第3話 (上) 会話

うーんとえっと、なんか変だな。意識はあるのにふわふわしてる。えっと、どうしたんだっけ?そうだ。僕が人形のお札を破ったら、人形がまばゆい光に包まれてその光の中から小さな女の子が出てきたんだった。それで‥‥どうしたんだっけ。意識が無くなって‥‥‥あれ?意識が無くなってるのに、意識があるって、矛盾してるんじゃあ‥‥まぁこの際だから、この件は置いといて、あの女の子は誰なんだ?人形から出てきたのもおかしい。普通はこんなこと起こらないし。

僕、疲れてるのかなぁ?小学校生活が終わって、その疲れがまだ残っているのかも。

うん、そうだ。そうに違いない。僕は夢を見ていたんだ。よし、目をまそう。

きっとこれは目がめる前段階みたいなものなんだ。ほら地平線ちへいせん彼方かなたには光が出てきてる。きっとこの光に完全に包まれれば、起きられるに違いない。よし、目をまそう。


――――――――――――――――――――――

ボー

「おーい」

現実だった。

夢じゃなかった。意識を失ってただけだった。

夢であれば、どれだけ良かったか‥‥‥

確かに小さな女の子と話せる機会というのは中学生になる一人っ子の僕にはめずらしいし、

一部の人からうらやましがられるかもしれない。

でも、人形から出てきた光に包まれて出てきた人というだけで、もうわけないが僕には不審人物ヤバいヤツなんだ。

「じゃあ、僕はこれで‥‥‥‥」

「待つのじゃ!」

突然、金縛かなしばりにあったかのように動けなくなった。逃げようとしたら、動けなくなった。もう完全に不審人物ヤバいヤツなんだよ!ってかじゃ!っていう人初めてみたなぁ。

どうすればいい‥‥‥あっ、口は動かせるみたいだ。弁明するしかない‥‥

「あの‥‥僕は別に見返りなんて求めてなくて、ただ家に帰りたいだけで‥‥」

とりあえず金縛かなしばりの件には触れず、帰るための口実を作って、走って帰る!

「そうじゃない!」

え゙っ゙

「ありがとう、わしを助けてくれて」

なぁんだぁ感謝の言葉かぁ‥‥って何だって?助けてくれてありがとう?あの人形に閉じ込められてたの!?そんなことあり得るのか?いや、実際見たしなぁ。

「わしは‥‥もういいや、わたしは神様よ!」

いや、じゃって言ってたの、自分をいつわってただけかい!っていうか神様?嘘でしょ?

「いまうそって思ったでしょ?本当なんだから!」心読まれてる‥‥

「じゃあ‥‥えいっ!」

すると光が集まってきて僕が作った鉤縄かぎなわが出てきたのだ。

「ええええええええええっ!!!!????」

「すごいでしょ!!」

僕はびっくり仰天。

少女は自慢げだ。

僕の手元にはまだ鉤縄かぎなわがある。

気づかれずに鉤縄かぎなわを盗ったというわけでもないらしい。

それと全く同じものをこんな短期間で作れる訳が無いし‥‥‥

そもそも光が集まって鉤縄かぎなわを形作っていくのを見てしまった。こんなの信じない訳が無い。

「信じてくれた?」

僕はうなずくしかなかった。

僕は気になっていたことを聞いてみた。

「なんで人形の中に封印されてたんですか?」

「それはね‥‥‥」

ゴクリ‥‥

「いたずらしてたら封印されたの!」

‥‥‥しょうもねぇ‥‥‥

「ちなみにどんないたずらを?」

その後彼女から発せられた言葉にぼくはおどろくしかなかった。

「とある悪いものを取り除いてたの!」

え?それって良いことなんじゃ?

