バルコニーで僕と王女様が向き合っている中。


「些細な私の昔話を良いですか?」


 ゆっくりと王女様が口を開き、言葉を告げる。


「あぁ、良いよ」


「私の母は父上に見初められた元劇団員なんです。ミュージカルを生業とし、世界を飛び回っているような人でした。父上と結婚した後も母の劇団員としての能力は衰えることなく、よく子供の頃にミュージカルを見せてくれていました」


「おー」


「見せてくれたミュージカルのほとんどは王女と騎士の恋愛ものがほとんどで……私も次第にそんな恋愛へのあこがれを抱くようになっていました」


「なるほど」


 僕は王女様の話に相槌を打ちながら話を聞いていく。


「ですが、すぐに私は現実を知ることになります。私たち王族の婚姻は重要な国家事業であり、好きになったからと結婚出来るわけではありません。国にとって最も有益な相手と私は婚姻することになるでしょう」


「あー、そう、だね」


 こればかりは王侯貴族の定めだともいえる。

 この世界では政略結婚が当たり前の世界となっている。

 これを避けることは中々出来ない。それこそ、僕やニーナのように家から追放される、などということがなければ。


「私は次第にあこがれを捨て、自分の職務を全うしようとしていました。私は第三王女でそこまでの重要人物でもありませんから。私が何をどう思ったところで、父上の考えを変えることは出来ませんしね」


「そうだね」


「ですが、そんな日々の中で、私はまるで物語の王女様のように助けられました。命の危機に陥ってくれたところを、王子様が救ってくれたのです」


「……ん?」


 続く形で告げられる王女様の言葉。

 そこに僕は何か引っかかりを覚えて首をかしげる。


「私の前に王子様が現れたくれたのです……ずっと、待ち望んでいた王子様が。そして、その人は私の婚約者に足るだけの価値を常に示し続けてくれました。私の王子様は、王女として生まれた私の婚約者になれるだけの人だったんです」


 王女様は手を組み、こちらを真っすぐに見つめながら口を開く。


「カエサル様。私は貴方のことが好きです」


 そして、告げられるのは僕が好きだとい愛の告白の言葉だった。

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