第5話

「勝って、から?」


 君はその意味が理解できていないようだった。


「自分で自殺するのって、この空気に負けたってことだよね。私、それ負けだと思うんだ。」


 一気に喋る。

 最近は黙ってたからちょっと不思議。

 君が口を開く。


「生きてって言うんなら、お前が俺に生きる意味を与えてくれよ。」


 彼は泣きそうな目で言った。

 ――私の生きる意味って何だろう。

 なんで私生きてるんだろう。

 わかんない。

 でも――


「生きる意味ってさ、自分で探すものじゃない?」


 これが、私の答え。

 私はまだ生きる意味が分からない。

 あと1年で見つかるかも分からない。

 もしかしたらもう見つかってるのかもしれない。

 一生、無いまま過ごすのかもしれない。

 それを求めるのが、人生だ。

 君は大きく目を見開いた。

 その後、くすっと笑った。


「じゃ、自殺やめる。」


 私は息をついた。

 よかった、死をひとつ減らせて。


「じゃあね。」


 私は帰ろうとした。

 その時、君は言った。


「おう、


満面の笑みで。

瞬間的にいいなあって思った。

多分彼はちょっとした怪我とかで、

私みたいに難病じゃなくて

――命の期限もないんだって思った。

羨ましい、な。

あと、1年。

私は生きる意味を見つけられるのだろうか。

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