地獄の沙汰は機械仕掛けで
退屈のあまったアスタロト
そこでわれわれはしばらく、地獄の情景を楽しみながら、とぼとぼと歩きまわっていたのです。
ステュクス
「これ、グラシャラボラス。そこでいったい、何をしているのかね?」
いぶかった猊下はお声をかけられました。
「おお、猊下、ちょうどようございました。こちらはわたくしめの、新しい作品にございます」
猊下がたずねますと、博士は
「またいつものおかしな発明かね?」
博士はそれを聞くと、ギョロっと目を丸くされました。
「おかしなとは心外ですな、猊下。わたくしめの作る
博士のするお話があまりにも長いうえに、
「猊下、猊下!」
「むにゃ?」
「眠りにつくなら
「グラシャラボラス、君の話は長すぎる。そして退屈だ、実に。そのよく回る舌をいますぐに止めないと、君の口ごと
「ひっ……」
猊下がギラリとにらみをきかせられたので、博士はお顔を青くして、黙ってしまわれました。
「ところでこれは、何をするための
猊下がそんなことをおっしゃったので、博士はまた調子をよくされたようです。
「さすがは猊下、お目が高い! この
「錬金魔術だと? はて、それはアマイモンの使う技ではなかったのかね?」
「はへえ、そのとおりでございます。さすがは猊下。まさにまさしく、この
博士はトコトコと
「ふん、アマイモンめ、さすがは七つの
猊下はあごに指を当てられました。
「アマイモン閣下はピカピカと光るものが大好物ですからねえ。
サルガタナス伯爵は猊下によりそうようにおっしゃいました。
「ふん、アマイモンめ、御殿だなどとほざきおって。やつのことだ、ほかにもっと、おそろしいたくらみがあるに違いないのだ。どれ、散歩のついでだ、ちょっとやつのところに行って、問いただしてやろうではないか」
猊下は
「猊下っ、閣下のところに行かれるのですか!? 触らぬ神、いや悪魔に
伯爵は必死で猊下を止めていらっしゃいます。
「サルガタナス、わたしは誰だ? 地獄帝国の教皇、大魔王アスタロトであるぞ?」
猊下は顔を少しだけひるがえして、そうほほえまれたのです。
「猊下、僕もおともいたします」
「さすがだね、ダミエル。サルガタナスとは肝が違う。よし、いっしょにおいで」
「はっ」
サルガタナス伯爵がうしろからあわててついてまいります。
「猊下~、ダミエル~、お待ちくださ~い!
「ふふっ、楽しいね、ダミエル?」
「は、猊下。おっしゃるとおりでございます」
僕たちはいっしょに
ステュクス川の
きっといまは、昼下がりなのでしょう。
地獄のゆりかご 朽木桜斎 @kuchiki-ohsai
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