終戦
半ば、アイランク侯爵家の暴走から始まった戦争は。
アイランク侯爵家に生まれた新たな当主の誕生と両国を隔てるようにできたロイマール王国の存在によって、終戦を迎えた。
当然、中央にいる利権へと目がくらんでいる一部の中央の上層部は終戦に反対したが、それでもアイランク侯爵家はこれ以上戦力を出さないという宣言でもって、彼らの口は閉ざされた。
中央に、王都で暮らす貴族たちのほとんどは国王の周りにいることから政争は強いが、それでも実際に武力を持っている者たちはいない。実際の戦闘となると力を失う彼らは戦力をどこも出してくれないとあきらめるしかないのである。
「終わったな」
「そうだね」
というわけで終わった戦争。
それが決まった会議に王都まで来て参加していた僕は、己の隣に立つ自分とまったくもって同じ事情で王都にいるガクの言葉に頷く。
「わかったか?我が国の腐敗ぶりが」
そんな中、ガクがカルミア王国の腐敗ぶりについて言及する。
彼が言いたいのは会議中、周りの貴族があることも憚らずに自分たちの利益を優先するかのような発言を連発していた我が国の上層部を見ての話だろう。
「別に、さほど僕は気にしないけどね。上が腐ったのなら、そこを捨てるよ」
まぁ、でも、我が国の上層部の現状なんて、権力とそれがもたらす金に胡坐をかいていた自分の父上と何も変わらない。
僕はさほど気にしていないとガクに言葉を返す。
「……協力しろよ?俺はお前に協力してやったんだから」
「わかっているよ」
アイランク侯爵家の当主を継いでしまった以上、ガクからは逃げられないだろう。
しっかりと彼の思い通りに動いてあげるしかないだろう。
「でも、主体的に動くのはお前だからね?」
「あぁ、それは任せろ……ところで、終戦内容についてはあれでよかったのか?」
「何が?」
「条約以外にないだろう。我が国は一切、賠償も、領土的割譲もなし。ただ戦争が終わるだけの条約だ。一方的に宣戦布告させられ、それでも、大国を跳ねのけた彼の国がこんな条約で納得するのか?」
「僕はもともと、ニルシア小国側だよ?もう向こうとは話しあっているよ。そもそもとして、戦争資金はニーナの影響がかなり大きいからね。損害賠償なしでも、しっかりと向こうがやっていけるように我が家の方でもやっていくから。ニルシア小国の方は何の心配もしなくていいよ」
「それならいいが……」
「せいぜい、ニルシア小国にうちの傘下のものたちを流し込んで、利益を得るさ」
「……やりすぎるなよ?他の三国から、ただでさえ目をつけられているのだから。ロイマール王国の独立を許したことから、他の国々は我が国が動きにくくなったことを察しているだろうから、そんな目くじらを立てることはないと思うが……」
「そこら辺の政治も心配ないよ。ちゃんとうまくやるさ」
「任せたぞ?」
「うん。それじゃあ、僕はニルシア小国の方に向かうから失礼するよ」
「あぁ、わかった」
ガクと別れた僕はすぐに王都を離れ、ニルシア小国の方に戻るのだった。
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