第8話
また、朝が来る。
この世界、自分がいたってそうじゃなくたって
変わんない。
世界は、続く。
何にもない真っ白な病室から出て屋上へ向かう。
こんなに元気なのにあと1年で死んじゃうなんて
考えられない。
なんか笑っちゃう話だね。
「ガチャり。」
屋上へと繋がるドアを開ける。
頬に当たる風が気持ちいい。
屋上には意外とたくさんの人がいた。
それはそのはず。
みんな、逃げ出してるんだ。
この、現実から。
視線から。
――「死」から。
ここの病院は市で1番大きい。
だから、重症の患者さんも結構いるんだよね。
私、みたいなさぁ。
ただただ死を待つだけだなんて、
なんてつまらない人生。
今から死ぬまで、多分なんにも変わんない。
「はぁ。」
溜息をつく。
なんか、ここにいる全ての人と
感情が重なった気がした。
空に、手を伸ばす。
あるのは空気のみ。
夢も希望も――
「おい!」
「ひひゃあっ!」
い、今背中を手で押されました。
怖いです。
死にそうです。
やばいです。
もしかしたら、今後ろにいるのは、私に激しい憎悪を抱いている人かもしれない。
私は今日、死ぬのかもしれない。
恐る恐る後ろを振り向く。
「なんだ、君か。」
思わず声に出てしまうほど拍子抜け。
いたのは、この間の君だった。
「ああ、そうだよ。」
君はこの前の何倍も美しい笑顔で頷く。
――なんで、こんな人が死のうと思ったんだろう。
この前は気づかなかったけど、この人は
顔は整っていて、声もいい。
女子がキャーキャー騒ぐタイプだろう。
――そういえば、名前聞いてなかったね。
「名前、なんて言うの?」
私は君に聞く。
「え?そういう時は自分から名乗るものだよね?」
あ、そっか。
私、凄く不躾だったね。
「私は、
「ふーん、そう。」
なんか興味無さそう。
態度に全てが現れている感じが…。
「私言ったから!教えてっ!」
(ほぼ強引だったが)私は君に聞く。
その時、一瞬躊躇ったような表情が浮かんだ。
でも、直ぐに君はその顔を隠す。
その一時に驚く私。
君が、ボソッと呟く。
「――
へいけぼし、そら。
漢字は想像がつかない。
へいけぼし、平家星…
あ。
私は君に問う。
「ねえ、平家星って…」
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