第28話 2階の見学① 引き継がれるもの

 ホイルトツェリオ魔法学校の2階の中央の階段を登りきると、ふいに、教頭が振り返りえり片手をあげる。


 そうして彼は、呪文を詠唱えいしょうをする。


 いや、したと思ったのだが、何を言っているのか僕にはなぜか聞き取れない。


 居ないはずの、鳥の声やクジラの鳴き声の様な様々な音が、僕が聞き取るのを邪魔をする。


 けれど魔法は僕らの前に現れ、今、来た階段を封鎖したのだ。まるで今まで歩いてきた道などなかったかのように。

 

「ここを閉じる事によって、戦いのさなか敵の駆け上がる道は、右端と左端の階段のみになります。その大きく隔たれた2つの道へ、敵を誘導することにより、敵同士の連絡と攻撃力を少しでも分断し、疲弊ひへいさせ事こそ、この魔法学校に課せられた役目と考えています。我々の生徒は、別に勝つ必要はありません。時間さえ稼げば、屋上から逃げてしまえばいい。必要なら、この魔法学校を敵の墓標に変えてしまっても、問題ないと考えております」


 魔物も身近な戦争も知らず育った自分にまるで、ピンとくるものないお話……で、はないか。僕は今、少なくとも冒険者を目指して進んでいるのだから。


「しかしなにぶん歴史ある学校ですので、むざむざ破壊するわけにはいきません。この階段を破壊しようとすればすぐ様、その者たちをシールドで包み爆破する仕組みなどは作ってあります」


「火事や地震などで、反応しないのですか?」


「それはありません。仕組みが仕組みなので、もし万が一そうなった場合には、先生たちと生徒の力の見せどころです」と、教頭は、飄々と言ってのけた。

 

 そしてすぐにフランツ教頭は魔法を解除し、壁はただの階段へと戻った。


「そう言えば、ここの呪文は限られた者しか知り得ず、聞き取れません。まぁ、私なら魔法学校の秘密をあばこうとしません。それをするのはもうすぐ死者になる者か、魔王くらいですよ」

 

 そう言ってフランツ教頭は、悪意のある笑いを浮かべた。けれど、たぶん魔王は魔法学校には、興味など持たないと思う。ここでもクラスの美少女人間界の人間はは、自分を好きって思ってる男の子魔王に片想い中なのかもしれない。


「では、2階の説明をいたしましょう。ここで授業を受けのは主に2、3年生の生徒達です。2年に学年が上がりますと、一般教養科目の授業時間が減り、 製薬、占術、錬金術、魔法動物、魔法植物、魔法道具などのが必修科目に加わります。それによって多くの魔法の基礎知識が、浅く広くでありますが知る事が出来ます」


「思った以上に勉強するんですね……」


「それだけ魔法の細分化してしまい、なんて言いますか……、扱う魔法重要だから生徒に学ばせるのではなく……人々を掌握するを得意とするその道の権威に屈すわけにいかず、逆らうわけにもいかず……。今後もその方針が貫けるよう……勇者様の御力も少なからず借りたい。と、そう思っています」 


「まぁ、僕の出来る事があれば……はは」


 ――思わぬ場所で、やぶ蛇だった……。

 

「そのほかに調理室と大食堂、それに生徒の滞在する教室として、ハウスホームが割り当てられております。ハウスホームは赤のサラマンダー、緑のシルフとがあり、3階には青のウンディーネ、黄のノームのハウスホームとがございます」


 聞いた事のある精霊の名前が使われていた。


「ぬいぬい様は、どこに入られていたのですか?」

 ルイスが彼に質問する。


「俺はサラマンダーだ。入るならそこしかないだろう? あるるもそうだ。あいつは朗らかな様で、実は気性が激しい」


「なんか納得です」「そうですね」


 ――なぜかぬいぬいと結婚した女性は、そうだろうな……となんか思った。


 僕が、あった事があるのはウンディーネくらい。魔界で暮らす為には、遭い、力を得る必要があるのだろうか?


