宣戦布告

 詔書。


 神より王権を認められた王位を引き継ぐ現在のカルミア王国国王が、我が国民並びにニルシア小国の国民へと明確に示す。私はここに、ニルシア小国に対して戦争を行うことを宣言する。我が軍は全力を奮って交戦に従事せよ。


 そもそも我が家に忠誠を誓いし貴族家の一つ一つが王家にとって最も重要な財産であり、それが失われることなど許されるはずもないと思っているところである。そのような考えがあるからこそ、ありとあらゆる国家と親善関係を維持し続けていくためには我が国において貴族家の一つ一つを尊重されることが大事なのである。逆に言えば、それを維持せんとする国家との親善関係を維持し全ての国が共に繁栄していく喜びを共にすることは、これまたカルミア王国が常に外国と関係を築く中で最も大切にしている方針である。ところが今は不幸にしてニルシア小国と武力衝突を生ずる状況に至った。これは誠に止むを得なかったことである。決して私の希望することではない。


 ニルシア小国は決して許すことの出来ない罪を犯した。かねてより前にアイランク侯爵家が貴族足る価値なしとして追放した少年は現在に至っても我が家における害となり続けている。追放された少年はその腹いせとして、アイランク侯爵家の大切な財産であるうら若き娘を誘拐して拉致監禁しているのである。ニルシア小国はその少年を保護するばかりか、共にドラゴンを倒したなどの妄言を連れ並べ、彼を重用しようとしている。

 

 ガルシア王国はこの事態を平和のうちに解決させようと奮起してきた。耐えがたきを耐久し、再三と話しあいに応じるように要求をし続けてきたが、ニルシア小国には相互に友好関係を維持しようという精神は微塵もなく、話し合いに応じることさえ一度たりともなかった。


 このように事態が推移すると、王家並びにそれへと忠誠を誓う貴族家の両者の信頼関係による安定を維持し続けていたカルミア王国の積年の努力は水の泡となり、カルミア王国の存立もまた危機に瀕している。事態がここまで悪化しているカルミア王国は、今や自存自衛のため、決意を持って一切の障害を粉砕するほかはない。私は国民の忠誠心や武勇を信頼し、速やかに災難の根源を除去して、世界の永遠の平和を確立し、それによって我が国の栄光を保護していきたい。ニルシア小国がこれまでの行為を懺悔し、罪人の引き渡しに同意するというのならば何時であっても我が国の外交部は開かれている。終ぞ、我らは待ち続け、平和を願わん。


 御名御璽。

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