第6話

部屋へ帰ってきた。

さっきは、少しだけ元の自分に戻れた気がする。

私は、やりたいことができなかった。

何かスポーツがしたかった。

病気に悩まされて出来なかった。

中学受験がしたかった。

入院してて無理だった。

友達が欲しかった。

みんな、面倒くさがって相手にしてくれなかった。

――愛されたかった。

友達は居ないし、親も死んだ。

叔母さんは優しかったけど、なんだか腫れ物に触るような扱いだった。

悲しかった。

ねえ、私はこの世界に必要ないの?

誰か、私を必要として。

お願い。


部屋にいても検査なんてないから私は自由。

そもそも治す方法なんてないんだし。


「あと1年、かぁ。」


ぼそっと呟く。

この声を拾ってくれる人は、居ない。

私は1人。

――おそらく、この先も。

やっぱりこの世はゲーム。

元々能力値が決まってて、

変えられない部分がほとんど。

ハンデが多い。

はぁ、なんてつまんないんだろ、この世界。

無理ゲー。

この言葉、今の状況にピッタリだ。


私の青春アオハルは、小学生時代5年間で終わった。

汗を拭ったハンカチに着いた微量の宝石。

これを親友が見つけた。

味方だと思ってた。

ずっと仲良いと思ってた。

庇ってくれると、思ってた。


「え、なにこれ。朝姫あさひ、『普通』じゃないよ。」


頭をガツンと殴られた気がした。

親友に裏切られた寂しさ。

否定された悔しさ。

自分ではどうしようもないのに。

『普通』ってなに?

勉強と運動が普通に出来たって、

ずっと笑顔でいたって、

友達がいたって、

私は『普通』じゃないってこと――?

私はどうすればいいのだろうか。

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