第16話 アマチュアの執筆時間

「これから灰色には毎日4時間書いてもらう」


「4時間ですか?」


「ああ、残りの時間は読書してほしい。ルーティーン化して、歯磨きのように、描いたり、読んだりしてほしい」


 図書室の帝王。才能はある。入間は14年間、スランプの期間を除けば、13年間、毎日1時間書いていた。しかし、才能も努力もまったくなかった。だから灰色ならばと期待してしまう。彼女は1年で商業出版できる逸材だ。


「毎日Vログを撮って、カクヨムというウェブ小説投稿サイトに、毎日4時間執筆してほしい。もちろん読書も加えて」


「ほっ」


(ほっ? こいつ今、安心しやがったか?)


「安心しました。ラノベなら、毎日10時間は書けと言われるものかと……」


「ははは、イラストじゃないんだ。絵なら10時間を描けるかもしれない。しかし、小説は違う。執筆は相当に頭を使う。アマチュアは4時間でネタがなくなる」


「だから4時間ですか?」


「ああ、僕のボーダーライン。アマチュアが執筆に使えるギリギリの時間は4時間だ」


 プロならば仮眠を取りつつ、8時間は書けるかもしれない。しかし、作品のクオリティーは確実に下がる。なので、朝のゴールデンタイムを活用した4時間がベストなのだ。朝の5時に起きて、午前中は執筆に没頭。午後から読書するのが今の小説科学の最先端。


「ラノベ維新の僕は1時間の執筆を毎日課している。14年間だ。それでもプロになれていない。武器がない。才能がない。努力の方向性が間違っている。でも、まだまだ書きたい。一生をアマチュアでいいからずっと書いていたい」


「ラノベさんは、その、目標とかあるんですか?」


「一次選考の突破。そして、8年以内にプロになる」


 22年間も書けば、何かを掴めるかもしれない。ただ灰色には最短でプロ入りしてほしかった。


「私、書きます」


「ありがとう。灰色」


 図書室での今日の指導はこんなところか。二人とも学校を出て、別れて、帰宅した。

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