戦端
一方的にニルシア小国へと宣戦布告してきたカルミア王国。
それが動き出すのは実にゴタゴタだった。
「……いやぁ、ひっでぇなぁ」
レジスタンスの本部。
そこで交渉事を終え、そのまま真っすぐ上に上がってカルミア王国内にやってきた僕は地上で繰り広げられている母国のゴタゴタ劇を見ながら呆然と言葉を漏らす。
自分たちの方から宣戦布告をしていたくせに、カルミア王国の動きは実にずさんだった。
兵を集めて並べたは良いものの、これっぽちも兵站が整えていなかったのか、現在進行形で兵士たちが村々から略奪を働いたり、森に行って動物を狩ったりと。
中々に酷い状況だった。
「いくら何でも適当過ぎるだろ」
宣戦布告を見切り発車で行うのは一体どうなんだよ……マジで。
「いや、まぁ……こっちには都合がいいけどさぁ」
それでも、自分の母国がこれだという事実はちょっとだけ落ち込むかもしれない。
なんか、少しだけ悲しい気分になってくる。
「遠慮なく潰させてもらうけど」
まぁ、でも、それはそれとして、僕は先手を打つべく行動を開始する。
「やっぱり……狙うなら補給だよな」
下にいる兵士たちでは感知できないであろう遥か上空。
そこに滞空する僕は一つの魔法を発動させる。
「轟け、雷鳴」
僕の手によって発動された魔法。
魔法の力によって一瞬で暗くなった空から一筋の雷が落ちていき、それがそのままカルミア王国軍の食料を運んでいた補給部隊を丸焼きにする。
「これで結構な食料が削れただろ……このまま、少し粘って攻撃を続けてもいいが、一人でこの場に居続けるのも危険だしな」
僕はこの世界でも有数の実力者であるという自負がある。
ただ、それでも相手は間違いようのない大国なのである。
一騎当千の強者を押し込める術というのもいくらでもあるし、僕がここで一人、粘るというのも危険だろう。
「さいなら、とな」
一応の安全牌をとることに決めた僕は一つの魔法でカルミア王国の食料を焼いた後、ニルシア小国の方に帰っていくのだった。
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