大国の力

 一糸乱れぬ動きで侵攻を開始するカルミア王国の兵士たち。

 その進軍の様は芸術のようであると共に、圧倒的な死の予感を感じさせた。


「「「我らは何ぞや」」」


 力強いカルミア王国の進軍。


「「「我らは王の剣なり」」」


 それに伴うのは兵士たち全員が上げている口上である。

 軍事魔法の一つ。

 兵士たちの心を一つとし、その一体感に伴う高揚感によって、全員の力を底上げするような、そんな軍事魔法。

 これを用いることで数多き軍隊は何処までも能力を向上させていく。

 そのための口上であり、それら口上が唱えられると共にカルミア王国の兵士たちの力は上昇していく。


「「「我ら、何者も貫く剣なり」」」


 単独で国さえも落とせるような個の力は確かに強力だ。

 だが、だからと言って数の暴力を無視することなどできない。

 多くの魔法によって互いを補完しあう軍隊はありとあらゆるものを飲み込んでしまうような大波となるのだ。


「……か、勝てるわけがない」


「馬鹿な……」


「こ、これが大国」


 そんな大波を前に、それへと向かいあうニルシア小国の兵士たちに動揺が広がる。

 彼らニルシア小国の兵士たちの熟練度は低く、カルミア王国のように軍団を一つとし、大波に出来やしないし、そもそもとして数が違い過ぎる。

 カルミア王国との圧倒的な差にニルシア小国の兵士たちは絶望感を浮かべる。


「……さすがはァ、大国だぜ」


「ちと、不味いか?ここまで本気かよ」


「無理じゃね?」


 そして、その横で傭兵たちは既に撤退を視野に入れ始める。

 

「……多いですね」


「問題はこの中にも一騎当千の化け物たちがいることだよなァ。カルミア王国全体が本気じゃないとはいえ、その中の歴史ある侯爵家はマジだ。俺が動くよりも強いことはみとめねぇとなァ。どれだけ腐ろうとも大国だぜ」


 そんな中で、カルミア王国の兵士たちの前に出ていくのはニーナとガイアの二人である。

 圧倒的な個の質を漂わせる二人が大波を押し返すべく己が力を開放する。

 そんな中で。


「わぁ……」


 その個の極みに近いカエサルは今、とある二人と向かい合っていた。

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