「聞こえてるよ!それは良いことなんじゃないかって?」

思えば、ここが分かれ目だったのだろう。

それが良いことだって僕は思ったから。

こんなことに巻き込まれてしまった。

それでも、僕は良いと思ってるけどね。

あれ?なんか変な僕の声に似た声が頭の中で鳴ってるぞ?まぁいっか。

彼女はなぜか真剣になり、言った。

「こっちでは悪いものだった。でもね、『あっち』では良いものだったから」

「『こっち』ってのは神様なんだろうけど、『あっち』?」

「『あっち』っていうのは『邪鬼じゃき』っていう集団。」

『邪鬼』。

何だそりゃ、うさんくさそう。

「うさんくさそうって誰もが思うけど、その力はとても強くて、神様の私達でも太刀打ち出来なかった。わたしは我が身を犠牲にしてソイツらを封印した。」

何だそりゃ、話が壮大すぎる、さらっと神様は他にもいるって言ってないか?いやまあ普通なのかもしれないけど。

「とりあえず疑問に思うかもしれないけど、聞いて。」

はい。

「でも、丁度1週間前、ソイツらが復活した。」

え゙っ。

「きっと数百年のうちに封印が途切れかけてたんだと思う。」

へぇー

ちょっと質問することにした。

「あのさ、このまま『邪鬼』がいたらどうなるの?」

彼女は悲しそうな顔をした。

「6年。」

へ?

「6年で世界が滅んじゃう。」

「は?嘘でしょ?」

「厳密に言うと、抑えられれば10年は大丈夫なはず。」

「一応、親玉を倒せば、『邪鬼』全体が消滅するらしいけど‥‥無理だと思う。」

「だから、封印しなきゃいけなかった。だから、変なニオイを出して、君に眠りから覚まさせてもらったの。アイツらの封印が解けたってことは眠りから覚められるってことだから。一応、色々言っちゃったけど、言わないでね?」

そして蔵から出ようとする。

その顔は悲しそうな顔のまま。

僕は思わず彼女が蔵から出ようとして鍵を取り出そうとしたその手を静止した。

「なんで止めるの?色々話はしたけど、同情なんてしてないで早くその手を離して!離さないと吹き飛ばすよ!」

でも、吹き飛ばすと言いつつ吹き飛ばさないのは優しさによるものだと思った。

そして僕は言った。

「悲しそうだったから」

「分かってるわよ、そんなの。でも自分が犠牲になることで世界が救われるのなら、そんなの万々歳ばんばんざいよ」

「嘘だ」

「嘘じゃない」

「じゃあ何でそんな嫌そうな顔してるのさ」

「………」

「もし万々歳ばんばんざいなら少なくとも今人に向かってそんな顔しない」

「…………………」

「感情が表に出てる」

僕は‥言った。

「嫌なんでしょ?」

「君といたのはたった十分くらいしかないけど分かった」

「君は自分が犠牲になるのが嫌なんだ」

沈黙が蔵を包む。

何分経っただろう。

「そ‥‥‥そうよ‥‥‥わたしは自分が犠牲になるのが怖いし嫌」

「一回犠牲になったからこそね」

「でも封印するしかないじゃない」

「わたしを犠牲にして」

涙を流し、嗚咽おえつを漏らしながら話す彼女。

「僕にいい考えがある」

その言葉でハッとなった彼女。

「いや、それは無理よ」

「いや、分からないよ」

「その、『邪鬼』の親玉を倒す」

「無理よ」

「やってみないとわからない」

「じゃあこうしよう」

「もし僕が6年以内に親玉を倒せなかったら、君は自分を犠牲にして封印してくれ、それまではだめだ」

「は?どうやってあなたが倒すのよ」

「なんとかする」

「はぁ、分かったわあなたを信じてやってみる」

「でも、『邪鬼』への対抗手段がないのは厳しいでしょ?」

「うぐっ‥‥」

「だからこうしましょう。わたしの力をあなたに貸してあげる」

「へ?」

「『邪鬼』は『邪気』っていう力を使ってくる。わたしが取り除いていたのはその『邪気』ね」

「へぇ」

「『邪鬼』はその力で動物達や妖達みたいな妖怪、ましてや人間達も操ってしまう。」

「へ?さらっと妖怪がいるって言ってない?」

「いるわよ」

「まぁ神がいるなら妖怪もいるか」

「適応力がすごいわね‥‥‥」

「だから、わたしの神の力みたいな強大な力がないと対抗出来なかった」

「妖怪達の力も借りたのにアイツらの力は強大すぎて負けた」

「……………」

「もう一度聞くけど、わたしの力は強大なの。それを受け止められる?」

「必要なのは、覚悟。」

僕はうなずいた。けど、『邪鬼』達を倒せるかはわからない。でも、僕は出来るという自信を持って、うなずいた。

「じゃあ、いくわよ」

彼女は僕の手を握る。

すると、力が流れ込んでくるのを感じた。

僕は思わず、目を閉じる。

ぐっ‥‥‥やっ‥‥焼けるように痛い。

でも、これでみんなを守れるようになるなら、そして、悲しんでいる彼女の未来が明るくなるなら

僕はやってやる!!

