帰還
古き時より生き、多くの戦いを経験してきた巨大な竜を殺した。
その報は一気に国内外に知れ渡っていた。
帝国では王子が竜を殺したという名声によって、もはや次期皇帝は決まった、とでもいうような雰囲気が広がっており、カルミア王国では少しばかり不穏な噂も流れている。
そして、ニルシア小国でも大きな話題となっており、竜の肉やら竜のうろこの破片など。
金になる数多くの素材がこの国に出回ったことにより、空前絶後の好景気に沸いている。
今回の竜討伐における立役者はその場にいた王女様を除く三人ということになっており……それに伴って、僕とニーナの知名度も爆増することになっていた。
その結果として。
「あー、疲れたぁ」
僕とニーナは二人して、様々なパーティー等に引っ張りだことなってしまい、想定を超えた形で多忙の身となってしまっていた。
もうニーナなんかはさっさと国を出ようと急かしてきているような状況だ。
「ふぃー」
竜討伐から一週間。
今日も今日とてパーティーに駆り出された日の夜。
もう時刻も遅いから早く帰って寝るように、とニーナを家に帰した後もニルシア王国の王城で開かれているパーティー会場に残っていた僕は、夜風へと当たるためにバルコニーの方へと一人、出てきていた。
「あまりにも多すぎるよなぁ」
話題になるのも一時的なものだろうし、あまり誘いを無下に断るのも周りとの関係悪化につながる可能性があるためにその多くを受け入れてきたが、それでも流石に数が多すぎる。
僕たちは母国より追われるような立場であり、ここで味方が多ければ多いほどいいとは思うんだけど……うーん。流石に僕も負担だし、ニーナはもっとだよね。
ニーナ的には家族水入らずの時間が削られていることにも心外しているし。
流石に年齢的なものを理由にして、ある程度は断らせてもらおうかなぁ。
「カエサル様」
「んっ?」
そんなことを僕が考えていた中、自分がいたバルコニーへとやってきた王女様から声が掛けられ、そちらのほうに視線を向ける。
「恐れながら、少しばかり私よりちょっとしたお話がございます……少し、時間のほどはよろしいでしょうか?」
王女様は真面目な様子で僕へと言葉を告げる。
「あぁ、うん。大丈夫だよ」
そんな言葉に僕は時間がある旨を伝え、しっかりと話を聞く態勢を作るのだった。
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