第2話 異世界での出会い
「は、ははは...」
笑うしかなかった。
だってどうすればいいかわからないんだもん、仕方ないだろ?
「大丈夫?」
そんなことを考えていたら、男...ダイチとか言ったか?が、声をかけきた。
「あぁ、すまないもう大丈夫だ。俺の名前は...」
「もしかして、ウィダーか?」
「そうそう、俺の名前はウィd」
俺に電流走る。
え
「ナンデオリドナバエシッデドゥンダ!」(なんで俺の名前を知ってるんだ!)
おっと、びっくりして滑舌が...
いや、そんなことはどうでもいい!
こいつは初対面だ、なぜ俺の名前を知っている?
知っているはずがないのに!ここは異世界のはずだ...いや、その前提条件が違うのか?
あーもう訳がわからん!
え、てか怖!
ガタガタガタッ
「ちょ!待て!落ち着け!とりあえず座ってくれ!」
「あ...すまん...」
促されるまま、近くにあったベッドに座った。
かなりパニックになっていたのか周りに色々な物が散乱してしまっていた。
とても申し訳ない。
「いや、僕こそすまない。知らない人に名前呼ばれたらそりゃ驚くよな...とりあえず、僕のことはダイチって呼んで。歳は十八だよ」
砕けた口調でダイチが言う。
あぁ、こいついいやつだな。
「僕が君の名前を知っていたのはヒルフロースヴェルトっていうゲームのおかげなんだ。」
「ゲーム?」
また知らない単語だ、もう勘弁してください...
「あ、そっか...わかんないよな。ちょっと待ってて」
そう言うと彼はあの大きな黒い板に手を伸ばした。
そして、何やら操作を始めた。
「それ何だ?そしてなにしてんだ?」
疑問に思い聞いてみる。
「あぁ、これはテレビって言ってさっき言ったゲームっていうのををするための機械と接げて遊んだりするんだ。今、ゲームをつけてるから待ってて」
そう言われたら大人しく待つしかないか。
でもテレビとかいうあの板で何ができるっていうんだ?それにゲームって結局何なんだろう。
そんなことを考えていると、突然テレビ?が光りだした。かと思うとなにか映像が流れている。!...これは!
「俺の部屋?それにこの真ん中で立っている男は...俺...か?」
「そう、僕の世界で君はこのヒルフロースヴェルトっていうゲーム...まあ、ある種のおとぎ話みたいなものだな。とりあえず、それに出てくるキャラクターの一人なんだ。」
「つまり...俺がこれからどうなるのかわかるってことか?」
「まぁそうなるな、...正直君がここにいるのは信じがたいけど、なにもないところから急に出てこられたら、いたずらとかじゃなく転生でもしてきたとしか思えないんだけど...そこんとこどうなの?」
「!、転生!そうだ!」
慌てて自分のスキルを確認すると新スキルの欄に『睡眠転生?』というスキルが増えていた。
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新スキル
【睡眠転生?】 ランク?
ーそれは神の気まぐれか、はたまた運命かー
・異世界へ行きたいと願って睡眠した際、寝ている時間だけ異世界へ移動できる。(スキル入手後の初回睡眠時のみ強制的に移動)
・移動される場所は初回転生時に移動した地点に固定される。
・異世界での経験は自身のスキルに還元される場合がある。
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...どうやら神様ってのは本当にいたらしいな。
そして...まぁ信じてもらえるかはわからないがダイチには今まであったことを話すしかないよなぁ。
...まぁ、転生とか普通に言っちゃうやつだし信じてくれそうではあるか。
「実は...」
...
すべてを話し終わるとダイチは少し考えるような素振りを見せたかと思うと、何やらぶつぶつと呟き出した。
「なるほど...ウンベ特攻の直前か...それならまだいけるかもな...」
そして、「ちょっとまってて」と一言残して部屋を出ていったかと思うと、すぐに白衣に丸メガネという姿で戻ってきた。
「...いや、なんで急に着替えたんだ?」
「まぁ、わかる人にはわかるさ」
何言ってんだ?こいつ?