やがて、痛みが収まった。

目を開けてみると、彼女がにぎっていた左手に紋章もんしょうがあった。

「せっ‥成功よっ!」

「はぁ‥疲れたぁ」

力を貸し与えた彼女は疲れていそうだった。

僕は彼女の息切れが収まるまで待った。

そして、彼女は自分の力について話始めた。

「わたしの力は『想像』の力。わたしが思ったこと、考えたことが現実になって形作っていくの」

「例えば‥‥最初に使った金縛り!あれは、見えないくさりが相手を拘束こうそくするイメージをしたの。あと出したアレはアレをイメージしただけね。アレ、何なの?」

鉤縄かぎなわを知らないのか‥‥‥

鉤縄かぎなわですよ、か・ぎ・な・わ。知らないの?」

「知ってるわよ。そんなの、でもあんなぶかっこうなのが鉤縄かぎなわなんて思わないもの」

なっ‥‥‥何だと!あんなのがだと?ムッキー!

「わっ、怒っているのが見え見えね。でも、使えてたじゃない。いくらぶかっこうでも使えればいいのよ、使えれば。」

ひとしきりイライラしたところでオレンジ色の空が見えた。

「あっ、もう帰らなくちゃ。じゃあね!」

もうこんな時間になっていた。

今日は濃い1日だった。

神様に会ったり、世界を守るために戦うことを決めたり。でも、今日のところは帰ろう。まだ6年もあるんだ。なんとかなる。

「何言ってんのよ、わたしも行くわ。」

ふえっ?聞き間違いかな?

「聞き間違いじゃないわよ」

じゃあ何でそんな嘘を?

「嘘じゃないって言ってるじゃない」

「わたしの力を貸してあげてるんだから別に良くない?」

「良くない。」

「まぁ、作成会議とかが楽にできるかなと思っただけだし、勝手に着いてくけどね。」

いやだめでしょ。

家に入って泊まっていったりでもしたら僕の人生は終わってしまう。

「大丈夫よ、わたしはあなた以外には見えないようになってるんだから」

へ?そうなの?

「封印を解いた人物や心を許した人物には見えるの、だから大丈夫。」

そっ、そうなんだぁ‥‥じゃあ良いのかな?

この選択で数年後の僕は後悔することになる‥‥‥

「じゃあ、これからよろしく。えっと、そういえば名前!」

「そうだったわね、わたしは想華。よろしくね」

「ぼっ‥僕の名前は刀無斗真。斗真って呼んでくれると嬉しい。よろしくね」

「よろしく(握手あくしゅ)」

「じゃあ家に行こうか。」

僕達は家に行った。


――――――――――――――――――――――

どうも

叩兵です。

2日間も空けてしまい、申し訳ありません。

その代わり、約4600文字もの量を書きました。

この話では斗真君が神様である想華ちゃんに力を貸してもらいました。想華ちゃんはヒロイン枠です。

この話でも言っていましたが、6年後に世界が滅びます。この作品はその6年間のあいだに斗真君が様々なことに巻き込まれながらも『邪鬼』の親玉を倒すというストーリーになる予定です。多少話がズレても、最終的なゴールはこの『邪鬼』の親玉を倒すという目的に辿たどり着きます。

最高で6年を書くわけですからクソ長い物語になると思います。大変だとは思いますが、頑張ります!出来れば、応援してくれると嬉しいです!

第3話(下) 戦闘 は現在執筆中です。

頑張ります!さようなら!

(3話(上下)というのは2話公開当初、3話と4話にする予定のものだったものを同時公開しようと考えついたときに「同時公開するなら(上下)ってしたらカッコいいんじゃないか」という浅はかな考えから思いつきました。結局、 第3話(上)である今回は文章量が1、2話と比べてえげつないほど増えてしまったので同時公開するのもボツにしました‥‥‥)


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想像が現実になる能力を手に入れた陰キャの僕 その力で人知れず世界を守っているけどバレかけてます! 叩兵 @tatakihei47172454

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