アイランク侯爵家

 現在の戦況としては、カルミア王国が苦境に立たされているような状況だ。

 カルミア王国軍の大攻勢は失敗に終わり、アイランク侯爵家の有する最強の駒であるカシージャスも沈んだ。

 当然、ニルシア小国側も今回の戦いで再起不可能なレベルの大損害を負った。

 小国である彼の国では僅かな被害であっても重要な問題となるのだ。

 だが、カルミア王国軍も看過できない被害を出しており、これからはさほど多くの人を集められないだろう。

 多対多の傾向ではなくなればなくなるほど、一騎当千のものたちの影響力が大きくなる。

 カエサル、ニーナ、ガイア……ニルシア小国味方する規格外が三人もいることから、現状ではカルミア王国が普通に真正面からぶつかり合って敗北する可能性もあった。


「どうするのだっ!?」


 そんな戦況の中で、アイランク侯爵家の当主であるカマセが声を荒げる。


「クソっ!?カシージャスもカシージャスだっ!?あの外道なんかに負けおって……情けないとは思わないのかっ!」


 そして、それに続いて追放されたカエサルに代わって次期後継者となっていたマセカの方も声を荒げる。


「こ、このままでは負けかねんっ……!」


「だ、大丈夫なのっ、あなたっ!?」


「女は黙っていろっ!」


「……ッ!?」


「くそぉぉぉぉぉ、俺が、俺が後継者だぞぉっ」


「お、お兄ちゃん……」


 劣勢の中、アイランク侯爵家の中には憤怒と絶望の空気感が広がっていた。


「その他の奴らも動かんっ!これは国の有事たるぞっ!」


 現状、カルミア王国軍はアイランク侯爵家を中心として構成されており、その他の貴族はあまりやる気になっていない。

 中央の腐敗した上層部がニルシア小国より得られる女や財、並びに、アイランク侯爵家から渡された賄賂を理由に協力しているくらいである。


「ぐぅ……っ!」


 アイランク侯爵家の当主にその夫人。

 そして、マセカを初めとするその子供たちが頭を抱えているような状況の中。


「おー。ちょうど、全員揃っているじゃないか」


「そうだね。おにぃ!これならざこざこのおにぃでも、問題なく制圧できそうだね」


「……いや、どんな状態でも問題はないけどね?あそこまでしっかりと下準備されていたら特に」


「「「……ッ!?」」」


 当然、屋敷の窓をぶち破ってカエサルとニーナの二人がアイランク侯爵家の屋敷へと飛び込んでくるのだった。

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