様子見

 剣を持ってカシージャスと向かい合う僕は迷いない動きで彼との距離を詰めていく。


「……ッ」


 それに対して、カシージャスがそんな僕に負けじと前へと出てきて剣を振るう。

 自分に向かって振るわれた剣をそのまま自分の手にある剣で受け流した僕は態勢をわずかに崩したカシージャスの腹へと膝蹴りを叩き込む。


「舐めるなっ」


 だが、その膝蹴りは流石にカシージャスが腹に直撃するよりも前に自身の膝を持ち上げることでかろうじて防いでくる。

 

「燃えろ」


 そんな最中、僕は触れ合っているカシージャスの膝を起点に全身を魔法で燃やしてしまう。


「俺の魔法耐性がこの程度で解けるかっ!」


 だが、その魔法はカシージャスに効いたようには見えず、彼は燃えながらも僕へと剣を振りかぶってくる。

 

「よっと」


 そんなカシージャスの剣は虹色にか輝いており、触れたら不味いと本能的に感じさせてくれる。

 その剣を僕はしっかりと余裕もって自分の手の中にある剣で受け流していく。

 少し、カシージャスの剣に触れるだけで僕の剣は砕け散ってしまうのだが、常に剣を作る魔法を発動させ続けることによって剣を持ち続けている。


「……っ」

 

 それからしばらくの間、剣での打ち合いを続けた後、僕は後方の方に下がっていく。

 そんな僕をカシージャスは追ってこようとするが、その第一歩目に自分が作りだした沼地を踏んでしまったことで動きを止められる。


「うん、段々と君の力を思い出せてきた」


 そんなカシージャスのことを見ながら、僕は満足げに頷く。

 カシージャスはカルミア王国随一の異名をもつ剣豪である。

 彼は生まれながらに魔法のほぼすべてを無効化するような特異体質であり、彼が魔法を受けて倒れることはない。

 そんな体質を持つカシージャスは剣技を極めることによって近距離戦闘で無類の強さを誇れるような男へと成長し、その上に剣で相手を斬るということに特化した魔法を個人で開発したことにより、その研ぎ澄まされた剣技の危険性はかなり高く跳ね上がった。

 攻防において非常によくまとまった剣士こそがカシージャスと言えるだろう。


「油断は出来ないよね」


 そんな相手を前に、僕は一切油断することなくこれからの戦闘計画をたてていくのだった。

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