第17話 天才は作れる
翌日。灰色とモブ子と合流する入間。
「今から三人で散歩します」
「いやぁあああ。運動は大嫌い」
嫌がるモブ子。ちゃっかりジャージ姿の三人組。
入間は運動の大切さを説いた。
「運動は脳のシナプスを刺激して頭を良くします。食事、睡眠、運動。三種の神器は人工的な天才を……つまり後天的に頭を良くします」
一日三色のバランスの良い食事、2時間以上の運動、7時間以上の睡眠。脳みそを極大まで力を引き出すのに必要な要素ばかり。
「で、何で運動音痴の私がここに加わるの?」
「モブ子のうんち(運動音痴)」
「う〇ち言うなぁー!」
ラノベと灰色とモブ子の三人で散歩する。距離は20キロ。およそ2時間以上かかる。ゆっくりと、ゆっくりと。水分補給をしながら、三人で進む。
「二人に言いたいことがある。天才は作れる」
学者の博士が、三人の女の子の子どもを優秀なチェスのプレイヤーにしたのは有名な話。その際、学校には行かせず、毎朝の運動とプロのチェスプレイヤーに毎晩のように教育を受けた。世間は、「虐待だ」と騒ぎ立てたが、結果は、三人の娘はプロのチェスプレイヤーになった。
天才は作れる。0歳教育を受けて、チェスの才能のない両親からグランドマスターが生まれた。
後天的な人工の天才。入間は灰色に懸けた。名誉を。
「人間のピークは20代後半。灰色は10代中盤。あと10年でプロの小説家に……天才に育てあげる」
「ラノベ。あんた、灰色ちゃんに10年もストーカーするの?」
「ストーカーちゃうわい!?」
天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。インプット・ルーティーン。おすすめの本だ。
2時間の苦行を乗り越え、それなりに楽しかったが……モブ子は最後まで愚痴をぶつけていた。三人で近くの温泉に行き、汗を流す。午前中終了。午後からは、
「美術館巡りと映画だ」
「こんなラノベ維新と三人デートみたいなのは嫌ぁあああ!」
「私は存分に楽しんでいますが」
「私は抜ける。あんたら二人でデートしておいで」
とモブ子は離脱を宣言。
こぎれいな衣装に着替えた灰色と入間の二人だけ残された。
「じゃあ、灰色さん。適当にデートごっごでもする?」
ちょっと赤い顔の二人。焦る。
「そうですね。これはデート“ごっこ”です。私たちは友達です」
天才は作れる。されど恋愛にはやっぱり経験が必要だ。と思った。
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