を一周させるか。そのごく普通の当たり前が、酒の力を借りると半ば自分のチカラだと錯覚するようになる。立派な「飲み」のアル中だ。「呑む」連中は道中またはその後のアレコレやらが目的なわけで。かなり尖った考え方だけど、、、たぶんわかる人いるでしょ。フィーリング的なニュアンス的な。



さて、こんなのを書くようになればしっかり気が触れてる訳で、酒と胃薬、それに安定剤、咳止めシロップもって、まごまご鳴く猫を無理に連れてって懐かしい母校の運動場の駐車場へピクニックへ行きましょう。全くネガティブじゃない。校庭の土の色ってあんなにキレイだったっけ。通学路の街灯がLEDになってるってだけで、ちっぽけなジェラシーに苛まれる。ああ、俺、20年前にここをハンドル曲がったチャリンコで立ち漕ぎしてたんだなぁって。これが俗に言う感傷に浸るというやつか。でもその時の自分を羨ましく思わないし、今の自分を過去の自分に責めれるとも思わない。非生産的に過ぎてくこの1分1秒は今の俺が作り出してるから。


つまらない始まり。。。とは生みの親がいる以上、口が裂けても言うつもりはないけど。つまらない終わりはきっと予想に違わずしっかり自分が作り出すだろう。こんな予想、馬券取るより簡単で。


根本的にネガティブ人格だから口でいくら言ってもこういう方向に向かっていく。申し訳ない。ではここらで一つ明るい小噺でも。例の如く俺は公園の駐車場で一人。ラリってた。咳止めシロップと酒、それに安定剤で。それらを飲んだ以降記憶が全く無い。「コンコン」「コンコン」。。。「ドンドンドンドン!」


目が覚めた。


立っていたのは紛れもなくやんごとなき桜の紋章をつけた彼らだ。かわいい女子ポリスもいた。パッと見5~6人にパトカー3台とVIP待遇。「お話したいんでちょっと降りて貰っていいですかー?」


ここで立てこもる。。。。訳ない。


呂律の回ってない口で「はい、なんれすか?」


車から出る


「あなた、どこかに車ぶつけたでしょ?」

「いや、知りません」「通報あったんだよー?車番も1○7○の軽って」「知らねえって」「縁石にぶつけたんでしょう?」「縁石が通報したのか?おら」瞬時にハートが燃えたぎる。


マジで記憶にない。。。それもそうだ。ここに来るまで2~30分の間ブロン3本。しっかり効いている。


もしかしたらやったかも。いや待てよ、やったらわかるべ、さすがに。いやいや、たぶんやってんなこの馬鹿は。


自問自答


「仮にね、縁石にぶつけてても大きな破損とか人身事故がなければ我々何も出来ないですから、変に勘違いしないでね。ただ分かる事を話してほしいの」


「でも本当になにも分かんないから。記憶にないんだってば。」


そこで戦慄が走る。女子ポリスお手柄。

「あーにゃんこちゃんだー!」


ネギだ。ネギの上にいるそいつを言っている。


たぶん100キロくらいのネギがある。後部座席に。ポピュラーな長ネギだ。


「は?」意識しだした途端ネギ臭がやばい。


「家でネギやってるんですか?」


知らない。全く記憶にない。ちょっと待って。本当に知らない。あいにくアパート暮らしだ


異常な量のネギの上で飼い猫のゆきちゃんが箱座りをキメている。


ご近所のおすそ分けとか、親戚がネギ農家なんでとか咄嗟に言えればだったけどこの状況でそんな機転がきくわけもない。


「知らないこんなネギ。知らないよ。なにこれ」

応援のパトカーがワラワラくる。ネキでだ。ネギで。薬で舌が回ってない俺なんかより、どうもネギの出処が気になるようだ。

どこから盗んできたのか、どこ畑からこの量引っこ抜いてきたのか?一人でやったのか?直売所か?長ネギでこんな思いするなんて。


そこで脳みそが反転してる自分は、これは警察が俺をパクるために車内にネギを設置したのだろうと神の声を聞いた。女子ポリスに


「てめぇやったろこら」と「オメェが仕組んだんだろ」と、その場はとりあえず出処不明なネギと俺とキジトラ猫を残して喧騒は収まった。


後日談ではあるが、そのネギはどうも前日の夜中にお隣のお百姓さんの軽トラの荷台から盗んできたものらしい。被害者の方から、ガッツリその姿も目撃されてるのだが食うに困ってると勘違いされて通報もせず傍観しててくれたらしい。せっせと運んでいたと。 





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