大かんばつに見舞われた、極限の乾きを覚える世界。人生に絶望した裕也家族を取り巻く環境がリアルに描かれており、危殆に瀕する生命と人生の際どさをまざまざと感じます。
もし、この国がこの小説のような天災に遭い、同じような境遇に身を置くことになったとしたら……私たちは今、どのような行動を起こし、これから先、どうやって生きていくのだろうか?
想像力を働かせ、幾つもない限られた選択肢の中から最善のカードを切りたい。そして、私たちは目の前に降り注ぐ無意識の雨に感謝しなければならない、そう思わせる力がこの小説には秘められていると強く感じます。
私たちの命を担う恵みとして。当たり前の日常という感覚に、忘れていた雨への思いをよせて。