三人の道

 戦局の方はしっかりとたたんで見せた。

 これで終戦だ。

 戦争を終わらせた僕は一人、王女様の方へと会いに来ていた。

 僕がやってきた王女様の部屋にはまだ帝国の方に帰っていないガイアの姿もあり、この場には自分と王女様、ガイアの三人がいることになる。


「ごめんね、王女様。思ったよりもこちら側が支払えるものなくて……いやぁ、自分が当主になった以上、その立場を確固たるものとするために色々な制約があってね」


「いえいえ、気にしませんよ。そもそもカエサル様がいなければ勝てていませんし、なおかつ、多くの復興支援を行ってくれることは既に決めてくれているじゃないですか」


「そう言ってくれると助かるな」


 僕は今回の戦争での後始末について、王女様の方へと謝罪の言葉を口にする。


「謝るなら俺にしてほしいなぁ?今回でガッツリとした功績を得てくるつもりだったんだけどなぁ?カルミア王国を支配するくらいの」


 そんな僕と王女様の会話にガイアが割り込んでくる。


「お前はカルミア王国に勝利するための楔を手にしたとでも声高らかに宣言していないよ」


 そんなガイアの言葉に僕は結構ぞんざいな言葉を返してやる。


「かぁー、足らねぇよ。俺は、この後。自分が女であると公表するつもりなんだぜ。女だと頼りない。そんな声を完全に封殺できるようなものを俺は欲してしているんだよ。それくらいの功績がよぉ」


「ハッ、言わせておけばいい。別に今日、明日で決まる訳じゃないだろ?ニルシア小国の方には僕の影響がずいぶんと動く……ロイマール王国の独立から、他の国はそれによる影響を測りかねるだかろうが、それでも歓迎はしないだろうよ。何なら、此度の戦争の目的は復興支援で自国の影響を増やすことだと他国が考えてもおかしくない。どうせ、他の国は動くよ」


「だから、待て、と。これ以上の見せ場があると……だが、それは本当に見せ場か?他の大国二つが動いた状態で何が出来る?」


「僕は一人で国家としてやってみせるよ?」


「おー、頼もしいねぇ……じゃあ、これまで通り、俺はあんたに賭けていいかい?」


「んー、そこはご勝手に」


「おいっ!?そこは最後まで補償しておけやっ!」


「それはちょっと難しい」


「おぉいっ!?」


「……まぁ、ひとまずうちはカルミア王国の立て直しからだな」


「ちっ……逃げたな。まぁ、でも、俺の方もそんなに悪くはねぇ。ニルシア小国とロイマール王国との繋がりが出来たからな。うちの覇権政策には大きな得となる。俺の方はとりあえず、女だと知った結果起こる、ダメージを減らすことだな」


「それでは、私たちの方は復興作業ですね……我が国が負け、滅亡したとしても、私は自国の民だけは守りたいのです」


「それなら、僕に任せてよ」


「ハッ。全部俺に任せろ。お前のところの侯爵領もまとめて面倒を見てやるぜ」


「それは勘弁」


「ちぇー」


 僕はガイアの言葉に軽く肩をすくめた後、窓の方に向かっていく。


「それじゃあ、僕はこれで失礼するよ。カルミア王国の方は結構洒落にならないんでね……マジで、腐敗やら何やらがエグくて、数年はそれの対処に頭を悩ませることになりそうだよ。僕は」


「んっ、じゃあ、俺もそろそろ国に帰るわ。もう準備は終わったからな。いい加減帝国に帰らないと怒られてしまう」


 そんな僕へと触発されたかのように、ガイアの方も部屋を出るための扉の方に向かっていく。


「そうですか……それでは、それぞれの道の方に戻るのですね」


「まぁ、そうなるかな」


「そうだなァー。まぁ、でも、いずれはまた関わるだろうよ。その時は出来るだけ味方で頼むぜ?」


「それはこっちのセリフでもあるよ」


「へへへっ」


「私はただお二人を待っていますわ」


「おっ、けなげだねぇ……それじゃあ、またね。二人とも。僕はここで」


「それじゃあ、俺もここで失礼するぜ」


「はい、いってらっしゃいませ」


 軽口を交わし合った後、僕とガイアはこの場を離れ、そして、その場には王女様が残る。

 本来であれば、交わることはなかったであろう僕たちは、今、各々の道へと戻っていくのだった。

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