大国の力

 僕を初めとする面々が支援を集めるためにあっちこっちを飛び回っていた頃。

 カルミア王国の方ではようやく様々な準備を終え、動き出せるような状況になっていた。


「これが我らの軍か……実に壮観ではないか」


 カルミア王国は何処まで行っても大国である。

 ニルシア小国をひき潰すために集まった戦力は圧倒の一言である。

 一般兵士数、十万人ほど。

 一騎当千の強者たち、数千人ほど。

 その戦力の中に加えて、単独で小国を落とすような際立った実力者も二人ほど参戦している。


「これだけの戦力にひき潰されることを考えると、ニルシア小国などというちっぽけな国のことが可哀そうになるわい!」


 一般的な国家の戦力、過去の戦争などを見ると、参戦する一般兵士数が一万を超えるだけで大規模軍事作戦であり、一騎当千の強者たちが百人で圧倒的と言われる。

 そんな中で、これまでの戦力が国内の意見が一致していない中でも集められるカルミア王国が歴史上でも指折りの大国であることがわかる。


「くわっはっはっはっは!」

 

 そんな現状を見て、アイランク侯爵家の当主は自信満々に、傲慢不遜な笑い声をあたりに響かせる。


「これはもうニルシア小国が落ちたも当然であるなっ!」


「あらかじめ、再度お伝えしますが……本作戦でニルシア小国を滅ぼし、自領とすることは出来ません。大国同士の緩衝地帯であるここで大きなことを起こすことは……この戦争行動を起こすための外交努力は……」


 そんなアイランク侯爵家の当主へと王城の方から派遣されてきた文官が声をかける。


「わかっておるわい。頷いてやるから安心せぇ」


「それならばいいのですか……」


「あの出来損ないは殺し、そして、あれについていった裏切り者を回収し、我らを裏切ったことを散々と後悔させたのちに何処かの変態にでも婚約者として売りつけられればひとまずは満足よ」


「……っ」


 実の子供たちに向けているとは思えない。

 そんな邪悪な考えを贔屓目もなく口にし続ける彼へと派遣された文官が眉を顰める中でも。


「がっはっはっはっは!」


 アイランク侯爵家の当主は笑いを響かせ続けるのだった。

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