剣での勝負

 様子見は終わった。

 僕は完成された剣士と言えるカシージャスに対して、真正面から剣でもって彼に斬りかかっていた。


「くっ……」


 僕の剣も悪くない。

 純粋にカシージャスよりもありとあらゆる身体能力が高い僕は彼を相手に剣での勝負を有利に進めていた。

 

「ふぅー」


 彼の振るう剣を自分の剣で淡々と受け流すと共に、彼へと拳や蹴りを振るい、ちまちまダメージを与えていく。


「クソ……ッ!?何故、お前がそれほど前に剣の技を……っ!」


 カシージャスは僕を相手に何も出来ず、代わりにじわじわとダメージを入れられている。

 そんな現状を前に彼は歯噛みしながら、言葉を荒らげる。


「あいにくと、僕は死者の経験を自分の糧に出来るからね」


 僕は死霊魔法で自分の支配下にした死霊が持っていた経験を自分のものに出来る。

 歴戦の剣士や、武道家、魔法使いなどが持っていた技術をそのまま僕は得ることが出来る。

 それを僕は淡々と反復して自分のものに昇華させるだけでいい。

 他人がゼロから積み重ねるよりは遥かに早く強くなることが出来る……ゲームでのカエサルは得た技術を自分のものにするような努力さえも嫌ってやっていなかったけど。


「……っ!だから、嫌いなのだっ!お前は。俺たちを何だとっ、死者を何だと思っているのだっ!」


 そんな風な僕を前に、カシージャスは嫌悪感を全面に押し出しながら剣を振るう。

 これまで人が積み上げていた努力を平然と食い物にしていく僕の存在に態度を、カシージャスは許せないのだろう。


「崩れたな」


 だが、その激昂に意味などない。

 感情的になっていたカシージャスの剣が揺らいだ。

 その隙を見逃さなかった僕は自分の剣をしならせて、彼の手から剣を弾き飛ばし、丸腰とさせる。


「まず……っ!?」


 カシージャスは僕のように魔法で剣を作ったりなどは出来ない。


「さようなら」


「ぐふっ……!?」


 剣を失ったカシージャスへと僕は一切の容赦なく剣を振るい彼の体を斬り捨てる。


「悪いね……でも、自分の手札を使わずに後悔するような愚か者にも慣れないんだ」


 死者を尊ぶ日本人の価値観も持つ僕としては自分の能力に何も思わないわけじゃない。

 ただ、それでも、自分の力を使わずに死んだら意味ないからね。

 僕は何処まで行っても自分ファーストなんだ。


「で、お前は……逃げたか、早いな」


 自分の前で崩れ落ちていくカシージャスから視線を外し、自分の前にいたマセカの方に視線を戻そうと僕はするのだが、既に彼はこの場から逃げた後だった。

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