侯爵家の力

 アイランク侯爵家。

 それは何処まで行っても大国の中で強い影響力を保持する大貴族である。

 アイランク侯爵家が持つ力、保有する力だけでニルシア小国を圧倒出来るだけのものを持つ。


「久しぶりだな」


 そんなアイランク侯爵家を中心とするカルミア王国軍。

 

「……まぁ、そうだね」


 その中にアイランク侯爵家の者がいるのは至極当然なことであった。


「久しぶりだね、マセカ」


 今、自分の前にいる男。

 自分の弟であり、自分の代わりにアイランク侯爵家の当主になるであろうと男、マセカ・アイランクに僕はあいさつの言葉を口にする。


「相も変わらず辛気臭い顔だな。死臭が漂ってくる」


「お前は相も変わらずぶっさいくだな」


 カエサルの見た目は白髪にオッドアイで美形という神の造形クオリティーだが、マセカの相貌は普通かつ地味だ。

 別に不細工というわけではないが、カエサルと並べばその残酷なまでの遺伝子の差を確認することが出来る。


「……ッ」


 そして、しっかりとカエサルに比べると見た目がパッとしない自覚を持つマセカは表情を歪めて額に青筋を浮かべる。


「どうやら、殺されたいようだな……ッ!」


 そして、マセカはこちらへの殺意の言葉を告げると共に、彼の後ろにいた人物が一歩、前に出てくる。

 

「いつでも動けます。マセカ様」


 マセカの隣にいた人物。

 それはアイランク侯爵家に仕える者の中で最も強い、単独で小国をも滅ぼせるであろう実力者たるカシージャスだった。


「お前は戦わないのかい?ビビり」


 カシージャスを前にする僕は相手への侮辱の意図を隠そうともしない態度でマセカへと声をかける。


「黙れっ!」


 そんな僕の挑発の言葉に対して、マセカは口汚く言葉を荒らげる。


「お前など、俺が手を出すまでもないっ!いけっ!殺せ、カシージャス!」


 そして、カシージャスへとアイランク侯爵家の次期当主として命令を下す。


「御意に」


「……うしっ」


 それを受け、カシージャスは動き出し、自分の方に向かってくるのだった。

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