第3話
朝日が昇る。
――また、一日が始まる。
ああ、もううざったい。
残り1年、か。
この期間、私が生きてる意味ってあるのかな?
死んだって変わらないと思う。
この3年ちょっとずっとそう思ってきた。
こういう時、私は必ず屋上へ向かう。
私の病室は3階。
屋上は5階。
結構、世界の見え方が変わるんだよね。
だから私は今日も屋上へ向かう。
ガチャリ。
ドアを開ける。
横から吹く風が気持ちいい。
そこには昨日と変わらない日常。
――やっぱり世界は変わらない。
目の前には、昨日と変わらない景色。
あと一歩踏み出したら死ねそうな所。
お母さんも、こんな所で一生を終えたのかな。
小さい頃の家族の唯一の思い出がある。
遊園地に行ったことだ。
コーヒーカップやメリーゴーランドは楽しかった。
お化け屋敷はちょっと怖かったけど、
みんなで固まって耐えた。
最後の観覧車は今みる景色よりもっと高いところまで昇った。
世界が綺麗だった。
今より何倍も。
みんな笑ってた。
――あの頃は幸せだった。
その頃はそれが当たり前だと思ってた。
それは違った。
その日を境に2人は笑わなくなった。
父はよく夜に出かけていた。
今思えば、不倫だったかもしれない。
母は、いつも無理をしているようだった。
母の部屋を1度覗いたことがあった。
机には、きらりと光るものがあった。
――あとから分かったことだが、「宝石病」は遺伝する病気らしい。
もしかしたら、お母さんは――。
少し場所を移動して下を覗く。
今日も世界はモノクロだ。
とその時、
「なぁ、お前何してんの? 邪魔。」
後ろから、声がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます