第10話 スピリチュアル守護霊クライマックス

「重要なお知らせがある」


 入間は天命を受けた。


「灰色もモブ子も小説家になることはない」


 未来からのメッセージ。芥川賞や直木賞を取る人物をまじかで見て、入間は、天才と凡人の違いを知った。見るからにオーラが違う。守護霊が違う。受け持った天命が違う。


 入間は平謝りする。


「本物を間近で見た。灰色もモブ子も消費者であり、創造主の器ではないことを知った。本当にごめんなさい」


 天才とは、生まれながらの天才。たとえ、凡人が100回死に戻りしようが、ループしようが、二度目の人生を異世界で過ごそうが、芥川賞や直木賞を取る人物には絶対に勝てない。100回死んでも1000回死んでも、100万回生きた猫でも、小説は書ける。けれども、芥川賞や直木賞を取る人物は天命が違う。生まれた時から、彼らは小説を書く才能を有していた。神(紙)に愛された仏。仙人。傑物。強者。


「だから宣言する。文芸部は今日で解散する」


 ラノベ王とは、すなわち、芥川賞や直木賞を取るのと同様に難しい。


 引き寄せの法則や宇宙法則を駆使しても、スピリチュアル守護霊クライマックスなのだ。


「死んでお詫びします」


 入間は泣いた。自分のやってきたことは、相当の無茶ぶりだった。


「待ってください」


 自殺を止める灰色。彼女はヒロインだ。


「責任を持って私が一冊の本を生み出します」


「え?」


「入間のためにお金を5億円寄付します。凡人のラノベを1冊、出版します。これでいいですか?」


「なぜ、僕のためにそこまで?」


 灰色ははにかむ。


 ――私はあなたの騎士(ナイト)ですから。


 運命。フェイト。入間が神から与えられた手持ちカードは、灰色とモブ子のみ。


 灰色は、5億円をつぎ込み、入間を応援した。モブ子は文学インフルエンサーとして、入間を芥川賞や直木賞の、本物の、生まれながらの天才を目に焼きつけさせた。


 入間と灰色の戦闘力は1。対して、石田衣良とか宮本輝とか、keyのライターの戦闘力は100。


 1と100。月とスッポン。弱兵士が、呂布の軍勢100人に相手するような絶望。


 手持ちのカードは、莫大な資金を有する灰色と純文学に通ずるモブ子のみ。文芸部の解体は、そのまま入間の死に繋がっています。


「入間さん。このままだと死にます。本気で、小説を1冊出しましょう」


 100回、死に戻りをしても、100通りの世界線を見ても、パラレルワールドに行っても、入間は小説家になれていない。だからラノベ維新は、夢をたくす。灰色のグレーゾーンに。


「金閣寺。お前が僕の最高の友達だったんだな?」


「はい。そうです。私は、金閣寺を半永久的に写経するもの。あなたの最大のライバルであり、友です」


「ストープ! お二人さん! いきなり、自分の世界に入らないで!?」


 モブ子が静止する。入間と灰色は最強のコンビだ。もう、何も、怖くない。


 二人で小説家になる。入間はアマチュアの作家。灰色はラノベ王。もとい、芥川賞か直木賞を取る。そして、モブ子は最強の文学系ユーチューバー。


 仲間は揃った。あとは天命を待つだけ。


 それが運命の選択。フェイト。天命は決まった。

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