一方その頃

 ニーナの動きが止められた結果、カルミア王国軍は津波のように荒れ狂う。

 だが、それでもカルミア王国軍を相手にニルシア小国は劣勢ながらも持ちこたると共に、新たなる一団が戦場に現れて戦局が再び移り変わっていく……。

 そんな中で。


「っぶねぇっなっ!?」


 僕はカシージャスとの戦闘の最中であった。

 カシージャスの手にある剣。

 それをギリギリのところで避けた僕は危ないだろっ、と不満の声を叫ぶ。


「貴方が何処か心ここにあらずだったからですよ」


「うるさい。僕は地上の戦地の方も気にしなきゃいけないんだよっ」


 ニーナの動きが止められて本格的に衝突し始めた時はもう相手の攻撃を食らうことも覚悟でここから援護射撃を行っていこうとかとも思っていたが、それでも自分が用意していた手札はしっかりと間に合ってくれた。


「まぁ、良いや……向こうのほうは大丈夫そう。というか、あれで駄目ならニルシア小国に勝機はないからな」


 自分の前で殺意を向けながら剣を振るカシージャスの剣を己の肌を滑らせるようにギリギリでよけながら、僕は彼の剣を握る手の甲へと膝蹴りを叩き込む。


「ぐぬっ」


 その膝蹴りを受け、カシージャスの動きがわずかに固まる。


「ふんっ」


「ぐふっ……っ」


 そんな隙を狙って僕はカシージャスの腹へと横蹴りを叩きつけてそのまま彼の体をのけぞらせる。


「よっとっ」


 そして、それを追撃するかのように僕は自分の手にある剣をカシージャスの方へと投げつける。


「ぬるいっ!」

 

 だが、そんな僕の投擲にも先ほど蹴りを受けたばかりのカシージャスはしっかりと対応し、その手にある剣で自分が投げた剣を弾き飛ばす。


「ようやく、私とやる気になりましたか?」


「まぁな……これまでは地上の方で何かあってもいいよう、そちらの方に意識を割いていたが、もうその心配はなさそうだ」


「……っ」


 僕は再度、魔法で剣を作ってゆっくりと構える。


「ほら、ちゃんと戦ってあげるよ」


 そして、ようやく今になった僕はカシージャスへと向き合うのだった。

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