計画

 レジスタンスのかつての母国。

 ロイマール王国。

 そこの立地としてはニルシア小国とカルミア王国のちょうど国境部であり、ここが復活するだけで両国の緩衝地帯となってくれる。


「君たちの国の位置が最高なんだよね。ロイマール王国の隣はアイランク侯爵家だし」


 それに加え、元々はロイマール王国とアイランク侯爵家は国境を接し合っていた部分なのだ。

 彼の国をカルミア王国が攻め滅ぼした際もアイランク侯爵家が一番活躍し、ロイマール王国の国土の四分の一ほど自領に組み込んでいる。


「ここで独立行動を起こせば、アイランク侯爵家に対する攻撃にもなる……今、独立運動を起こすのは過去のこと過ぎて難しい部分もあるが、それでも独立を目指す風が一切ないわけじゃない。結構よさげな土地であると思わない?」


 アイランク侯爵家を中心とするカルミア王国の攻勢に対して、完璧ともとれる一手になりえるロイマール王国。

 そのかつての王族の末裔たる王女の前で僕は自分の計画を語り終える。


「なるほど……我らを利用して独立を起こすことでカルミア王国の内部から戦況を変える風を吹かせ、戦後に平和を作り出すためにもちょうどいい。そういう話ですね?」


 下水道を進んでいったその先。

 ニルシア小国からカルミア王国にまで通じているあまりにも長い下水道の最奥にあるレジスタンスの基地。

 そこの一室で僕と向かいあうかつての王族、ピリア・ロリマールが自分の言葉に頷く。


「そういうこと」


「確かに、いい案だとは思いますが……実行可能でしょうか?恥ずかしながら……今更、独立運動の風を広げることは」


「現状に不満を抱けば、変化を求めるのは当然のこと。そして、変化を向ける先が本来あるべき自分の国だとしたら最高じゃないか?」


「……」


「任せてよ。ピリア。現状への不満は僕が作り出す。だから、君は自分たちが独立する準備を整えてくれないかな?前に言ったよね。君たちが、いつか胸を張って生きられるように僕がしてやるって。それが、今だよ」


「……ッ」


 僕はピリアの前で笑顔で言葉を言い切るのだった。

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