第12話 ラノベ作家になるための始動

 モブ子の提案でラノベ作家になる過程をYouTubeで撮りためることにした。灰色の顔の撮影は禁止。つまるところ顔出しなしのYouTubeをVログを撮影していく。


 YouTubeはコラボが命。有名インフルエンサーのモブ子が顔を出して、灰色を手助けする。可愛い女の子が二人? 顔出しなしでも灰色の魅力は十二分に伝わる。


 入間は、指導(始動)した。


「読書量があるやつは強い。まずは私小説を書いてほしい」


「私小説ですか?」


 私小説とは、作者が体験した、人生経験の小説。いわゆるノンフィクションとか、フィクションとか呼ばれている。


 入間は丁寧に小説の書き方を、基本的なことを指導した。


「誰でも素晴らしい小説が書ける、と言われている。なぜなら“自分のこと”を小説に書けばいいからだ。私小説はオンリーワンであり、ナンバーワンだ」


「灰色ちゃん。私は西村賢太とか好きだよ」


 モブ子が純文学のレクチャーをする。私小説は、それだけで純文学足り得る。太宰治の人間失格とか、ノンフィクションと、フィクションの狭間にある。


「素人のラノベの書き方教室だ。適当に受け流しても構わない。でも僕はラノベ一家に生まれた、ラノベ維新。灰色を必ず商業作家にする」


「分かりました。私小説を書きます」


 YouTubeのVログは1週間単位。ラノベ作家になりたい美少女JKの顔出しなし動画の配信が決まった。


「芥川賞は100%。コネと学歴。編集者の力が大きい。僕たち高校生にはほとんど何もない。特に、一番重要な実力が不足している。だから文学ユーチューバーのコネを120%使って、凡人の戦い方をしよう!」


 天才は正面突破。反対に凡人は創意工夫。天才はそのまま賞に出せば、すぐに作家になれる。しかし、入間たち文芸部は1のクズ。100の天才ではない。なので、とにかく金とコネを120%最大限に利用する方法を思いついた。 


 金とコネとポジショニング。加えて努力。楽しむこと。努力を苦にせず書き続けること。


 さあ、天才の肩に乗って踊ろうか。踊り狂おう!

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