 教頭のフランツの後ろを歩いて移動していると、『魔法動物学』と表示されている教室で、授業を受けているオリエラがいた。


 その教室では、動物と人間が対をなし座るスペースがあり、教壇に立っている先生は、白のワイシャツ灰色のズボンを穿いており、胸当て付きの白い基本的なエプロンを身に付けた、貫禄あるの老紳士で、穏やかな口調で使い魔の動物について語っている。

 

 授業を受けるているオリエラは、左手に大きな手袋はめて、その上には白と茶色のまだらで、頭にはネコの耳の様な羽毛が逆立っているふくろうを乗せている。

 

 ふくろうは、ずっとオリエラに語り掛ける様に鳴く。


 それにあせて「なんだろうね」、「うんうん、どうしてだろうね」と、彼女も呟きながらふくろうと話しているようだった。


「アッシュだ」

 

 突然、ぬいぬいつぶやく。どうも顔見知りのふくろうらしい。


「あのふくろうは、魔法動物学を専攻したやつに言わせると……」

 

「いちいち、なんで? なんで? って言ってらしい」

 

「何でも聞きたがり、それらを理解してしまう。そのため魔法学校の動物達の中でもとても賢い。だからなのか自分が気にくわない奴には、したがわなかったり、威嚇したりするので、たちが悪いらしい」

 

 ぬいぬいがそう言い、彼が腕組みをしアッシュを見つめただろう時、彼が一瞬戸惑った。


 僕が再びアッシュに視線を向ける前に、アッシュの鳴き声がすぐ間際で聞こえた!?


 僕らと教室の室内をへだてる、窓の一枚向こうにアッシュ居た。


 ぬいぬいの声を聞き分けすぐそ飛んで来ていたのだ。


 ヴァ――――ァァ! ヴァ――――ァ!


 羽をめいいっぱい広げ、足の爪を広げガラス越しに何度も、威嚇をする。アッシュを追いかけてやって来た、オリエラがぬいぬいとアイッシュを見比べながら……。

 

「師匠、来てると思ったら、アッシュに何か言ったの?」

 

「あぁ……すまん……そこまで聞こえるとは……」

 

 生徒の視線が集まる中、先生もやって来る。


 そしてその先生は、生徒にこちらの話を聞かれないように、扉に手をかけ閉めながら――。

 

「ぬいぬい君じゃないか……」

 と、残念そうに呟く。


 先生はまずアッシュのを袖に乗せると、何やら語り掛け、彼を落ち着かせると、オリエラにアッシュを預ける。

 

「ちょっと自習をしてて」

 と、室内にそう呼びかけ、教室の扉を閉めてやってくる。


「ぬいぬい君」


「君には在学中も言ったけど、心根は優しいのはわかるけども、伝えて方、接し方という第一ステップを君は、わりと疎かにしてしまうのは、うかつな事だと思いますよ」


「はい、先生……めんぼくない、お騒がせしました」

 

「本当に君はいろいろな意味で、変わらないね」

 彼は笑顔で、ぬいぬいの両肩をトントンと優しく叩く。


「久しぶりに会えてうれしかったよ。じゃ、授業があるので、これで」

 と、言ってすぐに教室に戻って行った。


 そのまま僕らは何も言わず歩き出した、ぬいぬいにつづく形で移動したが……。僕は、振り返りもう一度教室を見た。


『魔法動物学』のと書かれていた表示の下に、トリトン スカイと、手書きで書かれた紙が貼ってあった。


 生徒をねぎらう為に肩を軽く叩く動作は、ぬいぬいがする動作に似ている様に様に思った。


 その考えからするとぬいぬいが、弟子たちに教える姿勢はトリトン先生から引き継がれたもの様に思え、トリトン先生からぬいぬいへ、そしてもしかしたらオリエラや僕へと引き継がれるものかもしれない。



      続く

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異世界に住む、女の子を僕は好きになりました もち雪 @mochiyuki5

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