そんなことを考えていた時、急にダイチの顔が真剣なものになったかと思うと、座っている俺に近づき、見下ろすようにして話し始めた。
「ああ、落ち着いてください...焦ることはありません...あなたにお話があります。」
「何で急に口調を変えた?そしてこれ、大丈夫やつか?」
あれ?俺何を心配してるんだ?
「どうか、落ち着いて」
「あ、はい」
さっきからこいつどうしたていうんだ...
「あなたは明日、ウンべゾンネン攻略作戦に参加する...ええ、ええ、わかってます、その後どうなるのか?」
「!知ってるのか」
「あなたは...」
ダイチはそう言って気まずそうにこちらに近づいてくると、はっきりと言葉を叩きつける。
「そこで戦死します...が、オペレーターのフューレンが...リンクを使ってあなたにHPをすべて送り、あなたは復活します」
「...え」
ちょっと待て、俺が戦死?そしてフューレンがHPを全部?
たしかにオペレーターはそういうこともできるって聞いたことがあるけど...
全部ってことは...つまり...
「...嘘だ、ウソだ、うそだ!ウゾダドンドコドーン!」
「まずい!
いそいそと眼鏡と白衣外し慌てて声をかけてくる。
でも、落ち着けるわけないだろ!
「そんな事言われても無理だ!だってよ...フューレンなんだぜ?」
「落ち着け、まだ起こったことじゃないだろ?」
「うるさい!...クソッ!ファールハイトの奴らが口添えしなければこんなことには...」
「ああ、それなんだけどな」
諭すようにダイチが言う、そして続く言葉に俺は驚愕することになる。
「確かにファールハイトの口添えもあった、だがそれがなくてもお前はウンべに行かされてたさ。なぜなら...ウィダー、そして...フューレンもだな、君らはシュバルツ帝国の出身じゃないからな」
まさに、死角からぶっ叩かれたかのような衝撃だった。
うそだろ?
「は?どういうことだよ!」
「...シュバルツ帝国は君らが兵士になったときこそ大きな国となっていた。でも、元々はそれほど大きな国じゃなく、むしろ小さな国で、兵力も他の国々の3分の2ほどしかなかった。そんな国が考えた作戦、それが...他国からの拉致した子供を兵士として育成するというものだ。そして、君とフューレンもそんな兵士の1人だ」
「うそ...だろ...」
「...残念ながら、これが現実だ。大人を捕まえて兵士にしたんじゃ、そこまで帝国のために働いちゃくれない。当たり前だ、生まれた国を滅ぼしたい奴なんてまあいない。しかし、子供ならどうにでも洗脳できる。小さい頃からお前はシュバルツの人間だと言い聞かせれば、見事に忠誠心の塊の出来上がり。本当にまあ、良く出来たゴミ作戦だよ。」
「...」
...あぁ、声が出ないってのはこういう時のことを言うんだろうな。
家族がいると...自分の祖国だと思い込んで...文字通り命を懸けて尽くしてきた国が、とんだ犯罪国家で俺の事を捨て駒としか思ってなかったなんてな。
「大丈夫か、ウィダー?」
「...ははは...笑えるな...」
信じられない...とは言えないな。
こう言われて今考えてみればもう、そうとしか考えられないな。
「俺...いままでなんのために...いや、何をしていたんだろう...」
あぁ、もう何もかもがどうでも良く...あ、いやそれは元からか。
...もう元の世界になんて戻らなくても...
そんな考えが頭をよぎったその時、ダイチが問いかけてきた。
「なぁ、お前はそんな世界で満足か?」
「は?」
「そんな救いのないクソみたいな世界だよ。...そんな世界...変えたくないか?」
!
世界を、変える?
「いいか、ウィダー?確かに過去には戻れないし、変えられない。だから拉致された現実はどう足掻いても変わらない。でもウィダー、お前まだ死んでないだろ?」
俺はまだ死んでない?
「...あ!」
「そうだウィダー!これから先はまだ君の世界で起こったことじゃない。だから...そんな世界を...運命変えよう!僕たちで!」
そう言ってダイチが手を差し出す。
その手はまさに、救いのない世界に差し込む光のようにすら見えた。
そうだ、そんな世界も運命も変えてしまおう。
俺は差し出された手を強く握った。
寝逃げで異世界! 海原 繋 @Tunagu-UNABARA
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