第3話 警察官のなかに謎の男

「そうか……この子ね……」


 警官はかなり温厚な人で真剣にこの子の行き先を考えていた。


「とりあえず、捜索願だとかを調べてみようかな……」


 警官がそう言いかけていた時、その彼の目が変わった……。


「そうか、生まれてしまったか……」


 いきなり、警官はそんなことを言い出す。

 温厚な様子からいきなり険しい、まるで狩人のような人になってしまった感がある。

 なんだ?いきなりどうしたんだ?


「では、さっさとしてしまうしかないな」

「あの……どうしたんですか?」


 警官は彼女に手のひらを向ける。

 その瞬間、俺は妙に嫌な予感がした。

 俺は咄嗟に彼女を抱きかかえ、その場から離れさせた。

 すると、警官の手から突如、紫色の稲妻のようなものが発射され、彼女がいた場所の床は真っ黒に焦げてしまったのだ!


「ッ!」

「人間!何をする!」

「その言い草、まるで貴方が人間でないみたいですね!」

「くそ……小癪な!」


 警官は追撃にもう一発、稲妻を発生させた。

 その稲妻を……俺はもろに食らってしまった。


「くっ……!」

「もろに食らったな!!」


 これは死んだか……?

 そう思ったが……。


 俺は生きていた。


「なん……だと……?」


 警官は激しく驚いている様子である。


「そんなはずがない……たかが人間がこれを食らって、生き残るなんて……」


───こいつ……もしかして、風情だけで、本当は大したことないのでは?


 しかし、実際は絶対にそんなことはないのだ。

 彼からは先ほど、床をも焦げさせてしまうほどの、稲妻が放たれたのである。

 そんな稲妻を放てる彼が大したことないわけがないのだ。


 しかし、俺はその稲妻を食らってもなぜか耐えた。

 しかも傷一つない。

 痛覚もない。

 これが一体どういうことなのか。俺は知る由がなかった。


 とりあえず、今はそんなことを気にしている暇ではない。

 できることなら、この攻撃的な警官を倒して帰りたかったが、俺にはそれに十分の攻撃力はない。

 ここは逃げるしかないようだ。


 俺はすぐに交番から出て、逃げようと図った。


「無駄だ……」


 すると警官から、紫の妖気のようなものが出ていた。

 その妖気はとある一点に集まり、それはどんどん固体になっていった。

 その固体はガタイの良い人型の固体。警官とは違う個体。

 男の若者のような姿になった。


「絶対に逃がさんぞ!新生聖悪魔王!」


 彼は宙を浮いている。

 一体何者だ……⁈


 俺はそんなことを気にしたかったところであるが、気にしている場合ではやはりなかった。

 俺は彼女を抱えたまま、さっさと自転車に向かう。

 この時、俺は気づいていなかったのだが、この時の彼女の目は紫に光り輝いていたようだ。

 その目が眺めていたのは、あの謎の男……。


 俺がその彼女の異変に気付いたのは、その彼女の謎の光が全身にまとわれたころであった。


「な、なんだ?」


 俺はそれを横目に不思議に思いながらも走った。


「さぁ、死ね!!」


 謎の浮遊男は先ほどの稲妻よりもさらに激しい電撃ビームを俺と彼女めがけて放った。

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刷り込み悪魔の魔法術式 端谷 えむてー @shyunnou-hashitani

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